FXの自動売買(EA)で安定した利益を追求するためには、取引環境の整備が極めて重要です。24時間変動し続ける為替市場において、一瞬のチャンスを逃さないためには、システムを常に最適な状態で稼働させ続ける必要があります。そこで注目されるのが「VPS(Virtual Private Server)」の活用です。
この記事では、FXの自動売買を行う上でなぜVPSが推奨されるのか、その基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、そして自身の取引スタイルに合ったVPSの選び方までを網羅的に解説します。さらに、現在利用できる主要なVPSサービスを12個厳選し、スペックや料金を徹底比較します。
これからFXの自動売買を始めたいと考えている初心者の方から、すでに取引を行っているものの、より安定した環境を求めている中〜上級者の方まで、この記事を読めばFX向けVPSのすべてが分かり、最適な取引環境を構築するための第一歩を踏み出せるはずです。
目次
FXにおけるVPSとは
FXの自動売買(EA)について調べ始めると、必ずと言っていいほど目にする「VPS」という言葉。しかし、ITに詳しくない方にとっては「サーバーの一種らしいけれど、具体的に何なのかよく分からない」と感じるかもしれません。このセクションでは、VPSの基本的な仕組みと役割、他のサーバーとの違い、そしてなぜFXの自動売買においてVPSが重要視されるのかを、分かりやすく解説していきます。
VPSの仕組みと役割
VPSとは「Virtual Private Server」の略で、日本語では「仮想専用サーバー」と訳されます。この仕組みを理解するために、まずは物理的なサーバーを想像してみてください。VPSサービスを提供する会社は、データセンターに非常に高性能な物理サーバーを保有しています。
VPSの技術は、この1台の物理サーバーを、OS(オペレーティングシステム)レベルで複数の仮想的なサーバーに分割し、それぞれの仮想サーバーをユーザーが「自分専用のサーバー」として利用できるようにするものです。
もう少し身近な例で考えてみましょう。大きな一軒家(物理サーバー)を、複数の部屋(仮想サーバー)に区切り、それぞれの部屋を別々の人に貸し出すシェアハウスのようなものです。各部屋には鍵がかかっており、プライバシーが保たれています。住人(ユーザー)は、自分の部屋を自由にカスタマイズ(ソフトウェアのインストールなど)できますが、建物全体の構造(物理サーバーのハードウェア)を勝手に変更することはできません。
このように、VPSユーザーは、1台の物理サーバーを他のユーザーと共有しつつも、割り当てられたCPU(処理能力)やメモリ(作業スペース)、ストレージ(記憶容量)といったリソース内では、管理者権限(Administrator権限)を持って自由にOSやアプリケーションを操作できます。
FX取引におけるVPSの役割は、インターネット上にある「もう一台の自分専用パソコン」と考えると非常に分かりやすいです。この仮想的なパソコン(VPS)は、サービス提供会社の堅牢なデータセンター内で24時間365日稼働し続けています。トレーダーは、自宅のパソコンやスマートフォンから、このVPSにリモートデスクトップ接続という方法でアクセスし、あたかも手元のPCを操作するように、VPS上にインストールしたMT4(MetaTrader 4)やMT5(MetaTrader 5)を動かすことができます。
レンタルサーバーや専用サーバーとの違い
サーバーにはVPS以外にもいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。FXの文脈から少し離れますが、VPSの位置づけを明確にするために、代表的な「共用サーバー(レンタルサーバー)」「専用サーバー」との違いを理解しておきましょう。
サーバーの種類 | 仕組み | 自由度(管理者権限) | パフォーマンス | コスト | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
共用サーバー | 1台の物理サーバーとOSを複数ユーザーで共有 | なし | 他のユーザーの影響を受けやすい | 安価 | Webサイト、ブログ、メール |
VPS | 1台の物理サーバーを仮想的に分割し、OSは各ユーザー専用 | あり | 他のユーザーの影響を受けにくい | 中程度 | FX自動売買、Webアプリ開発 |
専用サーバー | 1台の物理サーバーを1ユーザーが独占 | あり | 非常に高い | 高価 | 大規模サイト、高負荷なサービス |
共用サーバー(レンタルサーバー)
これは前述のシェアハウスの例でいうと、一つの大きな部屋(OS)をカーテンなどで仕切って複数人で使っている状態です。最も手軽で安価ですが、自由度が低く、他のユーザーの利用状況(例えば、誰かのサイトにアクセスが集中するなど)によって自分の環境まで遅くなることがあります。MT4のようなアプリケーションを自由にインストールすることは基本的にできないため、FXの自動売買には向いていません。
専用サーバー
これは一軒家(物理サーバー)を丸ごと一棟借りる状態です。サーバーの全リソースを独占できるため、パフォーマンスは非常に高く、自由度も最大です。しかし、その分コストは非常に高額(月額数万円〜)になり、個人がFXの自動売買のためだけに利用するのは現実的ではありません。
VPS(仮想専用サーバー)
VPSは、この共用サーバーと専用サーバーの「良いとこ取り」をしたような存在です。共用サーバー並みの手頃なコスト感でありながら、専用サーバーのような自由度と独立した環境を手に入れられるのが最大の特徴です。各ユーザーの環境は仮想的に隔離されているため、他のユーザーの影響を受けにくく、安定したパフォーマンスが期待できます。MT4/MT5を自由にインストールし、24時間稼働させるというFXの自動売買の要件に、まさに最適なサーバーと言えるでしょう。
FXの自動売買でVPSが必要な理由
では、なぜ自宅のパソコンではなく、わざわざ月額料金を払ってまでVPSを利用する必要があるのでしょうか。その理由は、FXの自動売買(EA)の特性にあります。
EAは、設定されたロジックに従って、24時間市場を監視し、エントリー条件が整えば自動で注文を行い、決済条件が満たされれば自動でポジションを閉じます。この一連の動作を正確に実行し続けるためには、EAが稼働しているMT4/MT5、そしてそれを動かすパソコン自体が、24時間365日、常に安定してオンライン状態にあることが絶対条件となります。
もし自宅のパソコンでEAを稼働させている場合、以下のような様々なリスクに常に晒されることになります。
- 停電・瞬電:落雷や電力会社の都合で停電が発生すると、PCの電源が落ち、EAも停止します。絶好の取引機会を逃すだけでなく、保有中のポジションが決済されずに大きな損失につながるリスクもあります。
- インターネット回線の切断:プロバイダーのメンテナンスや通信障害、ルーターの不具合などで回線が切れると、EAは取引サーバーと通信できなくなり、やはり取引が停止します。
- PCのフリーズ・強制再起動:Windows Updateによる意図しない再起動や、ソフトウェアの競合、ハードウェアの不調などでPCがフリーズしたり再起動したりする可能性があります。
- PCのスペック不足:複数のEAを同時に動かしたり、複雑な分析を行ったりすると、PCの動作が重くなり、注文の遅延やフリーズの原因となります。
