FX(外国為替証拠金取引)は、少額の資金から始められる資産運用の手段として、多くの人々の関心を集めています。しかし、いざ始めようとすると、「レバレッジ」「スプレッド」「ロスカット」といった専門用語の壁にぶつかり、何から学べばよいか分からなくなってしまう初心者の方も少なくありません。
FXで安定した利益を目指すためには、これらの専門用語を正しく理解し、使いこなすことが不可欠です。用語の知識は、単に取引画面の表示を理解するためだけでなく、相場の状況を正確に把握し、適切なリスク管理を行い、自信を持って取引戦略を立てるための土台となります。
この記事では、FXの世界に第一歩を踏み出す初心者のために、覚えておくべき必須用語を厳選し、以下のカテゴリに分けて網羅的に解説します。
- 取引の基礎編: FXの仕組みそのものに関わる最も基本的な用語
- 実践編: 実際に売買を行うための注文に関する用語
- 相場分析編: チャートを読み解き、将来の値動きを予測するための用語
- リスク管理・その他編: 資産を守り、利益を伸ばすために重要な用語
- 取引手法編: 自分のライフスタイルに合ったトレードスタイルを見つけるための用語
各用語について、意味だけでなく「なぜそれが重要なのか」「実際の取引でどのように使われるのか」といった具体例を交えながら、初心者にも分かりやすい言葉で丁寧に解説していきます。さらに、用語を覚えた後に何をすべきか、そして学習や実践におすすめのFX会社についてもご紹介します。
この記事を最後まで読めば、FX取引の全体像が明確になり、自信を持って最初の一歩を踏み出せるようになるでしょう。それでは、FXの世界への扉を開いていきましょう。
目次
【取引の基礎編】FXの仕組みに関する必須用語9選
FX取引を始めるにあたり、まず理解しなければならないのが、その根幹をなす基本的な仕組みです。ここでは、FXの世界の共通言語ともいえる9つの必須用語を解説します。これらの用語は、取引のあらゆる場面で登場するため、意味を正確に把握しておくことが成功への第一歩となります。
① FX(外国為替証拠金取引)
FXとは「Foreign Exchange」の略で、日本語では「外国為替証拠金取引」と呼ばれます。その名の通り、「外国為替」を「証拠金」を使って取引することを指します。
もう少し具体的に説明すると、FXは「ある国の通貨を別の国の通貨に交換する取引」です。例えば、日本の「円」をアメリカの「ドル」に交換したり、その逆を行ったりします。私たちが海外旅行に行く際に、空港で円を現地の通貨に両替するのも外国為替取引の一種です。
FXが旅行の両替と大きく異なる点は、以下の2つです。
- 差金決済: FXでは、実際に外貨の現金を受け取るわけではありません。取引の目的は、通貨の交換によって生じる価格の変動、つまり「為替レートの差」を利用して利益(為替差益)を得ることです。取引を終える際には、売買によって生じた利益または損失の差額(差金)のみを決済します。この仕組みを差金決済と呼びます。
- 証拠金取引: 取引を行うために、取引したい金額の全額を用意する必要はありません。FX会社に「証拠金(しょうこきん)」と呼ばれる担保を預け入れることで、その証拠金の何倍もの金額の取引が可能になります。この仕組みについては、後の「レバレッジ」の項目で詳しく解説します。
例えば、「1ドル=150円」の時に1,000ドルを買ったとします。その後、円安が進み「1ドル=151円」になった時に、持っていた1,000ドルを売って円に戻すと、1ドルあたり1円の利益が出ます。1,000ドル分なので、合計で1,000円の利益です。逆に、「1ドル=149円」の時に売ると、1,000円の損失となります。このように、為替レートの変動を予測し、売買することで利益を狙うのがFXの基本的な仕組みです。
FXは、平日であればほぼ24時間取引が可能です。これは、世界のどこかの外国為替市場(東京、ロンドン、ニューヨークなど)が開いているためです。そのため、日中は仕事で忙しい方でも、夜間や早朝に取引できるというメリットがあります。
② 通貨ペア
FXは、2つの異なる国の通貨を交換する取引です。この取引対象となる2つの通貨の組み合わせを「通貨ペア」と呼びます。通貨ペアは「米ドル/円」や「ユーロ/米ドル」のように、2つの通貨をスラッシュ(/)で区切って表記します。
スラッシュの左側に記載される通貨を基軸通貨(きじくつうか)、右側に記載される通貨を決済通貨(けっさいつうか)と呼びます。
例えば、「米ドル/円」の場合、基軸通貨は「米ドル」、決済通貨は「円」です。この通貨ペアの価格(為替レート)は、「1米ドルを何円で交換できるか」を表しています。レートが「150.00」であれば、1米ドルが150円の価値があることを意味します。
FX会社では、数十種類もの通貨ペアが提供されていますが、大きく以下の2つに分類できます。
通貨ペアの種類 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
メジャー通貨ペア | 取引量が多く、流動性が高い。値動きが比較的安定しており、取引コスト(スプレッド)が狭い傾向がある。 | 米ドル/円 (USD/JPY)、ユーロ/米ドル (EUR/USD)、ユーロ/円 (EUR/JPY)、ポンド/円 (GBP/JPY)、豪ドル/円 (AUD/JPY) など |
マイナー通貨ペア | 取引量が少なく、流動性が低い。値動きが激しくなりやすく、スプレッドが広い傾向がある。新興国の通貨などが含まれる。 | トルコリラ/円 (TRY/JPY)、南アフリカランド/円 (ZAR/JPY)、メキシコペソ/円 (MXN/JPY) など |
FX初心者は、まずメジャー通貨ペア、特に「米ドル/円」から取引を始めるのがおすすめです。その理由は、取引量が世界的に見ても非常に多く、値動きが比較的穏やかだからです。また、日本に住んでいる私たちにとって、アメリカの経済ニュースは日々メディアで報じられており、情報を得やすいというメリットもあります。
通貨ペアの選択は、FXの戦略を立てる上で非常に重要です。各通貨ペアには、値動きの大きさ(ボラティリティ)や、影響を受けやすい経済指標などが異なるという特徴があります。取引に慣れてきたら、複数の通貨ペアの値動きを観察し、自分の取引スタイルに合ったものを見つけていくと良いでしょう。
③ レバレッジ
レバレッジ(Leverage)とは、「てこ」を意味する言葉です。FXにおけるレバレッジとは、預け入れた証拠金を担保にすることで、その何倍もの金額の取引ができる仕組みのことを指します。
例えば、10万円の証拠金があるとします。レバレッジをかけなければ、10万円分の取引しかできません。しかし、レバレッジを10倍に設定すれば、10万円 × 10倍 = 100万円分の取引が可能になります。さらに、日本の法律で定められている最大レバレッジである25倍を利用すれば、10万円の証拠金で最大250万円分もの取引ができるのです。
レバレッジの最大のメリットは、少額の資金で大きな利益を狙える「資金効率の良さ」です。
仮に「1ドル=150円」の時に、1万ドルの取引をしたいと考えます。レバレッジをかけない場合、150円 × 1万ドル = 150万円の資金が必要です。しかし、レバレッジを25倍かければ、150万円 ÷ 25 = 6万円の証拠金で同じ取引ができます。
もし、この取引で為替レートが1円上昇して「1ドル=151円」になれば、1万円の利益が出ます。元々の資金が6万円だったとすると、資金に対して約16.7%もの利益率になります。
一方で、レバレッジには大きなリスクも伴います。利益が大きくなる可能性があるということは、同様に損失も大きくなる可能性があるということです。
先ほどの例で、逆に為替レートが1円下落して「1ドル=149円」になった場合、1万円の損失が発生します。元々の資金が6万円なので、この一度の取引で資金の約16.7%を失うことになります。レバレッジが高いほど、わずかな価格変動でも大きな損失につながるリスクがあることを、絶対に忘れてはいけません。
初心者のうちは、いきなり高いレバレッジで取引するのではなく、まずは低いレバレッジ(3〜5倍程度)から始め、リスク管理に慣れていくことが重要です。自分が許容できる損失額を常に意識し、レバレッジをコントロールすることが、FXで長く生き残るための鍵となります。
④ スプレッド
スプレッド(Spread)とは、FXにおける売値(Bid)と買値(Ask)の価格差のことを指します。FXの取引画面を見ると、通貨ペアには必ず2つの価格が表示されています。例えば、米ドル/円のレートが「150.000(売) / 150.003(買)」のように表示されている場合、この0.003円(=0.3銭)がスプレッドです。
このスプレッドは、投資家が支払う実質的な取引コストと考えることができます。なぜなら、あなたが新規で買い注文(Ask)を出した瞬間、そのポジションをすぐに決済(売却/Bid)しようとすると、スプレッド分の損失が確定するからです。上記の例では、150.003円で買ったドルをすぐに売ると150.000円で売ることになるため、0.003円のマイナスから取引がスタートします。利益を出すためには、このスプレッド分以上に価格が上昇する必要があります。
