FX(外国為替証拠金取引)は、少額の資金から始められる資産運用として、多くの個人投資家から注目を集めています。しかし、「何から始めたらいいかわからない」「専門用語が難しそう」「リスクが怖い」といった不安を感じる方も少なくないでしょう。
この記事では、そんなFX初心者のために、FXの基本的な仕組みから具体的な始め方、失敗しないための注意点までを網羅的に解説します。専門用語も一つひとつ丁寧に解説するので、知識がまったくない方でも安心して読み進められます。
この記事を読めば、FXを始めるための準備がすべて整い、自信を持って第一歩を踏み出せるようになります。FXに興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそもFXとは?
FXの世界へようこそ。ここでは、まずFXの基本中の基本である「仕組み」と「利益の出し方」について、誰にでも理解できるよう分かりやすく解説します。このセクションを読み終える頃には、FXがどのような取引なのか、その全体像をしっかりと掴むことができるでしょう。
FXの仕組みをわかりやすく解説
FXとは、「Foreign Exchange」の略で、日本語では「外国為替証拠金取引」といいます。これは、異なる2つの国の通貨を売買(交換)し、その際に生じる価格の差額によって利益を狙う取引のことです。
例えば、海外旅行に行く際に日本円を米ドルに両替する場面を想像してみてください。銀行の電光掲示板に「1ドル = 150円」と表示されていれば、150円で1ドルを手に入れることができます。もし後日、「1ドル = 155円」になったとしたら、1ドルを売れば155円が手に入り、5円の利益が出ます。これがFXの最も基本的な原理です。
FXが銀行での外貨両替と大きく異なる点は以下の3つです。
- 証拠金取引: FXでは、取引したい金額の全額を用意する必要はありません。「証拠金」と呼ばれる担保金をFX会社に預けることで、その何倍もの金額の取引が可能になります。この仕組みを「レバレッジ」と呼び、少ない資金で大きな利益を狙えるのがFXの最大の特徴です。ただし、利益が大きくなる可能性がある一方で、損失も同様に大きくなるリスクがあることを理解しておく必要があります。
- 差金決済: FX取引では、実際に外貨を保有するわけではありません。売買によって生じた利益(または損失)の差額だけを、最終的に日本円で受け渡しする「差金決済」という方法が取られます。これにより、少額の証拠金で大きな取引が可能となり、煩雑な外貨の受け渡し手続きも不要になります。
- 24時間取引可能: 為替市場は、東京、ロンドン、ニューヨークなど世界中の市場がリレー形式で開いているため、原則として平日24時間いつでも取引が可能です。日中は仕事で忙しい会社員でも、夜間や早朝など、自分のライフスタイルに合わせて取引に参加できる点が大きな魅力です。
では、なぜ通貨の価格は常に変動しているのでしょうか。その主な要因は、各国の経済状況や金融政策の違いにあります。例えば、ある国の景気が良くなると、その国の通貨の価値が上がると期待されて買われやすくなります(通貨高)。逆に、景気が悪化したり、政治が不安定になったりすると、その国の通貨は売られやすくなります(通貨安)。
このように、世界中の経済ニュースや金融政策、政治情勢といった様々な要因が複雑に絡み合い、24時間休むことなく為替レートは変動し続けています。FXトレーダーは、これらの情報を分析し、将来の価格変動を予測して利益を追求していくのです。
FXで利益が出る2つの仕組み
FXで利益を出す方法は、大きく分けて2つあります。「為替差益」と「スワップポイント」です。初心者はまず、この2つの利益の仕組みをしっかりと理解することが重要です。
為替差益で利益を得る
為替差益は、FXにおける最も基本的な利益の出し方です。これは、通貨を「安く買って高く売る」、または「高く売って安く買い戻す」ことで得られる差額のことを指します。
- 「買い(ロング)」から入る場合
これは、今後価格が上がると予測した通貨を買う取引です。例えば、「1米ドル = 150円」のときに1万ドルを買ったとします。その後、予測通りに円安が進み、「1米ドル = 151円」になったタイミングで売れば、1ドルあたり1円の利益が出ます。1万ドルの取引だったので、1円 × 1万通貨 = 1万円の利益となります。これが「安く買って高く売る」ことで得られる為替差益です。 - 「売り(ショート)」から入る場合
FXの面白いところは、価格が下がると予測した場合でも利益を狙える点です。これを「売り」または「ショート」と呼びます。例えば、「1米ドル = 150円」のときに、今後価格が下がると予測して1万ドルを売ったとします。実際に円高が進み、「1米ドル = 149円」になったタイミングで買い戻せば、1ドルあたり1円の利益が出ます。1万ドルの取引だったので、こちらも1万円の利益となります。これが「高く売って安く買い戻す」ことで得られる為替差益です。