- 家族による誤操作:家族が誤ってPCの電源を切ってしまったり、MT4のウィンドウを閉じてしまったりするリスクも考えられます。
- 電気代とPCの消耗:24時間PCを稼働させ続けると、電気代がかさむだけでなく、PC本体のファンやストレージといった部品の寿命を縮めることにもなります。
これらのリスクはすべて、EAにとって致命的な「機会損失」や「予期せぬ損失」に直結します。VPSを利用するということは、これらの自宅環境に潜むあらゆるリスクからEAを隔離し、プロが管理する堅牢なデータセンター内の最適な環境で、取引システムを稼働させることを意味します。月々のコストはかかりますが、それを上回る安定性と安心感を得られるため、本格的に自動売買に取り組むトレーダーにとっては、VPSはもはや「推奨」ではなく「必須」のツールとなっているのです。
FXでVPSを利用する5つのメリット
FXの自動売買においてVPSがなぜ重要なのかを理解したところで、次にVPSを利用することで得られる具体的なメリットを5つのポイントに分けて詳しく解説します。これらのメリットは、取引の安定性向上だけでなく、トレーダー自身の精神的な負担軽減にも繋がる重要な要素です。
① 24時間365日、安定して自動売買ができる
これがVPSを利用する最大のメリットであり、根本的な理由です。為替市場は、土日を除いて24時間常に動き続けています。東京時間、ロンドン時間、ニューヨーク時間と、世界中の市場がリレー形式で開いており、いつどこで大きな値動きが発生するか予測は困難です。
EA(自動売買ソフト)は、このような市場の動きを常に監視し、プログラムされた戦略に基づいて自動で売買を行います。そのため、EAのパフォーマンスを最大限に引き出すには、EAが稼働するプラットフォーム(MT4/MT5)が24時間365日、一時も止まることなく動き続けることが絶対条件です。
自宅のPCでこれを実現しようとすると、前述した停電や回線トラブル、PCの不具合といった様々なリスクが伴います。しかし、VPSは専門の事業者が管理するデータセンターに設置されています。これらのデータセンターは、以下のような非常に高いレベルのインフラを備えています。
- 冗長化された電源設備:万が一の停電に備え、UPS(無停電電源装置)や自家発電設備が完備されており、電力供給が途絶えることはありません。
- 高速かつ安定したバックボーン回線:複数の大手プロバイダーと接続された大容量のインターネット回線により、高速で安定した通信環境が保証されています。
- 厳格な温度・湿度管理:サーバーが最適なパフォーマンスを発揮できるよう、24時間体制で空調が管理されています。
- 専門スタッフによる24時間監視:ハードウェアの異常やネットワークの障害を専門の技術者が常に監視し、問題が発生した際には迅速に対応します。
このようなプロフェッショナルな環境にEAを置くことで、自宅環境では決して実現できないレベルの「稼働安定性」を手に入れることができます。これにより、深夜のロンドン市場や早朝のニューヨーク市場で発生する重要な取引機会を逃すことなく、EAに全ての判断を任せることが可能になります。トレーダー自身が寝ている間も、EAはVPS上で黙々と働き続け、利益獲得のチャンスを追求してくれるのです。
② 停電や災害など不測の事態に備えられる
日本は地震や台風といった自然災害が非常に多い国です。大規模な災害が発生した場合、広範囲で長時間の停電や通信インフラの断絶が起こる可能性があります。もし自宅PCでEAを稼働させていた場合、こうした不測の事態が発生すると、取引システムは完全に停止してしまいます。
ポジションを保有している最中に災害に見舞われ、PCが停止してしまったらどうなるでしょうか。損切り設定(ストップロス)がFX業者側のサーバーで執行されるタイプであればまだしも、EA側で決済ロジックを管理している場合、決済注文が出されずに損失が無限に拡大していくという最悪のシナリオも考えられます。
VPSサービスを提供するデータセンターは、このような災害リスクに対しても万全の対策を講じています。
- 耐震・免震構造:震度6〜7クラスの地震にも耐えうる堅牢な建物構造になっています。
- 防火・消火設備:火災のリスクを最小限に抑えるため、不燃性の建材を使用したり、サーバーに影響の少ないガス消火設備などを備えたりしています。
- 立地:地盤の強固な場所や、洪水・津波のリスクが低いエリアを選んで建設されています。
VPSを利用することは、自身の大切な資産を運用する取引システムを、災害から守るための保険(BCP:事業継続計画)としての役割も果たすのです。自宅が被災してしまったとしても、VPS上のEAは安定して稼働を続けてくれるため、取引への影響を最小限に食い止めることができます。この安心感は、特に大きな資金を運用するトレーダーにとって、計り知れない価値があります。
③ スリッページが起こりにくく約定力が向上する
FX取引において、「スリッページ」は利益を損なう厄介な現象です。スリッページとは、注文した価格と実際に約定(取引が成立)した価格との間に生じるズレのことを指します。例えば、1ドル150.000円で買い注文を出したにもかかわらず、実際に約定したのは150.005円だった場合、0.5pipsのスリッページが発生したことになります。
このスリッページが発生する主な原因の一つが、注文を出す側の端末(PCやVPS)からFX業者の取引サーバーまでの通信にかかる時間、すなわち「レイテンシー(遅延時間)」です。通信に時間がかかればかかるほど、その間に為替レートが変動してしまい、不利な価格で約定しやすくなります。
多くのFX業者の取引サーバーは、国内外の主要なデータセンターに設置されています。VPSを利用し、そのVPSの設置場所(ロケーション)を、利用しているFX業者のサーバーの所在地に近づけることで、物理的な距離を短縮し、レイテンシーを劇的に改善できます。
例えば、日本のFX業者を利用している場合、東京のデータセンターに設置されているVPSを選べば、自宅のPCから注文を出すよりもはるかに高速な通信が実現します。同様に、ロンドンにサーバーを置く海外FX業者を利用しているなら、ロンドンにあるVPSを契約するのが最適です。
レイテンシーが短縮されると、注文はより速く、より正確に取引サーバーへ到達します。これにより、スリッページや約定拒否(注文が通らない現象)の発生を抑制し、「約定力」が向上します。特に、数pipsの小さな利益を高速で積み重ねるスキャルピング型のEAにとっては、このわずかな通信速度の差が、取引成績に直接的な影響を与えるのです。
④ 自宅PCのスペックに依存せず快適に取引できる
EAを稼働させるMT4/MT5は、特に複数のチャートを表示させたり、複数のEAを同時に動かしたり、複雑なインジケーターを使用したりすると、想像以上にPCのCPUやメモリを消費します。スペックの低いPCで無理に動かそうとすると、動作がカクカクしたり、最悪の場合はフリーズしてしまったりすることもあります。
また、EAのロジックを検証するための「バックテスト」は、過去の膨大な為替データを使ってシミュレーションを行うため、非常に高い処理能力を要求されます。自宅のPCで詳細なバックテストを実行すると、数時間から、場合によっては丸一日以上かかることも珍しくありません。
VPSを利用すれば、こうした処理負荷のかかる作業はすべて、データセンターにある高性能なサーバー側で行われます。自宅のPCは、そのVPSにアクセスするための「表示・操作端末」として機能するだけです。そのため、自宅PCのスペックが低くても、あるいは古いPCであっても、サクサク快適に取引環境を操作できます。