スプレッドはFX会社によって異なり、「銭」という単位で表されることが一般的です(1銭 = 0.01円)。スプレッドは狭ければ狭いほど、投資家にとって有利になります。特に、スキャルピングのように短時間で何度も取引を繰り返すスタイルでは、スプレッドの差が最終的な損益に大きな影響を与えます。
スプレッドには、大きく分けて2つの種類があります。
- 原則固定スプレッド: 通常時はスプレッドが一定の幅に固定されているタイプ。多くの国内FX会社が採用しています。ただし、「原則」とあるように、市場の流動性が著しく低下する早朝や、重要な経済指標の発表時などには、スプレッドが一時的に拡大することがあります。
- 変動スプレッド: 市場の状況に応じて、スプレッドが常に変動するタイプ。
FX会社を選ぶ際には、このスプレッドの狭さが重要な比較ポイントの一つとなります。しかし、ただ単に広告されているスプレッドの数値だけでなく、そのスプレッドが安定して提供されているか(スプレッドの安定性)も確認することが大切です。
⑤ pips(ピップス)
pips(ピップス)とは「Percentage In Point」の略で、FXで取引される通貨の共通の最小値動き単位です。為替レートは通貨ペアによって小数点の桁数が異なるため、「1円動いた」「1セント動いた」という表現では、どの程度の価値変動があったのかを直感的に比較しにくい場合があります。そこで、どの通貨ペアでも共通の単位で値動きを語れるようにpipsが使われます。
一般的に、pipsの定義は以下のようになっています。
- 対円通貨ペア(米ドル/円、ユーロ/円など): 小数点第2位の値を「1pips」とします。つまり、1pips = 0.01円 = 1銭 です。例えば、レートが150.10円から150.15円に動いた場合、「5pips上昇した」と表現します。
- 対ドル通貨ペア(ユーロ/米ドル、ポンド/米ドルなど): 小数点第4位の値を「1pips」とします。つまり、1pips = 0.0001ドル です。例えば、レートが1.0810ドルから1.0820ドルに動いた場合、「10pips上昇した」と表現します。
- ※一部のFX会社では、より細かい値動きを示すために、対円通貨では小数点第3位、対ドル通貨では小数点第5位まで表示されることがあります。この場合、最小単位は「0.1pips」となります。
pipsを使うことで、損益の計算がしやすくなるというメリットがあります。
例えば、米ドル/円を1万通貨取引している場合、1pipsの変動はいくらの損益になるでしょうか。
1pipsは0.01円なので、1万通貨 × 0.01円 = 100円の損益となります。つまり、米ドル/円を1万通貨取引している場合、1pipsの値動きは100円の価値があると覚えておくと非常に便利です。
この知識があれば、「今日の目標は+20pips」「損切りラインは-15pipsに設定しよう」というように、具体的な数値目標やリスク管理の基準をpips単位で考えられるようになります。FXトレーダーの会話では、「円」や「ドル」ではなく「pips」で損益や値幅を語るのが一般的であり、pipsの概念を理解することは、トレーダーとしての第一歩と言えるでしょう。
⑥ ロット
ロット(Lot)とは、FXにおける取引単位のことです。株式投資で「100株単位」で取引するように、FXでも一定の通貨量をまとめた「ロット」という単位で注文を行います。
1ロットが何通貨を指すかは、FX会社によって異なります。
- 1ロット = 10,000通貨: 多くのFX会社で採用されている標準的な単位です。
- 1ロット = 1,000通貨: 一部のFX会社では、より少額から取引できるように、この単位を採用しています。
例えば、「米ドル/円を1ロット買う」という注文は、1ロット=10,000通貨のFX会社であれば10,000米ドルを買うことを意味し、1ロット=1,000通貨のFX会社であれば1,000米ドルを買うことを意味します。自分が利用しているFX会社の1ロットが何通貨なのかを、取引を始める前に必ず確認しておく必要があります。
ロット数は、取引のリスクとリターンを直接的に決定する非常に重要な要素です。同じ10pipsの値動きでも、取引するロット数が違えば、損益額は大きく変わります。
米ドル/円で10pipsの利益が出た場合の利益額
取引量 | 利益額 |
---|---|
0.1ロット (1,000通貨) | 100円 |
1ロット (10,000通貨) | 1,000円 |
10ロット (100,000通貨) | 10,000円 |
このように、ロット数を大きくすれば大きなリターンを狙えますが、同時に大きな損失を被るリスクも増大します。初心者のうちは、必ず最小単位(多くの場合は0.1ロット=1,000通貨など)から取引を始め、慣れてきたら徐々にロット数を増やしていくのが賢明です。自分の資金量やリスク許容度に合わせて、適切なロット数で取引することが、リスク管理の基本となります。
⑦ 証拠金
証拠金(しょうこきん)とは、FX取引を行うために、FX会社に預け入れる担保金のことです。この証拠金を預けることで、レバレッジを利用した大きな金額の取引が可能になります。証拠金に関連して、以下の3つの用語は必ず理解しておく必要があります。
- 必要証拠金:
ポジションを新規で建てるために最低限必要な証拠金の額です。計算式は以下の通りです。
必要証拠金 = 為替レート × 取引通貨量 ÷ 最大レバレッジ
例えば、米ドル/円が150円の時に、レバレッジ25倍で1万通貨(1ロット)の取引をする場合、必要証拠金は「150円 × 10,000通貨 ÷ 25 = 60,000円」となります。 - 有効証拠金:
現在の口座残高に、保有しているポジションの評価損益(含み益・含み損)を加減した、現時点で口座にある実質的な資産の総額です。
有効証拠金 = 口座残高 + 評価損益(含み益または含み損)
例えば、口座に10万円あり、保有ポジションに2万円の含み益が出ている場合、有効証拠金は12万円です。逆に1万円の含み損がある場合は、有効証拠金は9万円となります。この有効証拠金は、為替レートの変動に伴って常に変動します。 - 証拠金維持率:
ポジションを維持するために必要な証拠金に対して、有効証拠金がどのくらいの割合あるかを示す指標です。この数値がFX取引における最も重要なリスク管理指標となります。
証拠金維持率 (%) = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
例えば、有効証拠金が12万円、必要証拠金が6万円の場合、証拠金維持率は「12万円 ÷ 6万円 × 100 = 200%」となります。
証拠金維持率が高いほど、口座の安全性は高いと言えます。逆に、含み損が拡大して有効証拠金が減少すると、証拠金維持率も低下していきます。そして、この維持率が一定の水準を下回ると、後述する「ロスカット」が執行されることになります。常に自身の証拠金維持率を把握し、余裕を持った水準(できれば300%以上)を保つように心がけることが重要です。
⑧ スワップポイント
スワップポイントとは、2つの通貨間の金利差によって生じる利益または損失のことです。「金利差調整分」とも呼ばれます。FXでは、ポジションを決済せずに翌日まで持ち越す(ロールオーバーする)と、このスワップポイントが発生します。
スワップポイントの仕組みは、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うと、その金利差分の利益を受け取れるというものです。逆に、高金利の通貨を売って低金利の通貨を買うと、金利差分のコストを支払う必要があります。
- 受け取り(プラススワップ): 低金利通貨(例: 日本円)を売り、高金利通貨(例: メキシコペソ)を買うポジションを保有している場合。
- 支払い(マイナススワップ): 高金利通貨(例: メキシコペソ)を売り、低金利通貨(例: 日本円)を買うポジションを保有している場合。
スワップポイントは、FX会社や通貨ペア、そして各国の政策金利の動向によって日々変動します。
このスワップポイントを狙った取引手法を「キャリートレード」と呼びます。為替レートの変動による差益(キャピタルゲイン)だけでなく、ポジションを長期保有することで得られる金利収入(インカムゲイン)を目的とした戦略です。
スワップポイントを狙う際の注意点:
高金利通貨は、一般的に新興国の通貨が多く、政治・経済情勢が不安定なため価格変動リスク(為替リスク)が大きい傾向にあります。スワップポイントでコツコツ利益を積み重ねていても、為替レートが急落すれば、スワップ収益をはるかに上回る大きな為替差損を被る可能性があることを十分に理解しておく必要があります。スワップポイント狙いの長期投資を行う際も、レバレッジを低く抑え、余裕を持った資金管理を徹底することが不可欠です。
⑨ ロスカット(強制ロスカット)
ロスカットとは、保有しているポジションの含み損が一定の水準まで拡大した際に、さらなる損失の拡大を防ぐために、FX会社が強制的にそのポジションを決済する仕組みのことです。強制ロスカットとも呼ばれます。