このように、FXは円安局面でも円高局面でも、価格の変動を予測できれば利益を出すチャンスがある、非常に柔軟な取引といえます。
スワップポイントで利益を得る
もう一つの利益の源泉が「スワップポイント」です。これは、取引する2つの通貨間の金利差によって得られる利益のことです。一般的に、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うと、その金利の差額を毎日受け取ることができます。
例えば、日本のように政策金利が非常に低い国の通貨(円)を売り、メキシコやトルコといった比較的高金利の国の通貨(ペソやリラ)を買うポジションを保有しているとします。この場合、2国間の金利差に応じたスワップポイントが、ポジションを決済するまでほぼ毎日付与されます。
ポジションの例 | 金利差 | スワップポイント |
---|---|---|
高金利通貨を買い、低金利通貨を売る | プラス | 受け取り |
低金利通貨を買い、高金利通貨を売る | マイナス | 支払い |
このスワップポイントは、日々のわずかな金額かもしれませんが、長期間ポジションを保有し続けることで、コツコツと利益を積み上げていくことができます。そのため、スワップポイントを狙った取引は、数ヶ月から数年にわたる長期的な投資スタイルを好むトレーダーに人気があります。
【スワップポイントの注意点】
- マイナススワップの存在: 逆に、高金利通貨を売って低金利通貨を買うポジションを保有すると、金利差を支払う「マイナススワップ」が発生します。意図せず長期保有してしまい、マイナススワップが膨らんでしまうケースもあるため注意が必要です。
- 為替変動リスク: スワップポイントがプラスでも、それを上回る為替差損が発生する可能性があります。例えば、スワップ目的で高金利通貨を買ったものの、その通貨の価値が大幅に下落してしまえば、トータルでは大きな損失となることもあります。スワップポイント狙いの投資であっても、為替変動のリスクは常に伴うことを忘れてはいけません。
- 変動する金利: 各国の政策金利は常に一定ではありません。金融政策の変更によって金利差が縮小したり、逆転したりすることもあり、その結果、受け取れるスワップポイントが減少またはマイナスに転じる可能性もあります。
以上のように、FXでは主に「為替差益」と「スワップポイント」という2つの方法で利益を狙います。初心者のうちは、まず為替差益を狙う短期〜中期の取引から始め、慣れてきたらスワップポイントを狙った長期投資も視野に入れる、という進め方が一般的です。
【初心者向け】FXの始め方かんたん3ステップ
FXの仕組みが理解できたら、次はいよいよ実践です。ここでは、FX取引を始めるための具体的な手順を、誰でも迷わないように3つの簡単なステップに分けて解説します。このステップ通りに進めれば、今日からでもFXの世界に足を踏み入れることができます。
① FX会社を選んで口座を開設する
FX取引を始めるには、まず専用の取引口座をFX会社で開設する必要があります。銀行口座や証券口座とは別に、FX専用の口座が必要になる点を覚えておきましょう。数多くのFX会社がありますが、どの会社を選ぶかが今後の取引のしやすさを大きく左右します。FX会社の選び方については後の章で詳しく解説しますが、まずは口座開設の一般的な流れを把握しましょう。
【FX口座開設の基本的な流れ】
- FX会社を選ぶ: 後述する「FX会社の選び方7つのポイント」を参考に、自分に合ったFX会社をいくつか比較検討します。初心者のうちは、少額から取引でき、取引ツールが使いやすいと評判の会社を選ぶのがおすすめです。
- 公式サイトから申し込み: 選んだFX会社の公式サイトにアクセスし、「口座開設」ボタンから申し込みフォームに進みます。氏名、住所、生年月日といった基本情報に加え、年収、金融資産、投資経験などを入力します。これらは法律で定められた手続きであり、正直に申告しましょう。
- 本人確認書類の提出: 次に、本人確認のための書類を提出します。「マイナンバーカード」を持っている場合は、それ1枚で済むことがほとんどです。「通知カード」や「マイナンバー記載の住民票」の場合は、加えて運転免許証やパスポートなどの顔写真付き本人確認書類が必要になります。最近では、スマートフォンで書類を撮影し、オンラインでアップロードするだけで完結する「スマホでスピード本人確認」のようなサービスが主流で、非常に手軽です。