これにより、自宅のPCでは重くて動かせなかった複数のEAを同時に稼働させたり、快適な環境で裁量トレード用の分析を行ったりすることが可能になります。PCのスペックを気にすることなく、本来集中すべきトレード戦略の構築や分析に時間とリソースを割けるようになるのは、大きなアドバンテージです。
⑤ 場所を選ばずどこからでもアクセスできる
VPSはインターネット上にある仮想的なPCなので、インターネットに接続できる環境さえあれば、世界中どこからでもアクセスできます。
自宅のデスクトップPCはもちろん、ノートPCを持ってカフェや旅行先から、さらにはスマートフォンやタブレットからも、専用のリモートデスクトップアプリを使えば、自分のVPS環境に接続し、EAの稼働状況を確認したり、設定を変更したり、手動でポジションを決済したりすることができます。
- 外出中に経済指標の発表があり、急遽EAを停止したくなった
- 旅行中に相場の急変があり、ポジションの状況が気になった
- 職場の休憩時間にEAのパフォーマンスをチェックしたい
このような様々な状況で、手元のデバイスからいつでも自分の取引環境にアクセスできる利便性は、VPSならではのメリットです。自宅のPCの電源を付けっぱなしにしておく必要も、リモートアクセス用の複雑な設定をする必要もありません。この自由度の高さは、ライフスタイルに合わせて柔軟にFX取引を続けたいと考える現代のトレーダーにとって、非常に魅力的なポイントと言えるでしょう。
FXでVPSを利用する2つのデメリット
多くのメリットがある一方で、FXでVPSを利用するにはいくつかのデメリットも存在します。これらを事前に理解し、自身の取引スタイルや資金状況と照らし合わせて判断することが重要です。ここでは、主な2つのデメリットについて詳しく解説します。
① 月額費用がかかる
VPSを利用する上で最も現実的かつ最大のデメリットは、継続的なコストが発生することです。VPSはレンタルサービスであるため、利用し続ける限り、月額または年額で料金を支払い続ける必要があります。
この料金は、選択するVPSサービスの会社やプラン(サーバーのスペック)によって大きく異なります。
- 低価格帯プラン:月額数百円〜2,000円程度。MT4を1〜2個動かす程度の初心者向け。
- 標準的なプラン:月額2,000円〜5,000円程度。複数のMT4/MT5やEAを安定して稼働させたい中級者向け。
- 高性能プラン:月額5,000円以上。多数のEAを運用したり、高速なバックテストを頻繁に行ったりする上級者向け。
FXで得られる利益がこの月額費用を上回らなければ、トータルではマイナスになってしまいます。特に、まだFX取引で安定した利益を出せていない初心者の方にとっては、この固定費が精神的なプレッシャーになる可能性もあります。
【コストを抑えるための考え方】
しかし、このコストは単なる出費ではなく、安定した取引環境を維持し、機会損失や予期せぬリスクを防ぐための「必要経費」または「保険料」と捉えることもできます。例えば、月額2,000円のVPSを利用している場合、VPSを使わなかったことで発生するたった一度の大きなスリッページや、EA停止による利益獲得機会の損失を防ぐことができれば、そのコストは十分に回収できる計算になります。
また、多くのVPSサービスでは、月払いよりも年払いや複数年契約を選ぶことで、月あたりの料金が割引されるプランが用意されています。長期的に自動売買を続ける意思があるならば、こうした長期契約を活用してコストを抑えるのも一つの方法です。
まずは自身の取引規模や運用資金に見合った、無理のない価格帯のプランから始め、利益が安定してきたら、必要に応じてスペックの高いプランにアップグレードしていくのが賢明なアプローチと言えるでしょう。
② サーバーに関する最低限の知識が必要
VPSは「仮想専用サーバー」という名前の通り、本質的にはサーバーです。そのため、利用を開始するにあたって、サーバーに関する最低限の知識が求められる場面があります。
具体的には、以下のような作業が必要になります。
- リモートデスクトップ接続:契約後に発行されるIPアドレス、ユーザー名、パスワードを使って、手元のPCからVPSに接続する初期設定。
- ソフトウェアのインストール:VPSに接続した後、Webブラウザを開いてMT4/MT5をダウンロードし、インストールする作業。
- セキュリティ設定:Windowsファイアウォールの設定や、パスワードの定期的な変更など、基本的なセキュリティ対策。
- トラブルシューティング:何らかの原因でVPSの動作が重くなったり、接続できなくなったりした際に、原因を切り分けて対処する能力。
最近では、「お名前.com デスクトップクラウド」のように、最初からMT4がインストールされていたり、FXでの利用に特化した分かりやすいマニュアルが用意されていたりと、初心者向けの配慮がなされたサービスも増えています。しかし、それでも基本的なPC操作や、OS(Windows Server)の画面構成に慣れていないと、最初は戸惑うかもしれません。
特に、Linuxベースの安価なVPSを契約して、Wineなどのエミュレーターを使って無理やりMT4を動かそうとすると、高度な専門知識が必要となり、トラブルも発生しやすくなるため、初心者には全くおすすめできません。
【知識不足を補うには】
このデメリットを克服するためには、サポート体制が充実しているVPSサービスを選ぶことが非常に重要です。電話やメール、チャットで、日本語による丁寧なサポートを受けられるサービスであれば、初期設定でつまずいた時や、万が一のトラブルが発生した時でも安心です。
また、インターネット上には、特定のVPSサービスに関する設定方法や使い方を解説したブログ記事や動画も豊富に存在します。事前にそうした情報を調べておくことで、スムーズに利用を開始できるでしょう。
結論として、VPSの利用には確かに多少の学習コストがかかります。しかし、それはFXの自動売買という、いわば「ITを活用した投資」を行う上での基礎知識とも言えます。一度基本的な操作を覚えてしまえば、その後の運用は格段に楽になります。デメリットを恐れすぎず、新しいスキルを身につける良い機会と捉えて挑戦してみる価値は十分にあります。
FX向けVPSの選び方7つのポイント
数あるVPSサービスの中から、自分のFX取引スタイルに最適なものを選ぶためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。料金の安さだけで選んでしまうと、「動作が遅くて使い物にならない」「肝心な時にサーバーが落ちる」といった失敗に繋がりかねません。ここでは、後悔しないためのVPS選びのポイントを7つに絞って詳しく解説します。
① OSはWindows Serverを選ぶ
FXの自動売買で最も広く使われている取引プラットフォームであるMT4(MetaTrader 4)およびMT5(MetaTrader 5)は、もともとWindows OS上で動作することを前提に開発されたアプリケーションです。
そのため、VPSを選ぶ際には、OSとして「Windows Server」が搭載されているプランを選択することが、ほぼ必須の条件となります。Windows Serverは、私たちが普段使っているパソコンのWindows 10や11と操作感が似ており、デスクトップ画面から直感的に操作できるため、初心者でも比較的扱いやすいのが特徴です。