この仕組みは、投資家の資産を保護するために設けられています。もしロスカットがなければ、相場が急変動した際に、預け入れた証拠金以上の損失(追証)が発生するリスクが高まります。ロスカットは、そうした最悪の事態を避けるためのセーフティーネットの役割を果たします。
ロスカットが執行される条件は、「証拠金維持率」に基づいています。多くのFX会社では、証拠金維持率が100%や50%など、あらかじめ定められた水準を下回った場合にロスカ-ットが発動します。この水準はFX会社によって異なるため、利用する会社のルールを必ず確認しておきましょう。
ロスカットは、投資家保護の仕組みであると同時に、トレーダーにとっては「敗北」を意味します。計画的な損切りではなく、強制的に取引を終了させられるため、大きな損失が確定してしまいます。ロスカットを避けるためには、以下の対策が重要です。
- 余裕を持った資金管理: 証拠金維持率が常に高い水準(300%以上が目安)を保てるように、口座資金に対して取引量(ロット数)を抑える。
- 損切りルールの徹底: ロスカットが執行されるような大きな損失になる前に、自分であらかじめ決めた損失ラインで決済(損切り)する習慣をつける。
- 追加入金: 証拠金維持率が低下してきた場合に、追加で資金を入金して維持率を回復させる。
ロスカットは、FX取引における最大のリスクの一つです。この仕組みを正しく理解し、ロスカットに遭わないような取引を心がけることが、FXで継続的に利益を上げていくための大前提となります。
【実践編】注文に関する必須用語8選
FXの基礎知識を学んだら、次はいよいよ実際の取引で使う「注文」に関する用語です。FXで利益を出すには、適切なタイミングで、適切な方法で注文を出す必要があります。ここでは、基本的な注文から、リスク管理や利益確定を自動化できる高度な注文方法まで、8つの必須用語を解説します。
① ポジション
ポジションとは、新規注文が約定し、未決済の状態で保有している建玉(たてぎょく)のことを指します。FXでは、「ポジションを持つ」「ポジションを建てる」といった使い方をします。ポジションには、相場の今後の動きをどう予測するかに応じて、2つの種類があります。
- 買いポジション(ロングポジション):
今後、為替レートが上昇すると予測して、特定の通貨ペアを「買う」注文を行い、それを保有している状態です。例えば、「米ドル/円」の買いポジションを持っている場合、円安(ドルの価値が上がる)になるほど利益(含み益)が増え、円高(ドルの価値が下がる)になるほど損失(含み損)が増えます。安く買って高く売ることで利益を狙います。単に「ロングする」とも言います。 - 売りポジション(ショートポジション):
今後、為替レートが下落すると予測して、特定の通貨ペアを「売る」注文を行い、それを保有している状態です。例えば、「米ドル/円」の売りポジションを持っている場合、円高(ドルの価値が下がる)になるほど利益(含み益)が増え、円安(ドルの価値が上がる)になるほど損失(含み損)が増えます。高く売って安く買い戻すことで利益を狙います。単に「ショートする」とも言います。
FXの大きな特徴の一つは、この「売り(ショート)」からでも取引を始められる点です。相場が下落している局面でも、売りポジションを持つことで利益を狙うことができます。これにより、上昇相場でも下落相場でも、収益機会を探ることが可能になります。
ポジションを保有している間は、為替レートの変動によって常に損益が変動します。この未確定の損益を「含み益・含み損」と呼びます。そして、このポジションを反対売買(買いポジションなら売る、売りポジションなら買う)によって決済することで、初めて損益が確定します。どの通貨ペアの、どちらのポジションを、どのタイミングで持ち、いつ決済するのか。これがFX取引の全てと言っても過言ではありません。
② 新規注文・決済注文
FXの取引は、大きく分けて「新規注文」と「決済注文」の2つのステップで完結します。
- 新規注文(エントリー):
新たにポジションを持つための注文のことです。買い(ロング)または売り(ショート)のどちらかで市場に参入(エントリー)します。例えば、「米ドル/円を150円で1万通貨買う」というのが新規注文です。この注文が約定(成立)すると、あなたは「米ドル/円の買いポジションを1万通貨保有している」状態になります。 - 決済注文(イグジット):
保有しているポジションを解消し、損益を確定させるための注文のことです。市場から退出(イグジット)することを意味します。新規注文とは反対の売買を行います。- 買いポジションを保有している場合 → 売り注文で決済
- 売りポジションを保有している場合 → 買い注文で決済
例えば、先ほどの「米ドル/円を150円で買った」買いポジションを、「151円になった時点で売る」というのが決済注文です。この注文が約定すると、1円(100pips)の為替差益が確定し、ポジションはなくなります。
この「新規」と「決済」は一対の操作であり、全ての取引は必ず新規注文で始まり、決済注文で終わります。どの価格でエントリーし、どの価格でイグジットするかという戦略を立てることが、トレーダーの腕の見せ所です。利益を最大化し、損失を最小化するために、次に紹介する様々な注文方法を駆使して、最適なエントリーとイグジットのタイミングを探っていくことになります。
③ 成行注文
成行(なりゆき)注文とは、価格を指定せずに、「今すぐ、現在の市場価格で」売買したい時に出す注文方法です。注文画面で「成行」を選択し、売買の別と数量(ロット数)を指定して発注すると、その時点のレートで即座に約定します。
メリット:
- 約定力が高い: 「買いたい」「売りたい」と思ったその瞬間に、ほぼ確実に注文を成立させることができます。急な価格変動が起きて、このチャンスを逃したくないという場面で非常に有効です。
デメリット:
- スリッページのリスク: 注文を出してから実際に約定するまでのわずかな時間差で、レートが不利な方向に変動してしまうことがあります。これを「スリッページ」と呼びます。特に、相場の変動が激しい時(重要指標の発表時など)には、想定していた価格と大きく異なる価格で約定してしまう可能性があります。
- 価格の不確実性: 約定価格が発注時点では確定しないため、緻密な価格での取引計画を立てている場合には不向きです。
具体的な利用シーン:
- チャートを見ていて、明らかに強い上昇(または下降)のサインが出たため、乗り遅れないようにすぐにエントリーしたい時。
- 保有ポジションの含み損が急拡大し、一刻も早く損切りをして損失を限定したい時。
成行注文は、その即時性と確実性から、初心者にも分かりやすく、最も基本的な注文方法の一つです。しかし、スリッページのリスクを理解し、特に相場が荒れている時には注意して使用する必要があります。多くのFX会社では、このスリッページの許容幅(許容スリッページ)を設定できる機能があり、想定外の不利な価格での約定を防ぐことができます。
④ 指値注文
指値(さしね)注文とは、「現在のレートよりも有利な価格」を指定して、あらかじめ発注しておく予約注文のことです。「リミット注文」とも呼ばれます。
指値注文には、買いと売りの2種類があります。
- 買い指値注文 (Buy Limit):
「現在のレートよりも安くなったら買いたい」という注文です。例えば、現在の米ドル/円のレートが150.50円の時に、「もし150.00円まで下がってきたら、そこで買いたい」と考えた場合、150.00円に買い指値注文を出しておきます。その後、実際にレートが150.00円まで下落すると、注文が自動的に約定します。 - 売り指値注文 (Sell Limit):
「現在のレートよりも高くなったら売りたい」という注文です。これは、新規で売りポジションを建てる場合と、保有している買いポジションを利益確定するために使う場合があります。- 新規注文の場合: 現在のレートが150.00円の時に、「もし150.50円まで上がったら、そこから下落に転じると予想して売りたい」という場合に使います。
- 決済注文の場合(利益確定): 150.00円で買った買いポジションを持っていて、「150.50円まで上がったら利益を確定したい」という場合に使います。これをテイクプロフィット(T/P)と呼ぶこともあります。
メリット:
- 希望の価格で取引できる: 自分の分析に基づいた有利な価格でエントリーや決済ができます。
- チャートに張り付く必要がない: 一度注文を出しておけば、後はレートが指定価格に達するのを待つだけなので、仕事中や就寝中でも取引チャンスを逃しません。
デメリット:
- 約定しない可能性がある: レートが指定した価格まで到達しなければ、注文はいつまでも成立しません。そのため、機会損失となる可能性があります。
指値注文は、「押し目買い」や「戻り売り」といった、相場の一時的な調整局面を狙う戦略で頻繁に利用されます。計画的な取引を行う上で非常に重要な注文方法です。
⑤ 逆指値注文
逆指値(ぎゃくさしね)注文とは、「現在のレートよりも不利な価格」を指定して、あらかじめ発注しておく予約注文のことです。「ストップ注文」とも呼ばれます。一見すると「不利な価格でなぜ注文するのか?」と不思議に思うかもしれませんが、これはリスク管理とトレンドフォロー戦略において極めて重要な役割を果たします。