- FX会社による審査: 提出された情報と書類をもとに、FX会社が審査を行います。審査と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、一定の年齢(通常は18歳または20歳以上)で、申告内容に虚偽がなく、安定した収入やある程度の金融資産があれば、ほとんどの場合は問題なく通過できます。審査は、投資家保護の観点から行われるものです。
- 口座開設完了・ログイン情報の受け取り: 審査に通過すると、口座開設完了の通知がメールなどで届きます。取引に必要なIDやパスワードも同時に送られてくるか、別途郵送で届きます。このIDとパスワードを使えば、いよいよFX会社の取引ツールにログインできます。
この一連の流れは、早いFX会社であれば申し込みから最短即日で完了します。事前に必要な書類を手元に準備しておくと、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。
② 取引に使う資金を入金する
無事に口座が開設できたら、次は取引に使用する資金をFX口座に入金します。入金方法はFX会社によって多少異なりますが、主に以下の2つの方法が用意されています。
- クイック入金(ダイレクト入金)
これは、提携している金融機関のインターネットバンキングを利用して、24時間いつでもリアルタイムに資金をFX口座へ反映させることができるサービスです。ほとんどのFX会社で手数料は無料となっており、非常にスピーディーで便利なため、初心者にはこのクイック入金が最もおすすめです。 - 銀行振込(通常振込)
FX会社が指定する銀行口座へ、ATMや金融機関の窓口から振り込む方法です。この場合、金融機関所定の振込手数料は自己負担となることが多く、また、入金がFX口座に反映されるまでにある程度の時間がかかります(銀行の営業時間内に限られるなど)。
クイック入金を利用するためには、あらかじめ都市銀行やネット銀行などのインターネットバンキング契約を済ませておく必要があります。まだ契約していない方は、この機会に開設しておくと良いでしょう。
入金する金額については、「いくらから始めるべきか?」と悩む方も多いですが、これには明確な正解はありません。ただし、FXで失敗しないための大原則は「失っても生活に影響が出ない余剰資金で始めること」です。後の章でも詳しく触れますが、まずは数万円程度の少額からスタートし、FX取引の感覚に慣れていくのが賢明です。
③ 通貨ペアを選んで取引を開始する
資金の入金が確認できたら、いよいよ取引の開始です。FX会社の取引ツールにログインし、取引画面を開いてみましょう。最初は多くの情報に戸惑うかもしれませんが、落ち着いて一つずつ確認していけば大丈夫です。
1. 通貨ペアを選ぶ
まず、取引する通貨の組み合わせである「通貨ペア」を選びます。FX会社は数十種類の通貨ペアを扱っていますが、初心者が最初に選ぶべき通貨ペアは、米ドル/円(USD/JPY)です。
【初心者に米ドル/円がおすすめな理由】
- 情報量が多い: 日本円と米ドルは、世界で最も取引されている通貨の一つであり、テレビのニュースや新聞、インターネットで関連情報を簡単に入手できます。
- 流動性が高い: 取引量が非常に多いため、買いたいときに買え、売りたいときに売れる「流動性」が高く、比較的安定した取引が可能です。
- 値動きが比較的穏やか: 他の通貨ペアに比べて価格の変動が穏やかな傾向にあり、初心者でも相場の流れを追いやすいです。
- スプレッドが狭い: 取引コストであるスプレッドが最も狭く設定されていることが多く、コストを抑えて取引できます。
まずは米ドル/円で取引の基本を学び、慣れてきたらユーロ/円(EUR/JPY)やポンド/円(GBP/JPY)など、他の通貨ペアにも挑戦していくと良いでしょう。
2. 注文を出す
通貨ペアを選んだら、次に注文を出します。基本的な注文の流れは以下の通りです。
- 新規注文: 新たにポジションを持つための注文です。
- 売買の選択: 価格が上がると予測するなら「買い(Ask)」、下がると予測するなら「売り(Bid)」を選択します。
- 取引数量(Lot)の入力: どれくらいの量で取引するかを決めます。FXの取引単位は「Lot(ロット)」と呼ばれ、1Lot = 10,000通貨が一般的ですが、FX会社によっては1Lot = 1,000通貨の場合もあります。初心者は最小単位(多くの場合は1,000通貨)から始めましょう。
- 注文方法の選択: すぐに約定させたい場合は「成行注文」、価格を指定して予約する場合は「指値注文」や「逆指値注文」を使います。
- 決済注文: 保有しているポジションを決済し、利益または損失を確定させるための注文です。新規注文と逆の売買(買いポジションなら売り、売りポジションなら買い)を行います。
最初は、仮想の資金で取引の練習ができる「デモトレード」を活用し、注文方法やツールの操作に十分に慣れてから、少額でのリアルな取引に移行することをおすすめします。