VPSサービスの中には、コストを抑えるためにOSとしてLinux(CentOSやUbuntuなど)を採用しているプランも多くあります。しかし、Linux上でMT4/MT5を動かすには、「Wine」という互換レイヤー(エミュレーター)を導入する必要があり、これには専門的な知識が求められます。さらに、Wineを介しての動作は不安定になりやすく、EAが正常に機能しなかったり、予期せぬエラーで停止したりするリスクが格段に高まります。
安定した自動売買環境を構築するという本来の目的を考えれば、余計なトラブルを避けるためにも、必ずOSがWindows Serverのプランを選びましょう。 多くのFX向けVPSサービスでは、Windows Serverがプリインストールされたプランが標準で用意されています。
② サーバーのスペックを確認する
VPSの性能、つまり快適さは、サーバーのスペックによって決まります。特に重要なのが「CPU」と「メモリ」です。これらは人間でいうところの「頭脳」と「作業机の広さ」に例えられます。
CPU
CPU(Central Processing Unit)は、サーバーの処理能力を司る中核部分です。CPUの性能は「コア数」で示されることが多く、コア数が多いほど、同時に複数の処理を並行して行う能力(マルチタスク性能)が高くなります。
- 稼働させるMT4/MT5の数:1つのMT4/MT5を動かすだけでも、CPUリソースは常に消費されます。複数のFX口座で同時にEAを稼働させたい場合は、それなりのコア数が必要になります。
- EAのロジックの複雑さ:複雑な計算や多くのテクニカル指標をリアルタイムで処理するEAは、CPUに高い負荷をかけます。
- バックテストの頻度と期間:過去の長期データを用いた詳細なバックテストは、CPUパワーを最も要求する作業の一つです。
【スペックの目安】
- 初心者向け(MT4を1〜2個):2〜3コアあれば十分快適に動作します。
- 中級者向け(MT4を3〜5個、複数のEA):4コア以上を推奨します。
- 上級者向け(多数のMT4/MT5、高頻度のバックテスト):6〜8コア以上あると、ストレスなく作業できます。
メモリ
メモリは、アプリケーションが動作するために必要なデータを一時的に記憶しておくための作業スペースです。メモリ容量が不足すると、PCの動作が極端に遅くなったり、アプリケーションが強制終了したりします。
- Windows Server OS自体が消費するメモリ:Windows Server OSは、起動しているだけで一定量のメモリ(約1GB〜)を消費します。
- MT4/MT5が消費するメモリ:MT4/MT5自体もメモリを消費します。特に、表示するチャートの数、使用するインジケーターやEAの数に応じて、必要なメモリ容量は増加します。
【スペックの目安】
- 初心者向け(MT4を1〜2個):最低でも2GB。できれば4GBあると安心です。
- 中級者向け(MT4を3〜5個):4GB〜8GBを推奨します。
- 上級者向け(多数のMT4/MT5):8GB以上のメモリを検討しましょう。
契約後にスペックが足りないと感じた場合、多くのVPSサービスでは上位プランへの変更が可能です。まずは最低限のスペックから始めて、必要に応じてアップグレードしていくという方法も有効です。
③ ストレージは高速なSSDを選ぶ
ストレージは、OSやアプリケーション、EAのファイルなどを永続的に保存しておくための記憶領域です。ストレージには大きく分けて「HDD(ハードディスクドライブ)」と「SSD(ソリッドステートドライブ)」の2種類があります。
FX向けのVPSを選ぶ際は、迷わず「SSD」を搭載したプランを選びましょう。 SSDはHDDに比べてデータの読み書き速度が圧倒的に速いため、以下のような場面でその差が体感できます。
- OS(Windows Server)の起動時間
- MT4/MT5の起動時間
- バックテスト実行時のデータ読み込み速度
- VPS全体のレスポンス(リモート操作の快適さ)
最近のVPSサービスではSSDが標準となりつつあり、HDDを採用しているプランは少なくなりました。もし選択肢がある場合でも、価格差はそれほど大きくないため、快適な取引環境を得るための投資として、必ずSSDを選択することをおすすめします。
さらに高速な「NVMe(NVM Express) SSD」を採用しているサービスもあり、これは従来のSSDよりもさらに高速です。バックテストの速度などを極限まで追求したい上級者の方は、NVMe対応のプランを検討するのも良いでしょう。ストレージ容量については、MT4/MT5を数個インストールする程度であれば、50GB〜100GBもあれば十分です。
④ サーバーの設置場所(ロケーション)を確認する
これは特にスキャルピング型のEAを利用するトレーダーにとって非常に重要なポイントです。前述の通り、注文から約定までの速度は、VPSとFX業者の取引サーバーとの間の「レイテンシー(通信遅延)」に大きく左右されます。
このレイテンシーを最小限に抑える最も効果的な方法は、利用するFX業者の取引サーバーが設置されているのと同じ国、理想を言えば同じデータセンター内にあるVPSを契約することです。
- 国内FX業者を利用する場合:ほとんどの国内FX業者は、東京のデータセンターにサーバーを設置しています。そのため、VPSも「東京リージョン(拠点)」 を選択するのが最適です。
- 海外FX業者を利用する場合:利用する海外FX業者のサーバー所在地を確認し、それに合わせてVPSのロケーションを選びます。例えば、サーバーがニューヨークにあれば「ニューヨークリージョン」、ロンドンにあれば「ロンドンリージョン」のVPSを選ぶことで、通信速度が劇的に向上し、スリッページを抑制できます。
多くのVPSサービスでは、契約時にサーバーの設置場所(ロケーション)を選択できます。自分がメインで利用するFX業者に合わせて、最適なロケーションを選ぶようにしましょう。
⑤ サポート体制の充実度で選ぶ
特にVPSの利用が初めての方にとって、サポート体制の充実は安心材料になります。サーバーの設定で不明な点があったり、万が一トラブルが発生したりした際に、迅速かつ丁寧に対応してくれるかどうかは非常に重要です。
以下の点をチェックしましょう。
- サポート対応時間:24時間365日対応か、平日のみか。FX市場は24時間動いているため、深夜や早朝にトラブルが発生する可能性も考慮すると、24時間対応が理想です。
- サポートチャネル:電話、メール、チャットなど、どのような問い合わせ方法があるか。緊急時にすぐに連絡を取りたい場合は、電話サポートがあると心強いです。
- サポートの質:日本語にしっかり対応しているか。技術的な内容を正確に伝えるためにも、ネイティブレベルの日本語サポートは必須です。
料金が安い海外のVPSサービスの中には、サポートが英語のみであったり、返信に時間がかかったりするところもあります。価格だけでなく、こうしたサポート体制も加味して、総合的に判断することが大切です。
⑥ 料金プランと契約期間を比較する
VPSの料金は、前述のスペック(CPU、メモリ、ストレージ)によって決まります。まずは自分の用途に必要なスペックを明確にし、その上で複数のVPSサービスの料金を比較検討しましょう。
比較する際には、以下の点に注意してください。
- 初期費用:月額料金とは別に、契約時に初期費用がかかる場合があります。
- 最低契約期間:サービスによっては「3ヶ月以上」などの最低契約期間が設けられている場合があります。