逆指値注文にも、買いと売りの2種類があります。
- 買い逆指値注文 (Buy Stop):
「現在のレートよりも高くなったら買いたい」という注文です。これは、特定の抵抗線(レジスタンスライン)を上に抜けたら、上昇トレンドが加速すると予測し、その流れに乗りたい(ブレイクアウト狙い)という場合に使います。例えば、現在のレートが149.50円で、150.00円に強い抵抗線がある場合、「150.00円を上抜けたら本格的な上昇が始まるとみて、150.01円で買いたい」という時に使います。 - 売り逆指値注文 (Sell Stop):
「現在のレートよりも安くなったら売りたい」という注文です。この注文が、FXにおいて最も重要な「損切り(ストップロス)」で使われます。- 決済注文の場合(損切り): 例えば、150.00円で買った買いポジションを持っているとします。万が一、相場が予想に反して下落した場合に備え、「149.50円まで下がってしまったら、それ以上の損失拡大を防ぐために、そこで諦めて売る」という注文を出しておきます。これを損切り注文(ストップロスオーダー)と呼びます。
- 新規注文の場合: 特定の支持線(サポートライン)を下に抜けたら、下降トレンドが加速すると予測し、その流れに乗りたい場合に使います。
逆指値注文の最大の目的は、リスク管理です。特に、損切りとしての逆指値注文は、予期せぬ相場急変から自分の資産を守るための生命線となります。感情に流されて損切りをためらい、結果的に大きな損失を被るという初心者にありがちな失敗を防ぐために、新規注文と同時に必ず損切りの逆指値注文もセットで入れる習慣をつけることが強く推奨されます。
⑥ IFD(イフダン)注文
IFD(イフダン)注文とは、「If Done」の略で、「もし(If)最初の注文が成立したら(Done)、次の注文を有効にする」という、2つの注文をセットで発注できる注文方法です。具体的には、「新規注文」と、その新規注文が約定した後の「決済注文」を一度に予約できます。
IFD注文の構成は以下の通りです。
- 1次注文(親注文): 新規のエントリー注文(指値または逆指値)。
- 2次注文(子注文): 1次注文が約定した場合にのみ有効になる決済注文(指値または逆指値)。
具体例:
現在の米ドル/円レートが150.50円だとします。
「もしレートが150.00円まで下がったら新規で買いたい(押し目買い)。そして、その買い注文が約定したら、レートが151.00円まで上がった時に利益を確定して売りたい。」
この一連の取引を、IFD注文を使えば一度に設定できます。
- 1次注文: 買い指値 @ 150.00円
- 2次注文: 売り指値(利益確定) @ 151.00円
この注文を出しておけば、チャートを見ていない間でも、レートが150.00円に達した時点で自動的に買いポジションが建てられ、その後レートが151.00円に達すれば自動的に利益が確定されます。
IFD注文のメリットは、エントリーから利益確定までの一連のシナリオを自動化できることです。これにより、仕事や睡眠でチャートを確認できない時間帯でも、計画通りの取引を実行できます。ただし、決済注文は利益確定か損切りのどちらか一方しか設定できない点に注意が必要です。利益確定と損切りの両方を同時に設定したい場合は、次にご紹介するOCO注文やIFO注文を利用します。
⑦ OCO(オーシーオー)注文
OCO(オーシーオー)注文とは、「One Cancels the Other」の略で、2つの異なる注文を同時に出し、一方が約定したら、もう一方の注文は自動的にキャンセルされるという特殊な注文方法です。
OCO注文は主に、保有しているポジションに対して、「利益確定の指値注文」と「損切りの逆指値注文」を同時に設定するために使われます。
具体例:
米ドル/円を150.00円で買いポジションを持っているとします。
このポジションに対して、
- 「レートが151.00円まで上昇したら、利益を確定したい(利確)」
- 「万が一、レートが149.50円まで下落したら、損失を限定したい(損切り)」
という2つのシナリオを考えている場合、OCO注文を使います。 - 注文1: 売り指値(利益確定) @ 151.00円
- 注文2: 売り逆指値(損切り) @ 149.50円
このOCO注文を発注すると、先にレートが151.00円に到達すれば、利益確定の売り注文が約定し、同時に149.50円の損切り注文は自動的にキャンセルされます。逆に、先にレートが149.50円に到達すれば、損切り注文が約定し、151.00円の利益確定注文がキャンセルされます。
OCO注文の最大のメリットは、利益確保とリスク管理を同時に行えることです。これにより、「利確のタイミングを逃して利益が減ってしまった(利食い千人力)」や「損切りできずに損失が拡大してしまった」という事態を防ぐことができます。ポジションを持った後は、すぐにOCO注文で決済の予約を入れておくことで、感情に左右されない機械的なトレードが可能になります。
また、レンジ相場での新規注文にも利用できます。現在のレートがレンジの中間にある時、「上に抜けたら順張りで買う(逆指値)、下に押したら逆張りで買う(指値)」といった戦略を一度に設定することも可能です。
⑧ IFO(アイエフオー)注文
IFO(アイエフオー)注文は、「IFD + OCO」の略で、これまで説明したIFD注文とOCO注文を組み合わせた、最も多機能で便利な注文方法です。
IFO注文では、以下の3つの注文を一度に発注できます。
- 新規注文(IFDの1次注文)
- 利益確定の決済注文(IFDの2次注文であり、OCOの一方)
- 損切りの決済注文(IFDの2次注文であり、OCOのもう一方)
つまり、「もし、この価格で新規注文が約定したら、この価格で利益確定の注文と、この価格で損切りの注文を両方出してください」という一連の取引シナリオを完全に自動化できる注文方法です。
具体例:
現在の米ドル/円レートが150.50円だとします。
「もしレートが150.00円まで下がったら新規で買いたい。その注文が約定したら、151.00円で利益確定の売り注文と、149.50円で損切りの売り注文を同時に出したい。」
この完璧な取引プランを、IFO注文一つで設定できます。
- 新規注文(IFD部分): 買い指値 @ 150.00円
- 決済注文(OCO部分):
- 売り指値(利益確定) @ 151.00円
- 売り逆指値(損切り) @ 149.50円
この注文を出しておけば、あとは相場がシナリオ通りに動くのを待つだけです。エントリーから利益確定、そしてリスク管理としての損切りまで、全てが自動で実行されるため、チャートに張り付いている必要は一切ありません。
IFO注文は、計画的なトレードを実践する上で最強のツールと言えるでしょう。特に、日中は仕事で忙しいサラリーマントレーダーや、感情的なトレードを避けたいと考える全てのトレーダーにとって、必須の注文方法です。最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、仕組みを理解すればこれほど心強い味方はいません。デモトレードなどで使い方に慣れておくことを強くおすすめします。
【相場分析編】チャートを読むための必須用語7選
FXで利益を上げるためには、将来の為替レートの動きを予測する必要があります。その予測の根拠となるのが「相場分析」です。ここでは、相場分析の2大手法と、その中でも特に多くのトレーダーが利用するテクニカル分析の基礎となる、チャートを読むための必須用語を7つ解説します。
① テクニカル分析
テクニカル分析とは、過去の為替レートの値動きをグラフ化した「チャート」を用いて、将来の値動きを予測する分析手法です。この分析の根底には、「過去に起きた値動きのパターンは、将来も繰り返される傾向がある」という考え方があります。
テクニカル分析では、チャート上に様々な「テクニカル指標(インジケーター)」を表示させて、売買のタイミング(シグナル)を探ります。テクニカル指標には、大きく分けて以下のような種類があります。
- トレンド系指標: 相場の方向性(トレンド)が上昇、下降、横ばいのどれなのかを判断するために使います。
- 代表的な指標: 移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表など
- オシレーター系指標: 相場の「買われすぎ」や「売られすぎ」といった過熱感を判断するために使います。主に、トレンドがないレンジ相場で力を発揮します。
- 代表的な指標: RSI、MACD(マックディー)、ストキャスティクスなど
テクニカル分析のメリット:
- 視覚的で直感的: チャートと指標を見ることで、売買の判断を視覚的に行うことができます。
- 再現性がある: 明確なルールに基づいて売買判断ができるため、誰が分析しても同じような結論に至りやすく、感情の介入を減らすことができます。
- 短期売買にも有効: 数分、数時間といった短い時間軸での値動きの分析にも適しています。
テクニカル分析のデメリット:
- 絶対ではない: あくまで過去のデータに基づく確率論であり、100%当たるものではありません。「ダマシ」と呼ばれる、セオリーとは逆の動きをすることもあります。
- ファンダメンタルズ要因に弱い: 重要な経済指標の発表や、要人発言、地政学リスクといった突発的なニュース(ファンダメンタルズ要因)によって、テクニカル分析の予測が通用しなくなることがあります。
多くの個人トレーダーは、このテクニカル分析を主軸に取引戦略を立てています。テクニカル分析を学ぶことは、自分なりの売買ルールを確立し、一貫性のあるトレードを行うための第一歩です。
② ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは、各国の経済状況や金融政策、政治情勢といった、為替レートを変動させる根本的な要因(ファンダメンタルズ)を分析し、中長期的な為替の方向性を予測する手法です。
テクニカル分析がチャートという「結果」を見るのに対し、ファンダメンタルズ分析は値動きの「原因」を探るアプローチと言えます。
主な分析対象:
- 経済指標:
- 政策金利: 各国の中央銀行が決定する金利。金利が高い国の通貨は買われやすくなる傾向があり、為替レートに最も大きな影響を与える要因の一つです。
- 国内総生産(GDP): 国の経済成長率を示す指標。数値が良いと、その国の通貨は買われやすくなります。
- 雇用統計: 特に米国の雇用統計は、世界中の投資家が注目する最重要指標です。
- 消費者物価指数(CPI): インフレ率を示す指標で、金融政策の方向性を占う上で重要です。
- 金融政策: 各国中央銀行の金融緩和や引き締めに関する発表、総裁などの要人発言。
- 政治情勢・地政学リスク: 選挙の結果、貿易摩擦、紛争など。
ファンダメンタルズ分析のメリット:
- 相場の大きな流れを掴める: 為替レートがなぜ動いているのか、その背景にある大きなトレンドを理解することができます。
- 中長期的な予測に強い: 数週間から数年にわたるような、長期的な為替の方向性を予測するのに適しています。
デメリット:
- 専門知識が必要: 経済学や金融に関する幅広い知識が求められ、初心者には難易度が高い側面があります。
- 短期的な値動きの予測には不向き: 指標の結果が良くても、市場が既にそれを織り込んでいてレートが逆に動くなど、短期的な値動きは複雑です。
FXで成功するためには、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析のどちらか一方に偏るのではなく、両方を組み合わせて総合的に相場を判断する視点が重要です。例えば、「ファンダメンタルズ分析で円安という大きな方向性を掴み、テクニカル分析で具体的な買いのエントリータイミングを探る」といった使い方が理想的です。
③ ローソク足
ローソク足(あし)は、一定期間の値動きを1本の「ローソク」のような形で表した、日本発祥のチャート表示方法です。世界中のトレーダーに利用されており、テクニカル分析の基本中の基本と言えます。
1本のローソク足には、「始値(はじめね)」「終値(おわりね)」「高値(たかね)」「安値(やすね)」という4つの価格情報(四本値)が詰まっています。
- 始値: その期間の最初に付いた価格。
- 終値: その期間の最後に付いた価格。
- 高値: その期間で最も高かった価格。
- 安値: その期間で最も安かった価格。
ローソク足は、始値と終値で囲まれた四角い「実体(じったい)」と、そこから上下に伸びる線「ヒゲ(ひげ)」で構成されます。
- 陽線(ようせん): 終値が始値よりも高い場合に表示されます(通常は白や赤色)。価格が上昇したことを示し、買いの勢力が強かったことを意味します。
- 陰線(いんせん): 終値が始値よりも安い場合に表示されます(通常は黒や青色)。価格が下落したことを示し、売りの勢力が強かったことを意味します。
- 上ヒゲ: 実体から上に伸びる線。その期間の高値を示します。上ヒゲが長いほど、一度は価格が上昇したものの、売りの圧力に押し戻されたことを意味します。
- 下ヒゲ: 実体から下に伸びる線。その期間の安値を示します。下ヒゲが長いほど、一度は価格が下落したものの、買いの圧力に支えられたことを意味します。
ローソク足は、その形や組み合わせによって、市場参加者の心理状態を読み解き、将来の値動きを予測する手がかりとなります。例えば、下ヒゲの長い陽線は上昇への転換を示唆したり、実体が非常に短い「コマ」が連続すると相場の迷いを示したりします。ローソク足一本一本が持つ意味を理解することが、チャート分析の第一歩です。
④ トレンド相場・レンジ相場
為替相場は、大きく分けて「トレンド相場」と「レンジ相場」の2つの状態に分類できます。現在の相場がどちらの状態にあるのかを正しく認識することは、適切な取引戦略を選択する上で非常に重要です。
相場の種類 | 特徴 | 基本的な戦略 |
---|---|---|
トレンド相場 | 価格が一方向(上昇または下降)に継続して動いている状態。 | 順張り(トレンドフォロー): トレンドの方向に沿ってエントリーする。 |
レンジ相場 | 価格が一定の範囲内(高値と安値の間)を行ったり来たりしている状態。「ボックス相場」とも言う。 | 逆張り: レンジの上限(レジスタンスライン)で売り、下限(サポートライン)で買う。 |
- トレンド相場:
- 上昇トレンド: 安値と高値が、両方とも切り上がっている状態。この場合は、価格が一時的に下落したところ(押し目)で買う「押し目買い」が有効な戦略となります。
- 下降トレンド: 高値と安値が、両方とも切り下がっている状態。この場合は、価格が一時的に上昇したところ(戻り)で売る「戻り売り」が有効な戦略となります。
- レンジ相場:
トレンドがなく、方向感に欠ける相場です。この状態では、レンジの上限付近で反落を狙って売り、下限付近で反発を狙って買う「逆張り」が基本戦略となります。ただし、いつかはレンジをどちらかの方向に抜ける(ブレイクする)ため、ブレイクした場合はトレンド相場に移行したと判断し、戦略を切り替える必要があります。
FX初心者は、まず方向性が分かりやすいトレンド相場での「順張り」から始めるのがおすすめです。相場の7割はレンジ相場とも言われますが、トレンドが発生した時にその流れに乗ることで、大きな利益を狙いやすくなります。移動平均線などのトレンド系指標を使って、現在の相場がどちらの状態なのかを判断するスキルを磨きましょう。
⑤ サポートライン(支持線)
サポートライン(支持線)とは、チャート上で、過去に何度も価格の下落が止められ、反発している安値同士を結んだ線のことです。このラインは、市場参加者の多くが「これ以上は下がらないだろう」と意識している価格水準であり、買いの注文が集まりやすいポイントとされています。
サポートラインの役割:
- 下値の目処: 価格が下落してきた際に、どこで下げ止まるかの目安になります。
- 買いのエントリーポイント: 価格がサポートラインに近づいて反発するのを確認できれば、そこは絶好の買い場(押し目買いのチャンス)となる可能性があります。
- 損切りラインの目安: 買いポジションを持っている場合、サポートラインを明確に下に割り込んだら、下降トレンドが強まる可能性が高いと判断し、損切りする目安とすることができます。
サポートラインを下にブレイク(下抜け)すると、今度はそのラインが「レジスタンスライン(抵抗線)」として機能することがあります。これを「サポレジ転換」と呼び、非常に重要なチャートパターンの一つです。
サポートラインは、水平に引ける場合もあれば、上昇トレンドに沿って右肩上がりに引ける場合もあります。有効なサポートラインを見つけるためには、チャートを様々な時間軸で観察し、何度も反発している価格帯を探す練習が必要です。
⑥ レジスタンスライン(抵抗線)
レジスタンスライン(抵抗線)とは、サポートラインとは逆に、チャート上で、過去に何度も価格の上昇が止められ、反落している高値同士を結んだ線のことです。このラインは、市場参加者の多くが「これ以上は上がらないだろう」と意識している価格水準であり、売りの注文が集まりやすいポイントとされています。
レジスタンスラインの役割:
- 上値の目処: 価格が上昇してきた際に、どこで頭打ちになるかの目安になります。
- 売りのエントリーポイント: 価格がレジスタンスラインに近づいて反落するのを確認できれば、そこは絶好の売り場(戻り売りのチャンス)となる可能性があります。
- 利益確定の目標: 買いポジションを持っている場合、価格がレジスタンスラインに近づいたら、反落する前に利益を確定する目標地点とすることができます。
レジスタンスラインを上にブレイク(上抜け)すると、今度はそのラインが「サポートライン(支持線)」として機能することがあります。これも「サポレジ転換」の一例です。
レジスタンスラインもサポートラインと同様に、水平線や右肩下がりの線として引かれます。サポートラインとレジスタンスラインは、テクニカル分析における最も基本的で強力なツールです。この2本の線をチャートに引けるようになるだけで、どこでエントリーし、どこで利益確定や損切りをすべきかという、具体的な取引戦略を立てることができるようになります。
⑦ ゴールデンクロス・デッドクロス