- 支払い方法:クレジットカード、銀行振込、コンビニ払いなど、どのような支払い方法に対応しているか。
- 長期契約割引:多くのサービスでは、1ヶ月ごとの「月払い」よりも、12ヶ月や24ヶ月分をまとめて支払う「年払い」の方が、1ヶ月あたりの料金が割安になります。長期的に利用する予定であれば、年払いを選択すると総コストを抑えられます。
⑦ 無料お試し期間の有無を確認する
多くのVPSサービスでは、10日間〜1ヶ月程度の無料お試し期間が設けられています。これは、本格的に契約する前に、実際の使用感を確かめるための絶好の機会です。
無料お試し期間中に、以下のような点を必ずチェックしましょう。
- リモートデスクトップ接続の快適さ:操作に対するレスポンスはスムーズか、画面の描画に遅延はないか。
- EAの動作安定性:実際にMT4/MT5とEAをインストールし、数日間デモ口座などで稼働させてみて、フリーズや意図しない停止が起きないか確認する。
- バックテストの速度:普段行っているバックテストを実行してみて、どのくらいの時間がかかるか体感する。
- サポートの対応:試しに簡単な質問をしてみて、返信の速さや対応の丁寧さを確認する。
スペック表だけでは分からない実際のパフォーマンスや使い勝手を、自分の目で確かめてから契約することで、「思っていたのと違った」という失敗を防ぐことができます。
FXにおすすめのVPS比較12選
ここからは、上記の選び方のポイントを踏まえ、FXトレーダーから人気が高く、実績のあるVPSサービスを12個厳選してご紹介します。各サービスの特徴、スペック、料金などを比較し、あなたに最適なVPSを見つける手助けをします。
(※料金やスペックは2024年5月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。)
サービス名 | 運営会社 | 最安プラン料金(月額換算) | 特徴 | OS | ロケーション | お試し期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
お名前.com デスクトップクラウド | GMOインターネットグループ株式会社 | 1,496円~ | FX特化、MT4プリインストール、初心者向け | Windows | 東京/大阪 | なし(20時間まで返金保証) |
ConoHa for Windows Server | GMOインターネットグループ株式会社 | 978円~ | 時間課金制、高コスパ、アプリテンプレート豊富 | Windows | 東京/米国 | なし(クーポン利用可) |
ABLENET(エイブルネット) | 株式会社ケイ・オプティコム | 1,848円~ | 20年以上の老舗、安定性・稼働率に定評 | Windows/Linux | 東京/大阪 | 10日間 |
Xserver VPS | エックスサーバー株式会社 | 830円~ | 高速NVMe、国内最速級、アプリイメージ利用可 | Windows/Linux | 東京 | なし |
シン・VPS | エックスサーバー株式会社 | 830円~ | Xserver VPSの兄弟サービス、KUSANAGI対応 | Windows/Linux | 東京 | なし |
さくらのVPS | さくらインターネット株式会社 | 643円~ | 老舗、高い信頼性、幅広いプラン | Windows/Linux | 東京/大阪/石狩 | 2週間 |
カゴヤ・ジャパン | カゴヤ・ジャパン株式会社 | 550円~ | 柔軟なプラン、日額課金あり、老舗 | Windows/Linux | 東京/大阪 | 2週間 |
WebARENA Indigo | 株式会社NTT PCコミュニケーションズ | 385円~ | 低価格、時間課金、NTTグループの信頼性 | Windows/Linux | 東京 | なし(クーポン利用可) |
GingaMinga(ギガミンガ) | 有限会社GingaMinga | 990円~ | FX特化、シンプルで分かりやすいプラン | Windows | 東京 | 7日間 |
VULTR(ヴァルチャー) | The Constant Company, LLC | 約$6/月~ | 世界32拠点、海外FX向け、高性能 | Windows/Linux | 世界中 | なし(クレジット提供あり) |
Beeks Financial Cloud(ビークス) | Beeks Financial Cloud Group PLC | 約$27/月~ | 金融特化、超低遅延、主要取引所直結 | Windows | 世界中 | 7日間(一部プラン) |
SPPDレンタルサーバー | 株式会社SPPD | 990円~ | 低価格、長期契約で割引大、シンプル | Windows | 非公開 | 2週間 |
① お名前.com デスクトップクラウド
GMOインターネットグループが運営する、FX自動売買に特化したプランで非常に人気の高いVPSサービスです。特に初心者にとっては、これ以上ないほど分かりやすく、始めやすい環境が整っています。
- 特徴:FX専用プランでは、最初からMT4がインストールされており、複雑な初期設定が不要です。コントロールパネルもシンプルで、サーバーの起動や再起動が簡単に行えます。20年以上のサーバー運用実績を持つGMOグループの信頼性も魅力です。
- おすすめプラン:メモリ1.5GBプラン(月額1,496円〜)から8GBプランまで幅広く、EAの数に応じて選べます。まずは一番安いプランから試してみるのが良いでしょう。
- 注意点:他の汎用VPSと比較すると、同スペックでの価格はやや高めに設定されています。しかし、その分手厚いサポートやFXに特化した利便性が含まれていると考えることができます。
参照:お名前.com デスクトップクラウド 公式サイト
② ConoHa for Windows Server
同じくGMOインターネットグループが運営する高コストパフォーマンスなVPSです。最低利用期間がなく、使った分だけ支払う「時間課金制」(上限あり)が最大の特徴で、短期的な利用やテストにも最適です。
- 特徴:管理画面が非常に直感的で分かりやすく、サーバーの追加やスペック変更も数クリックで完了します。長期利用で割引になる「VPS割引きっぷ」も用意されており、柔軟な使い方が可能です。
- おすすめプラン:1GBプラン(月額978円)から用意されており、低コストで始めたい方にぴったりです。必要に応じていつでも上位プランにアップグレードできます。
- 注意点:FX専用というわけではないため、MT4のインストールなどは自分で行う必要があります。しかし、その手順は非常に簡単です。
参照:ConoHa for Windows Server 公式サイト
③ ABLENET(エイブルネット)
20年以上の長い歴史を持つ老舗のVPSサービスで、その安定性と高いサーバー稼働率には定評があります。長期間、安心してEAを稼働させたいトレーダーから根強い支持を受けています。
- 特徴:全プランで高速なSSDを搭載。ネットワークも高速で、安定した通信環境が期待できます。仮想化技術には、他のユーザーの影響を受けにくい「KVM」を採用しています。
- おすすめプラン:Win1プラン(2コア/2GBメモリ)が月額1,848円(年払い時)から利用でき、スペックと価格のバランスが取れています。10日間の無料お試し期間があるのも嬉しいポイントです。