ゴールデンクロスとデッドクロスは、「移動平均線」というトレンド系指標を使った、非常に有名な売買サインです。移動平均線とは、一定期間の終値の平均値を結んだ線のことで、相場の大きな流れを滑らかに表示してくれます。通常、期間の短い「短期移動平均線」と、期間の長い「長期移動平均線」の2本を組み合わせて使います。
- ゴールデンクロス:
短期移動平均線が、長期移動平均線を下から上に突き抜ける現象のことです。これは、短期的な上昇の勢いが、長期的なトレンドを上回ってきたことを示唆し、強力な「買いサイン」とされています。本格的な上昇トレンドの始まりを示すシグナルとして、多くのトレーダーに意識されます。 - デッドクロス:
短期移動平均線が、長期移動平均線を上から下に突き抜ける現象のことです。これはゴールデンクロスとは逆に、短期的な下落の勢いが、長期的なトレンドを下回ってきたことを示唆し、強力な「売りサイン」とされています。本格的な下降トレンドの始まりを示すシグナルとして警戒されます。
ゴールデンクロス・デッドクロスの注意点:
このサインは非常に有名で有効ですが、万能ではありません。
- ダマシの存在: クロスした後に、すぐに逆方向に戻ってしまう「ダマシ」が発生することがあります。特に、トレンドがないレンジ相場では、クロスが頻発して機能しにくくなります。
- 反応の遅れ: 移動平均線は過去の価格の平均値から算出されるため、実際の値動きよりも反応が遅れるという性質(遅行性)があります。クロスが発生した時点では、既に価格がかなり進んでしまっていることも少なくありません。
そのため、ゴールデンクロスやデッドクロスだけで売買を判断するのではなく、他のテクニカル指標(RSIやMACDなど)や、サポートライン・レジスタンスラインと組み合わせて、総合的に判断することが、サインの信頼性を高める上で重要になります。
【リスク管理・その他編】覚えておきたい重要用語6選
FXで利益を追求することと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「リスク管理」です。大切な資金を守り、市場で長く生き残るためには、リスクに関連する用語を正しく理解し、実践することが不可欠です。ここでは、リスク管理の基本となる用語や、取引の裏側で起きている現象に関する用語を6つ解説します。
① 円高・円安
円高・円安は、ニュースでも頻繁に耳にする言葉ですが、FX取引においてその意味を正確に理解しておくことは必須です。これは、「円」の価値が、他の通貨(例えば米ドル)に対して高くなったか、安くなったかを示す言葉です。
- 円安(えんやす):
円の価値が、外貨に対して安くなることを意味します。
例えば、「1ドル = 150円」から「1ドル = 160円」に変動した場合、同じ1ドルを手に入れるためにより多くの円(150円→160円)が必要になったということです。これは、円の価値が下がり、ドルの価値が上がったことを示します。これを「円安ドル高」と言います。
FX取引での影響: 米ドル/円のチャートは上昇します。買い(ロング)ポジションを持っていれば利益が出ます。 - 円高(えんだか):
円の価値が、外貨に対して高くなることを意味します。
例えば、「1ドル = 150円」から「1ドル = 140円」に変動した場合、より少ない円(150円→140円)で1ドルを手に入れられるようになったということです。これは、円の価値が上がり、ドルの価値が下がったことを示します。これを「円高ドル安」と言います。
FX取引での影響: 米ドル/円のチャートは下落します。売り(ショート)ポジションを持っていれば利益が出ます。
初心者が混乱しやすいポイントは、「数字が大きくなると円安、小さくなると円高」という点です。これは、米ドル/円の為替レートが「1ドルあたり何円か」を表しているためです。「円の価値」という視点で考えると理解しやすくなります。円安は「円の力が弱くなった」、円高は「円の力が強くなった」とイメージすると良いでしょう。この円高・円安のメカニズムを理解することが、相場の方向性を読む上での基礎となります。
② 含み益・含み損
含み益(ふくみえき)・含み損(ふくみぞん)は、保有している未決済のポジションに、現時点で発生している評価上の利益または損失のことです。
- 含み益(評価益):
保有しているポジションの現在のレートが、エントリーした時のレートよりも有利な方向にある状態です。
(例)米ドル/円を150.00円で買い、現在のレートが150.50円の場合、0.50円分の含み益が発生しています。 - 含み損(評価損):
保有しているポジションの現在のレートが、エントリーした時のレートよりも不利な方向にある状態です。
(例)米ドル/円を150.00円で買い、現在のレートが149.50円の場合、0.50円分の含み損が発生しています。
これらはあくまで「評価上」の損益であり、ポジションを決済するまでは確定しません。含み益は、決済して初めて実際の利益となります。逆に言えば、含み益が出ている状態でも、決済する前にレートが戻ってしまえば利益は消えてしまいます(これを「利を逃す」と言います)。
含み損益とメンタル管理は密接に関連しています。
- 含み益: 「もっと利益が伸びるかもしれない」という欲が出てしまい、利益確定のタイミングを逃しがちです(プロフィット・カッティング)。
- 含み損: 「そのうち戻るだろう」という期待から損失を確定できず、結果的に損失を拡大させてしまう傾向があります(損切りできない病)。
このような感情的な判断を避けるためには、エントリーする前に「いくら利益が出たら決済する(利益確定ライン)」「いくら損失が出たら決済する(損切りライン)」というルールを明確に決め、OCO注文やIFO注文を使って予約しておくことが極めて重要です。含み損益の数字の変動に一喜一憂せず、事前に立てた計画に従って淡々と取引することが、成功への鍵です。
③ 損切り
損切り(そんぎり)とは、含み損を抱えているポジションを、損失がそれ以上拡大する前に自らの意思で決済し、損失を確定させる行為です。「ストップロス」とも呼ばれます。
FXで勝ち続けるトレーダーは、例外なくこの損切りを徹底しています。なぜなら、FXの世界では「100%勝てる手法」は存在せず、誰でも必ず負けトレード(予想が外れること)を経験するからです。重要なのは、一度の負けで致命的なダメージを負わないことです。
損切りが重要な理由:
- 資金を守る: 損切りをしないと、一度の大きな損失で再起不能になる可能性があります。損切りは、次のチャンスに備えて資金を守るための、最も重要な防御策です。
- 「損小利大」の実践: FXの利益の原則は「損失は小さく、利益は大きく(損小利大)」です。小さな損失を素早く確定(損切り)し、利益が出た時になるべく大きく伸ばすことで、トータルでプラスの収支を目指します。
- 精神的な安定: 塩漬け(損切りできずに含み損を抱え続けること)のポジションは、常に精神的なプレッシャーとなり、次の冷静な判断を妨げます。損切りをすることで、そのトレードをリセットし、新たな気持ちで次の機会に集中できます。
損切りのルールの決め方:
損切りは感情で行うものではなく、ルールに基づいて機械的に行うべきです。
- pipsで決める: 「エントリー価格から-20pips逆行したら損切りする」
- 金額で決める: 「1回のトレードの損失は、総資金の2%まで」
- テクニカル分析で決める: 「サポートラインを割り込んだら損切りする」
どの方法が良いかはスタイルによりますが、重要なのは、エントリー前に必ず損切りラインを決めておくことです。そして、そのラインに達したら、何の感情も挟まずに実行することが求められます。逆指値注文(ストップ注文)を使えば、この損切りを自動化できます。
④ 約定
約定(やくじょう)とは、トレーダーが出した買い注文や売り注文が、FX会社を通じて市場で成立することを指します。注文が約定して初めて、ポジションを持ったり、決済して損益を確定させたりすることができます。
この約定に関連して、FX会社を選ぶ際に重要となるのが「約定力」という概念です。約定力とは、トレーダーが出した注文を、「いかに速く、いかに指定した通りの価格で」成立させられるかという能力を指します。
約定力が高いFX会社には、以下のようなメリットがあります。
- スリッページが起きにくい: 注文価格と約定価格のズレ(スリッページ)が発生しにくく、意図した通りの価格で取引できます。
- 約定拒否が少ない: 市場が急変動している時でも、注文が拒否されずに通りやすいです。
特に、数秒単位で取引を繰り返すスキャルピングのような短期売買では、この約定力の差が収益に直結します。わずかなスリッページや約定の遅れが、利益を損失に変えてしまうこともあるからです。
FX会社は、それぞれ独自の取引システムやサーバー、提携する金融機関(カバー先)を持っており、それによって約定力に差が生まれます。FX会社のウェブサイトでは、自社の約定力の高さをアピールしていることが多いですが、実際に使ってみないと分からない部分もあります。デモトレードや、他のトレーダーの評判などを参考にすると良いでしょう。
⑤ スリッページ
スリッページ(Slippage)とは、FXの注文を出した時の価格(画面に表示されていた価格)と、実際に約定した価格との間に生じるズレのことです。
スリッページは、注文データがトレーダーのPCからFX会社のサーバーへ、そして市場へと伝わる間のわずかなタイムラグによって発生します。その間に為替レートが変動すると、ズレが生じるのです。
スリッページには、トレーダーにとって有利な方向にズレる「ポジティブ・スリッページ」と、不利な方向にズレる「ネガティブ・スリッページ」があります。しかし、一般的に問題とされるのはネガティブ・スリッページの方です。
スリッページが発生しやすい状況:
- 経済指標発表時: 米国の雇用統計など、重要な経済指標が発表される前後は、市場参加者の注文が殺到し、レートが激しく上下するため、スリッページが非常に起きやすくなります。
- 市場の流動性が低い時間帯: 早朝など、市場参加者が少なく取引が閑散としている時間帯も、わずかな注文で価格が飛びやすいため、スリッページの原因となります。
- 成行注文を使った時: 価格を指定しない成行注文は、指値注文に比べてスリッページが発生しやすい傾向にあります。
スリッページへの対策:
多くのFX会社では、注文時に「許容スリッページ」を設定する機能があります。これは、「指定したpips以上に不利な方向へスリッページが発生した場合は、その注文を約定させない(キャンセルする)」という設定です。例えば、許容スリッページを「1pips」に設定すれば、意図しない大きな損失を防ぐことができます。ただし、この設定を厳しくしすぎると、逆に注文が約定しにくくなるという側面もあるため、バランスが重要です。
⑥ トレール注文
トレール注文とは、相場の値動きに合わせて、損切りライン(逆指値レート)を自動的に有利な方向へ追従(トレール/trail)させていく特殊な注文方法です。「トレーリングストップ注文」とも呼ばれます。
この注文の最大の目的は、「損失を限定しつつ、利益を最大限に伸ばすこと」です。
トレール注文の仕組み:
例えば、米ドル/円を150.00円で買い、損切りラインを149.50円に設定したとします。ここで、「トレール幅」を50pips(0.50円)に設定してトレール注文を発動させます。
- レートが151.00円まで上昇すると、損切りラインも自動的に50pips上昇し、150.00円(エントリー価格)に移動します。この時点で、最悪でも損失はゼロ(トントン)になります。
- さらにレートが152.00円まで上昇すると、損切りラインも追従して151.50円に移動します。この時点で、最低でも1.50円の利益が確保されたことになります。
- その後、レートが反落し、151.50円に達した時点で、自動的に決済注文が約定し、利益が確定します。
このように、トレール注文は価格が有利な方向に動いている限り損切りラインを切り上げ続け、一度切り上がった損切りラインは、価格が不利な方向に動いても下がることはありません。
メリット:
- 含み益を確保しながら、トレンドが続く限り利益を伸ばし続けることができます。
- 利益確定のタイミングに悩む必要がなくなります。
デメリット:
- トレンドの途中で一時的な押し目や戻りが大きい場合、まだトレンドが継続しているにも関わらず、早めに決済されてしまう可能性があります。
- トレール幅の設定が難しく、狭すぎるとすぐに決済され、広すぎると利益を削ってしまうことになります。
トレール注文は、明確なトレンドが発生している相場で非常に有効なツールです。自分の取引戦略に合わせてトレール幅を調整し、うまく使いこなすことで、「損小利大」を効率的に実現する手助けとなります。
あなたのスタイルはどれ?取引手法に関する用語
FXには、取引にかける時間軸によって、大きく4つの取引スタイル(手法)が存在します。どのスタイルが自分に合っているかは、性格やライフスタイル、資金量によって異なります。それぞれの特徴を理解し、自分の目指すトレードスタイルを見つけましょう。
取引手法 | 取引期間 | 1日の取引回数 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
スキャルピング | 数秒~数分 | 非常に多い | 資金効率が良い、大きな価格変動リスクを避けやすい | 高い集中力と瞬時の判断力が必要、取引コストがかさむ |
デイトレード | 数分~数時間 | 多い | ポジションを翌日に持ち越さないため精神的に楽 | チャートに張り付く時間が必要、1回あたりの利益は限定的 |
スイングトレード | 数日~数週間 | 少ない | ゆったり取引できる、1回の取引で大きな利益を狙える | ポジション保有中の価格変動リスク、マイナススワップの可能性 |
ポジショントレード | 数週間~数年 | 非常に少ない | チャートを頻繁に見る必要がない、ファンダメンタルズ分析が主体 | 大きな資金が必要、結果が出るまで時間がかかる |
スキャルピング
スキャルピングとは、数秒から数分という非常に短い時間軸で、1日に何十回、何百回と取引を繰り返し、数pips程度の小さな利益をコツコツと積み重ねていく超短期売買の手法です。「スキャルプ(scalp)」が「頭の皮を薄く剥ぐ」という意味を持つことが語源となっています。
特徴:
- 1分足や5分足といった非常に短い時間足のチャートを使用します。
- 小さな値動きを狙うため、レバレッジを比較的高めに設定することが多いです。
- テクニカル分析、特にチャートの形やローソク足の勢いを瞬時に判断する「プライスアクション」が重視されます。
向いている人:
- ゲームのように、瞬時の判断力や反射神経に自信がある人。
- 高い集中力を長時間維持できる人。
- 取引中はPCの前に張り付いていられる人。
注意点:
スキャルピングは取引回数が非常に多くなるため、スプレッド(取引コスト)の狭さと約定力の高さが、損益に直接的な影響を与えます。また、FX会社によっては、サーバーに大きな負荷をかけるスキャルピング行為を規約で禁止または制限している場合があるため、事前に確認が必要です。
デイトレード
デイトレードは、1日のうちに新規注文から決済注文までを完結させ、ポジションを翌日に持ち越さない取引手法です。取引時間は数十分から数時間程度で、1日に数回程度の取引を行います。個人投資家に最も人気のあるスタイルの一つです。
特徴:
- 5分足、15分足、1時間足などのチャートを組み合わせて分析します。
- その日のうちに取引を終えるため、就寝中に相場が急変して大きな損失を被るリスクを回避できます。
- 経済指標の発表など、その日のうちに値動きがありそうな時間帯を狙って取引することが多いです。
向いている人:
- 日中に数時間、取引に集中できる時間がある人。
- ポジションを持ち越すことによる精神的なストレスを感じたくない人。
- スキャルピングほどの瞬発力はないが、コツコツ利益を積み重ねたい人。
注意点:
1回の取引で狙う利益幅はスキャルピングより大きいですが、それでも限定的です。そのため、勝率を高めることと、損切りを徹底することが重要になります。また、利益を出すためには、ある程度チャートを見続ける時間が必要です。
スイングトレード
スイングトレードは、数日から数週間程度、ポジションを保有し続ける中期的な取引手法です。日々の細かな値動きに一喜一憂するのではなく、数日単位のトレンド(スイング=揺れ)を捉えて、比較的大きな利益を狙います。
特徴:
- 4時間足、日足、週足といった長い時間足のチャートを主に使用します。
- ファンダメンタルズ分析で大きな方向性を確認し、テクニカル分析でエントリータイミングを探るなど、両方の分析を組み合わせることが多いです。
- 一度ポジションを持てば、頻繁にチャートを確認する必要がないため、本業が忙しい人でも取り組みやすいです。
向いている人:
- 日中は仕事などでチャートを見る時間がない人。
- ゆったりとしたペースで、落ち着いて取引したい人。
- 1回の取引で数十pipsから数百pipsの大きな利益を狙いたい人。
注意点:
ポジションを長期間保有するため、週末や祝日をまたぐ際の価格変動リスク(窓開けリスク)や、マイナスのスワップポイントが積み重なるリスクを考慮する必要があります。また、デイトレードに比べて損切り幅も広めに設定する必要があるため、ある程度の含み損に耐えられる資金管理と精神的な強さが求められます。
ポジショントレード
ポジショントレードは、数週間から数ヶ月、場合によっては数年単位でポジションを保有する、最も長期的な取引手法です。日々の細かな価格変動は無視し、各国の金利差や経済成長率といった、大きなファンダメンタルズの潮流に乗って利益を狙います。
特徴:
- 週足や月足チャートを用いて、長期的なトレンドを分析します。
- テクニカル分析よりも、ファンダメンタルズ分析の比重が非常に大きくなります。
- 為替差益(キャピタルゲイン)だけでなく、スワップポイントによる利益(インカムゲイン)も重要な収益源となります。
向いている人:
- 経済や世界情勢の分析が好きな人。
- どっしりと構えて、長期的な視点で資産を育てたい人。
- 十分な余裕資金を持っている人。
注意点:
結果が出るまでに非常に長い時間がかかります。また、長期保有に耐えられるよう、レバレッジは極力低く(1〜3倍程度)抑える必要があり、相応の資金力が求められます。大きなトレンドを捉えられればリターンも大きいですが、長期的に予想が外れた場合の損失も大きくなる可能性があるため、綿密な分析と資金計画が不可欠です。