- 注意点:管理画面がやや古風なデザインで、最新のサービスに比べると直感性に欠けると感じるかもしれません。
参照:ABLENET 公式サイト
④ Xserver VPS
国内レンタルサーバー最大手の「エックスサーバー」が提供するVPSサービス。圧倒的な処理速度を誇るNVMe SSDと高性能CPUを採用し、「国内最速」を謳っています。
- 特徴:とにかくサーバーの性能にこだわりたい方におすすめです。バックテストの時間を大幅に短縮したり、多数のEAを軽快に動作させたりすることが可能です。Windows Serverのテンプレートイメージが用意されており、簡単にOSをインストールできます。
- おすすめプラン:2GBプラン(4コア/2GBメモリ)が月額830円(36ヶ月契約時)+Windows Serverライセンス料という構成です。トータルコストは確認が必要ですが、性能を考えれば非常に高いコストパフォーマンスです。
- 注意点:高性能な分、設定項目も多く、ある程度サーバー知識がある中〜上級者向けのサービスと言えます。
参照:Xserver VPS 公式サイト
⑤ シン・VPS
「Xserver VPS」の兄弟ブランドにあたるサービスで、こちらもエックスサーバー株式会社が運営しています。基本的な性能や料金体系はXserver VPSとほぼ同じですが、Webサイト高速化技術「KUSANAGI」の専用イメージが用意されているなど、より開発者向けの一面もあります。
- 特徴:Xserver VPSと同様、NVMe SSDと高性能CPUによるハイスペック環境が魅力です。FX用途としては、Xserver VPSとの大きな差はありませんが、キャンペーン内容などが異なる場合があるため、両方を比較検討すると良いでしょう。
- おすすめプラン:こちらも2GBプラン(4コア/2GBメモリ)が人気です。
- 注意点:Xserver VPSと同様、初心者には少しハードルが高い可能性があります。
参照:シン・VPS 公式サイト
⑥ さくらのVPS
日本のインターネット黎明期からサービスを提供している、さくらインターネット株式会社のVPSです。長年の運用実績に裏打ちされた高い信頼性と安定性が最大の強みです。
- 特徴:官公庁や大企業も利用する信頼性の高さが魅力。プランのバリエーションが非常に豊富で、小規模な構成から大規模な構成まで、ニーズに合わせて細かく選べます。北海道の石狩データセンターなど、複数のロケーションを選べるのも特徴です。
- おすすめプラン:Windows Serverプランは2GBプラン(月額2,420円〜)から用意されています。2週間の無料お試し期間で、じっくり性能を試せます。
- 注意点:最新のVPSサービスと比較すると、同スペックでの価格はやや割高に感じられるかもしれません。信頼性を重視する方向けです。
参照:さくらのVPS 公式サイト
⑦ カゴヤ・ジャパン
こちらも25年以上の歴史を持つ老舗のホスティング事業者です。日額課金に対応しているなど、非常に柔軟な料金体系が特徴で、無駄なコストを抑えたいユーザーに適しています。
- 特徴:日単位での契約や、スペックのスケールアップ・ダウンが自由に行えるため、需要の変動に柔軟に対応できます。サポート体制も手厚く、初心者でも安心して利用できます。
- おすすめプラン:Windows Serverプランは日額55円(月額上限1,650円)のプランからあり、非常に始めやすい価格設定です。
- 注意点:プラン構成が非常に細かいため、自分に合ったプランを選ぶのに少し迷うかもしれません。
参照:カゴヤ・ジャパン クラウド/VPS 公式サイト
⑧ WebARENA Indigo
NTTグループのNTT PCコミュニケーションズが提供するVPSサービスです。圧倒的な低価格と、NTTグループならではの信頼性が両立しているのが大きな魅力です。
- 特徴:1GBプランが月額385円(Linuxの場合)からと、業界最安クラスの料金設定です。Windows Serverプランも低価格で提供されています。ConoHaと同様に時間課金制を採用しており、手軽に試せます。
- おすすめプラン:Windows Serverプランは2GBプラン(月額1,265円〜)から利用可能です。コストを最優先に考えるなら、有力な選択肢となります。
- 注意点:サポートはメールのみで、電話サポートはありません。ある程度自力で解決できるスキルが求められます。
参照:WebARENA Indigo 公式サイト
⑨ GingaMinga(ギガミンガ)
FX自動売買での利用に特化することを前面に打ち出しているVPSサービスです。プラン構成がシンプルで分かりやすく、FX初心者でも迷うことなく始められるように設計されています。
- 特徴:プランはメモリ容量(2GB、4GB、8GB)で分かれているだけで、非常にシンプルです。全プランでWindows Server 2022が利用可能。7日間の無料お試し期間があります。
- おすすめプラン:まずは「VPS-Sプラン」(2GBメモリ、月額990円)から試してみるのが良いでしょう。
- 注意点:運営会社の規模は大手と比べると小さいため、サポート体制や実績を重視する方は大手サービスも比較検討すると良いでしょう。
参照:GingaMinga 公式サイト
⑩ VULTR(ヴァルチャー)
海外FX業者を利用しているトレーダーに絶大な人気を誇る、海外のVPSサービスです。世界中にデータセンターを持っており、取引サーバーの近くにVPSを設置できます。
- 特徴:ニューヨーク、ロンドン、フランクフルト、シンガポール、東京など、世界32箇所にデータセンターがあります。サーバーの性能も非常に高く、時間課金制で料金もリーズナブルです。
- おすすめプラン:利用するFX業者のサーバーロケーションに合わせてリージョンを選択します。料金はスペックとロケーションにより変動します。
- 注意点:公式サイトや管理画面、サポートは基本的に英語です。英語に抵抗がなく、海外FXでの約定力を追求したい上級者向けの選択肢です。
参照:VULTR 公式サイト
⑪ Beeks Financial Cloud(ビークス)
VULTRよりもさらに金融取引に特化した、プロ向けのVPSサービスです。世界中の主要な取引所(Equinixなど)のデータセンター内にサーバーを設置しており、物理的に究極の低遅延環境を実現します。
- 特徴:FX業者との超低遅延接続(Cross-Connect)が可能なプランもあり、レイテンシーは1ミリ秒以下になることも。HFT(高頻度取引)を行う機関投資家なども利用するレベルのサービスです。
- おすすめプラン:ブロンズプラン(約$27/月)からありますが、低遅延接続を利用するには上位プランが必要です。
- 注意点:料金は非常に高額で、設定も専門知識を要します。コンマミリ秒の遅延を気にするレベルの、プロ・上級者向けのサービスです。
参照:Beeks Financial Cloud 公式サイト
⑫ SPPDレンタルサーバー
低価格な共用サーバーで知られるSPPDが提供するWindows VPSサービスです。シンプルなサービス内容と、長期契約による大幅な割引が特徴です。
- 特徴:余計な機能を省き、低価格を実現しています。2年契約にすると月額料金が大幅に安くなるため、長期間利用することが決まっている方にはコストメリットが大きいです。
- おすすめプラン:W-2Gプラン(2GBメモリ)は2年契約で月額990円になります。
- 注意点:サーバーの設置場所が非公開であるなど、情報が少ない部分もあります。2週間の無料お試し期間を活用して、実際のパフォーマンスをしっかり確認することをおすすめします。