FX用語を覚えた後にすべきこと
ここまでで、FX取引の基本から応用まで、様々な用語を学んできました。しかし、知識をインプットしただけでは、実際の取引で利益を上げることはできません。スポーツと同じで、ルールを覚えたら、次は実践的な練習が必要です。ここでは、用語を覚えた後に取り組むべき2つのステップを紹介します。
デモトレードで練習する
デモトレードとは、仮想の資金を使って、本番とほぼ同じ環境でFX取引を体験できる無料のトレーニングツールです。ほとんどのFX会社が提供しており、メールアドレスなどを登録するだけで誰でも簡単に始めることができます。
デモトレードのメリット:
- ノーリスクで実践できる: 自分の資金を一切使わないため、どれだけ損失を出しても金銭的なダメージはゼロです。失敗を恐れずに、様々なことを試すことができます。
- 取引ツールに慣れる: 実際の取引で使うプラットフォームの操作方法に慣れることができます。注文方法、チャートの設定、インジケーターの表示など、本番で慌てないように一通りの操作をマスターしておきましょう。
- 学んだ知識を試せる: この記事で学んだ注文方法(IFO注文など)や、テクニカル分析(サポートラインやゴールデンクロスなど)が、実際の相場でどのように機能するのかを自分の手で試すことができます。
- 自分なりのルールを検証できる: 「こういう条件が揃ったらエントリーする」「損切りは-20pipsに設定する」といった自分なりの取引ルールを作り、それが有効かどうかを検証する絶好の機会です。
デモトレードの注意点:
デモトレードは非常に有用なツールですが、本番の取引との間には「精神的なプレッシャー」という大きな違いがあります。仮想資金だと思うと、大胆な取引ができて上手くいくのに、いざ自己資金を使う本番になると、恐怖や欲といった感情に邪魔されて同じように取引できなくなる、というケースは非常に多いです。
デモトレードを行う際は、「これは自分のお金だ」という意識を持って、真剣に取り組むことが重要です。資金管理や損切りルールを本番さながらに徹底し、ゲーム感覚で取り組まないようにしましょう。
少額から取引できるFX会社を選ぶ
デモトレードで操作に慣れ、自分なりの手応えを掴んだら、いよいよリアルトレード(本番取引)のステップに進みます。しかし、ここでいきなり大きな資金を投じるのは非常に危険です。デモトレードとリアルトレードの壁を乗り越えるためには、「少額」から始めることが鉄則です。
多くのFX会社では、最小取引単位が「1,000通貨」(0.1ロット)からとなっています。1,000通貨単位での取引には、以下のようなメリットがあります。
- 必要な証拠金が少ない: 例えば、米ドル/円が150円の場合、10,000通貨(1ロット)の取引に必要な証拠金は約60,000円ですが、1,000通貨ならその10分の1の約6,000円で済みます。
- 損失額を小さく抑えられる: 1,000通貨取引の場合、1円(100pips)価格が逆行しても損失は1,000円です。これなら、精神的なダメージも少なく、冷静に損切りを実行しやすくなります。
- 本番の緊張感を経験できる: たとえ少額でも、自己資金を投じることで、デモトレードでは味わえなかった本番の緊張感や、お金が増減するリアルな感覚を経験できます。
初心者は、まず1,000通貨単位で取引できるFX会社を選び、数万円程度の資金からスタートすることを強く推奨します。少額取引で経験を積み、安定して利益を出せるようになってから、徐々に取引量を増やしていくのが、最も安全で確実な成長ルートです。
FXの学習や実践におすすめのFX会社3選
FX会社は数多く存在し、それぞれに特徴があります。初心者がFX会社を選ぶ際には、「少額から取引できるか」「学習コンテンツが充実しているか」「取引ツールは使いやすいか」「サポート体制はしっかりしているか」といった点が重要になります。ここでは、これらの条件を満たし、初心者から経験者まで幅広く支持されているFX会社を3社ご紹介します。
① GMOクリック証券
GMOクリック証券は、FX取引高世界第1位(※)を長年にわたって記録している、業界最大手の一つです。その信頼性と使いやすさから、多くのトレーダーに選ばれています。
(※参照:Finance Magnates 2022年10月 FX/CFD月間取引高調査報告書において、2022年1月~2022年12月のFX取引高(売買代金/米ドル)が世界第1位。GMOクリック証券公式サイトより)
項目 | 内容 |
---|---|
最小取引単位 | 1,000通貨(南アフリカランド/円、メキシコペソ/円は10,000通貨から) |
スプレッド | 業界最狭水準。米ドル/円は0.2銭(原則固定、例外あり) |
取引ツール | PC用の高機能ツール「はっちゅう君FX+」や、直感的に操作できるスマホアプリが好評 |
学習コンテンツ | 初心者向けのガイドや動画コンテンツが充実 |
おすすめポイント | 総合力が高く、取引コストの低さとツールの使いやすさが両立している点。初心者からプロまで、あらゆるレベルのトレーダーのニーズに応えるバランスの取れたサービスを提供しています。デモトレードも利用可能で、まずはその使い勝手を試してみるのがおすすめです。 |
参照:GMOクリック証券 公式サイト
② DMM FX
DMM FXは、初心者向けのサポート体制と分かりやすいサービス設計で人気を集めているFX会社です。各種キャンペーンも積極的に行っており、お得に始めたい方にも適しています。
項目 | 内容 |
---|---|
最小取引単位 | 10,000通貨 |
スプレッド | 業界最狭水準。米ドル/円は0.2銭(原則固定、例外あり) |
取引ツール | シンプルで分かりやすい取引ツールを提供。スマホアプリの評価も高い |
サポート体制 | 業界初となるLINEでの問い合わせに対応しており、平日24時間、気軽に質問できる点が大きな強み |
おすすめポイント | 初心者への手厚いサポート体制。電話やメールに加え、使い慣れたLINEでいつでも問い合わせができる安心感は、これからFXを始める方にとって心強い味方となります。取引ツールも直感的で分かりやすく、迷うことなく操作できるでしょう。 |
参照:DMM.com証券 公式サイト
③ 外為どっとコム
外為どっとコムは、1,000通貨単位の少額取引にいち早く対応し、FX専業の老舗として豊富な情報量に定評がある会社です。学習意欲の高い初心者に特におすすめです。
項目 | 内容 |
---|---|
最小取引単位 | 1,000通貨(ロシアルーブル/円は10,000通貨から) |
スプレッド | 業界最狭水準。米ドル/円は0.2銭(原則固定、例外あり) |
学習コンテンツ | 圧倒的な情報量が最大の強み。著名なアナリストによるレポートや、初心者から上級者までを対象としたオンラインセミナーが非常に充実しています |
注文機能 | 多彩な注文機能が利用可能で、緻密な取引戦略を実行しやすい |
おすすめポイント | 学びながら実践したいというニーズに応える豊富な情報コンテンツ。相場分析レポートやセミナーを活用することで、独学では得られない深い知識を身につけることができます。1,000通貨から取引できるため、学んだことをすぐに少額で試す、という学習サイクルを回しやすいのも魅力です。 |
参照:外為どっとコム 公式サイト
これらのFX会社は、いずれも信頼性が高く、初心者にとって使いやすいサービスを提供しています。それぞれの特徴を比較し、ご自身の目的やスタイルに最も合った会社を選んで、口座開設を進めてみましょう。
まとめ
今回は、FX初心者が覚えるべき必須用語を、「取引の基礎」「実践(注文)」「相場分析」「リスク管理」といったカテゴリに分けて、網羅的に解説しました。
最初は多くの専門用語に戸惑うかもしれませんが、一つ一つの意味と「なぜそれが重要なのか」を理解していくことで、これまで漠然としていたFXの世界が、より明確で論理的なものとして見えてくるはずです。
最後に、この記事で学んだことを今後のFX学習と実践に繋げるためのステップを再確認しましょう。
- 用語の理解を定着させる: まずはこの記事で紹介した【取引の基礎編】と【実践編】の用語を完璧にマスターしましょう。これらの用語は、取引を行う上での土台となります。
- デモトレードで実践練習: 知識を覚えたら、次はデモトレードで実際に手を動かしてみましょう。IFO注文の設定や、サポートライン・レジスタンスラインを自分で引いてみるなど、知識を使えるスキルに変えるための重要なステップです。
- 少額からリアルトレードを開始: デモトレードで自信がついたら、いよいよ本番です。必ず1,000通貨単位のような少額取引からスタートし、リアルな相場の緊張感の中で、資金管理と損切りルールを徹底する訓練を積んでいきましょう。
FXは、正しい知識を学び、適切なリスク管理を行えば、決して怖いものではありません。むしろ、世界経済の動きを肌で感じながら、知的に資産形成を目指せる魅力的な市場です。
今回学んだ用語は、あなたのFXキャリアにおける羅針盤となる知識です。この記事を何度も読み返し、FXという広大な海を航海するための確かな土台を築き上げてください。あなたの挑戦を心から応援しています。