参照:SPPDレンタルサーバー 公式サイト
【目的別】あなたに合ったFX向けVPSの選び方
12もの選択肢があると、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。そこで、あなたの目的やレベルに合わせて、どのような基準でVPSを選べば良いかを具体的にガイドします。
コストを抑えたい初心者向け
FXの自動売買を始めたばかりで、まずはVPSがどのようなものか試してみたい、できるだけ固定費は抑えたいという方には、以下の特徴を持つVPSがおすすめです。
- 月額料金が安い(1,000円台前半まで)
- 最低限のスペック(メモリ2GB程度)がある
- 無料お試し期間がある
- 操作が分かりやすく、サポートが手厚い
【具体的なおすすめサービス】
- ConoHa for Windows Server: 時間課金制で無駄がなく、月額978円から始められる手軽さが魅力。管理画面も直感的で初心者でも扱いやすいです。
- お名前.com デスクトップクラウド: 初期設定不要でMT4が使えるFX専用プランは、PC操作に自信がない方でも安心。月額1,496円からと少し高めですが、その分の価値はあります。
- GingaMinga: FX特化でプランがシンプル。月額990円からと低価格で、7日間の無料お試しも可能です。
選び方のポイント:
まずは最も安いプランから契約し、無料お試し期間をフルに活用しましょう。MT4を1つだけ動かすのであれば、メモリ1.5GB〜2GBのプランで十分な場合が多いです。実際に使ってみて、もし動作が重いと感じたら、その時に初めて上位プランへのアップグレードを検討すれば問題ありません。最初から高スペックなプランを選ぶ必要はありません。
安定性とスペックを重視する中〜上級者向け
複数のEAを同時に稼働させたい、あるいは複雑なロジックのEAを使っている、バックテストを高速で何度も行いたい、という中〜上級者の方は、コストよりもサーバーの性能と安定性を重視すべきです。
- CPUコア数が多い(4コア以上)
- メモリ容量が大きい(4GB以上)
- ストレージが高速(NVMe SSDなど)
- 稼働率の実績が高く、信頼できる事業者
【具体的なおすすめサービス】
- Xserver VPS / シン・VPS: 国内最速級のNVMe SSDと高性能CPUが魅力。多数のEAを稼働させても、ストレスのない快適な環境が手に入ります。バックテストの時間短縮にも絶大な効果を発揮します。
- ABLENET: 長年の実績に裏打ちされた安定性は、大切な資産を預ける上で大きな安心材料になります。スペックも十分で、バランスの取れた選択肢です。
- さくらのVPS: 圧倒的な信頼性を求めるならこのサービス。ミッションクリティカルなシステムにも使われるほどの安定性で、サーバーが落ちる心配を限りなくゼロに近づけたい方向けです。
選び方のポイント:
自分が同時に稼働させたいEAの数や、バックテストの頻度を考慮してスペックを決定します。例えば、MT4を3〜5個、EAを5〜10個程度動かすなら、CPU 4コア/メモリ 4GBは欲しいところです。コストは月額2,000円〜5,000円程度になりますが、これはトレードのパフォーマンスを最大化するための重要な投資と捉えましょう。
海外FX業者を利用している方向け
海外FX業者を利用して、スプレッドの狭さやハイレバレッジといったメリットを活かしている方にとって、最も重要なのは「約定力」です。そのためには、レイテンシーの最小化が至上命題となります。
- 海外にデータセンター(ロケーション)がある
- 利用するFX業者のサーバー所在地に近いロケーションを選べる
- ネットワーク性能が高い
【具体的なおすすめサービス】
- VULTR: 世界32拠点という圧倒的なロケーション数が最大の強み。利用している海外FX業者のサーバーがニューヨークにあればニューヨークリージョンを、ロンドンにあればロンドンリージョンを選ぶことで、劇的なレイテンシーの改善が期待できます。
- Beeks Financial Cloud: 金融取引に特化した究極の選択肢。Equinixデータセンター内のサーバーを利用し、主要なFX業者と物理的に直結することで、コンマミリ秒単位での遅延を削りたいプロトレーダー向けのサービスです。
- ConoHa for Windows Server: アメリカ(ニュージャージー)にもデータセンターがあるため、アメリカ東海岸にサーバーを置くFX業者を利用している場合には、国内サービスながら有力な選択肢となります。
選び方のポイント:
まずは、自分が利用している海外FX業者の公式サイトやサポートで、取引サーバーの正確な所在地を確認してください。その上で、その場所に最も近いロケーションを提供しているVPSサービスを選びます。英語の管理画面やサポートに抵抗がなければVULTRが第一候補となりますが、日本語環境にこだわりたい場合はConoHaなども検討の価値があります。
FX向けVPSの始め方・使い方4ステップ
VPSの契約から、実際にEAを稼働させるまでの流れは、どのサービスを選んでも基本的には同じです。ここでは、初心者の方でも迷わないように、具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。
① STEP1:VPSを契約する
まずは、利用したいVPSサービスの公式サイトにアクセスし、申し込み手続きを行います。
- プランの選択: 自分の目的に合ったプラン(OS、CPU、メモリ、ストレージなど)を選択します。FX用途の場合、OSは必ず「Windows Server」を選びましょう。
- 契約期間の選択: 月払いや年払いなど、契約期間を選択します。長期契約の方が割安になることが多いです。
- 個人情報の入力: 氏名、住所、メールアドレスなどの個人情報を入力します。
- 支払い情報の入力: クレジットカード情報や、その他希望する支払い方法の情報を入力します。
- 申し込み完了: 入力内容を確認し、申し込みを完了させます。
申し込みが完了すると、通常は数分〜数時間以内に、登録したメールアドレス宛に「設定完了のお知らせ」といった件名のメールが届きます。このメールには、VPSに接続するために必要な「IPアドレス」「ユーザー名(Administratorなど)」「初期パスワード」といった非常に重要な情報が記載されているので、大切に保管してください。
② STEP2:リモートデスクトップでVPSに接続する
次に、手元にある自分のパソコンから、契約したVPSに接続します。この接続には「リモートデスクトップ」という機能を使います。
【Windows PCの場合】
Windowsには標準で「リモートデスクトップ接続」というアプリがインストールされています。
- スタートメニューから「リモートデスクトップ接続」を検索して起動します。
- 「コンピューター」の欄に、VPS事業者から送られてきたメールに記載の「IPアドレス」 を入力し、「接続」ボタンをクリックします。
- 資格情報を要求する画面が表示されたら、「ユーザー名」と「パスワード」を入力して「OK」をクリックします。
- セキュリティ証明書に関する警告が表示されることがありますが、「はい」をクリックして接続を続行します。
成功すると、画面全体にVPSのデスクトップ画面(Windows Serverの画面)が表示されます。これで、あたかも目の前にあるもう一台のPCのように、VPSを操作できるようになります。
【Macの場合】
Macから接続する場合は、App Storeから「Microsoft Remote Desktop」という公式アプリを無料でダウンロードしてインストールする必要があります。操作方法はWindowsの場合とほぼ同じで、IPアドレス、ユーザー名、パスワードを入力して接続します。
③ STEP3:MT4・MT5をインストールする
VPSに接続できたら、次は取引プラットフォームであるMT4やMT5をインストールします。この手順は、普段自宅のPCにソフトウェアをインストールするのと全く同じです。
- VPSのデスクトップ上にあるブラウザ(Microsoft Edgeなど)を起動します。
- 利用しているFX業者の公式サイトにアクセスします。
- サイト内から、MT4またはMT5のインストーラー(.exeファイル)をダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラーをダブルクリックして実行し、画面の指示に従ってインストールを完了させます。
- インストールが完了すると、VPSのデスクトップにMT4/MT5のショートカットアイコンが作成されます。
④ STEP4:EA(自動売買ソフト)を導入・設定する
最後に、使用したいEAをMT4/MT5に導入し、自動売買を開始するための設定を行います。
- EAファイルの準備: 購入または自作したEAのファイル(.ex4または.mq4ファイル)を手元のPCに用意します。
- EAファイルの転送: 手元のPCからVPSへEAファイルを転送します。最も簡単な方法は、手元のPCでEAファイルをコピーし、リモートデスクトップ接続しているVPSのデスクトップ画面上で貼り付け(ペースト)を行うことです。
- EAファイルの配置: VPS上でMT4/MT5を起動します。メニューバーの「ファイル」→「データフォルダを開く」を選択します。開いたフォルダの中から「MQL4」→「Experts」フォルダ(MT5の場合は「MQL5」→「Experts」)を見つけ、そこに先ほど転送したEAファイルを移動させます。
- MT4/MT5の再起動: EAを認識させるため、一度MT4/MT5を再起動します。
- EAの設定: ナビゲーターウィンドウの「エキスパートアドバイザ」のツリーに、導入したEAの名前が表示されていることを確認します。そのEAを、適用したい通貨ペアのチャート上にドラッグ&ドロップします。設定画面が表示されるので、パラメーターの入力や「自動売買を許可する」のチェックなどを確認して「OK」をクリックします。
- 自動売買の開始: 最後に、MT4/MT5のツールバーにある「自動売買」ボタンをクリックして、緑色の再生マークの状態にします。
これで、EAがVPS上で24時間稼働を開始します。あとはリモートデスクトップ接続を切断しても、VPSは動き続けるので、EAも取引を継続します。
FXのVPSに関するよくある質問
最後に、FXのVPS利用に関して、多くの方が抱く疑問や不安についてQ&A形式でお答えします。
FXにVPSは必須ですか?自宅PCではだめ?
裁量トレード(自分の判断で売買するスタイル)のみを行うのであれば、VPSは必須ではありません。しかし、EA(自動売買ソフト)を使って本格的にシステムトレードを行うのであれば、VPSは「事実上必須」と言えます。
自宅PCでの稼働は、前述の通り、停電、回線切断、PCフリーズ、意図しない再起動など、取引を中断させてしまうリスクに常に晒されています。これらのリスクは、大きな利益機会の損失や、予期せぬ大損失に直結する可能性があります。月額数千円のコストでこれらのリスクを回避し、24時間安定した取引環境を確保できるVPSは、EAトレーダーにとって極めて合理的な投資です。
無料で使えるFX向けVPSはありますか?
一部の海外FX業者では、「一定額以上の口座残高」や「毎月の規定ロット数の取引」といった条件を満たすことで、VPSを無料で提供している場合があります。
これは一見魅力的に聞こえますが、注意点もあります。
- スペックが低い: 無料で提供されるVPSは、多くの場合スペックが低く、複数のEAを動かすのには向いていないことがあります。
- 自由度が低い: FX業者が指定した環境であり、自由にソフトウェアをインストールできない場合があります。
- 条件未達で有料化: 条件を満たせなくなると、有料になったりサービスが停止されたりするリスクがあります。
お試しで使ってみるのは良いかもしれませんが、本格的に自動売買を続けるのであれば、月額料金を支払ってでも、自分で自由にコントロールできる有料のVPSサービスを契約することをおすすめします。
スマホやMacからでも操作できますか?
はい、操作できます。
スマートフォン(iPhone/Android)やMacからも、専用のリモートデスクトップアプリをインストールすることで、契約したWindows ServerのVPSに接続し、操作することが可能です。
- iPhone/iPad/Mac: App Storeから「Microsoft Remote Desktop」をインストールします。
- Android: Google Play ストアから「Microsoft リモートデスクトップ」をインストールします。
これにより、外出先からでもEAの稼働状況をチェックしたり、緊急時にEAを停止したりといった管理が手軽に行えます。画面が小さいため細かい作業には向きませんが、監視や簡単な操作には十分です。
MT4とMT5の両方に対応していますか?
はい、対応しています。
この記事で紹介しているような、OSに「Windows Server」を採用しているVPSであれば、MT4とMT5の両方を問題なくインストールし、同時に稼働させることが可能です。どちらのプラットフォームをメインで使っていても、心配する必要はありません。
VPSを使えばFXで必ず勝てますか?
いいえ、必ず勝てるわけではありません。これは非常に重要な点なので、明確に否定しておきます。
VPSは、あくまでEAを24時間安定して稼働させるための「取引環境を整えるためのツール」です。取引の勝敗を決めるのは、使用するEAのロジック(取引戦略)の優位性や、その時々の相場状況、資金管理といった要因です。
どんなに高性能なVPSを使っても、優位性のないEAを使えば資金は減っていきます。逆に、優れたEAを持っていても、不安定な環境(自宅PCなど)で稼働させていては、その性能を十分に発揮できず、本来得られるはずだった利益を逃すことになります。
VPSは「勝つための必要条件」の一つではあっても、「勝つための十分条件」ではないことを、正しく理解しておく必要があります。
VPS利用で禁止されている行為はありますか?
はい、各VPSサービス事業者が定める利用規約によって、いくつかの行為が禁止されています。一般的に、以下のような行為は禁止事項に該当する場合が多いです。
- サーバーに著しい高負荷をかけ続ける行為: CPUを100%に近い状態で長時間占有するような行為(暗号資産のマイニングなど)。
- 違法なコンテンツの送受信や公開
- スパムメールの大量送信
- 他のユーザーやサーバーへの攻撃行為(DDoS攻撃など)
- P2Pファイル共有ソフトの利用
FXの自動売買でMT4/MT5を通常通り利用している限り、これらの禁止行為に抵触することはまずありません。しかし、契約前には念のため、利用するサービスの規約に目を通しておくことをおすすめします。