これだけは押さえたい!FXの必須基礎知識
FX取引をスムーズに進めるためには、いくつかの専門用語を理解しておく必要があります。ここでは、初心者が最低限押さえておくべき6つの必須基礎知識を、具体例を交えながら詳しく解説します。これらの用語を理解するだけで、FXの世界がぐっと身近に感じられるはずです。
レバレッジ
レバレッジは、「てこ」の原理を意味する言葉で、FXにおいては「少ない資金(証拠金)で、その何倍もの大きな金額の取引を可能にする仕組み」を指します。レバレッジは、FXの最大の魅力であると同時に、最も注意すべき点でもあります。
日本の金融庁に登録されている国内FX会社では、個人の場合、最大レバレッジは25倍までと法律で定められています。
【レバレッジの具体例】
例えば、自己資金が10万円あるとします。レバレッジをかけない場合(1倍)、10万円分の取引しかできません。しかし、レバレッジを25倍に設定すると、10万円 × 25倍 = 250万円分の取引が可能になります。
- メリット:
- 資金効率の向上: 少額の資金で大きな取引ができるため、資金効率が飛躍的に高まります。上記の例で、もし1%の為替変動で利益が出た場合、レバレッジ1倍なら1,000円の利益ですが、25倍なら25,000円の利益となり、同じ値動きでも大きなリターンを狙えます。
- デメリット(注意点):
- 損失も拡大する: 利益が大きくなる可能性があるということは、損失も同様に25倍に拡大するリスクがあるということです。予測が外れて1%の損失が出た場合、レバレッジ25倍では25,000円の損失となり、自己資金の4分の1を失うことになります。
初心者のうちは、いきなり最大レバレッジをかけるのではなく、まずは3倍〜5倍程度の低いレバレッジで取引を始め、リスクを管理する感覚を養うことが極めて重要です。レバレッジは自分でコントロールできるリスクですので、その使い方を間違えないようにしましょう。
ロスカット
ロスカットは、レバレッジ取引における投資家保護のためのセーフティーネットです。これは、相場が予測と反対方向に動き、含み損が一定の水準まで拡大した際に、さらなる損失の拡大を防ぐために保有しているポジションをFX会社が強制的に決済する仕組みです。
FX会社は、それぞれロスカットが執行される基準(証拠金維持率)を定めています。例えば、「証拠金維持率が50%を下回ったらロスカット」というルールがあったとします。この場合、含み損が増えて証拠金維持率が50%になった瞬間に、強制的に全てのポジションが決済されます。
- なぜロスカットは必要か?: レバレッジ取引では、相場の急変によって預けた証拠金以上の損失が発生する可能性があります。ロスカットは、そうした最悪の事態(元本以上の損失)を未然に防ぎ、投資家の資産を最低限守るための最後の砦として機能します。
- 注意点:
- ロスカットは損失を確定させるもの: ロスカットは資金を守る仕組みですが、執行された時点で大きな損失が確定することを意味します。ロスカットに遭わないように、余裕を持った資金管理をすることが大前提です。
- 元本割れのリスク: 週末の窓開けや経済指標発表時など、相場が極端に急変動した場合には、ロスカットの執行が間に合わず、預けた証拠金以上の損失(追証)が発生するリスクもゼロではありません。
ロスカットは頼もしい安全装置ですが、それに頼るような取引は避けるべきです。自ら損切りルールを設け、ロスカットが作動するずっと手前で損失をコントロールすることが、FXで生き残るための鍵となります。
証拠金
証拠金は、FX取引を行うためにFX会社に預け入れる担保金のことです。この証拠金に関連して、初心者が覚えておくべき重要な用語が3つあります。
- 必要証拠金:
ポジションを新規で建てる(保有する)ために最低限必要な証拠金のことです。計算式は以下の通りです。
必要証拠金 = 現在のレート × 取引数量 ÷ 最大レバレッジ
例えば、1ドル150円のときに、1,000通貨をレバレッジ25倍で取引する場合、必要証拠金は「150円 × 1,000通貨 ÷ 25倍 = 6,000円」となります。 - 有効証拠金:
現在の口座残高に、保有しているポジションの損益(含み損益)を加減した、実質的な口座の資産価値を示します。
有効証拠金 = 口座残高 + 含み損益
この有効証拠金が、取引を継続できるかどうかの判断基準となります。 - 証拠金維持率:
必要証拠金に対する有効証拠金の割合を示す数値で、口座の安全性を測る最も重要な指標です。
証拠金維持率 (%) = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
この証拠金維持率が、前述したロスカットの基準となります。例えば、ロスカット基準が50%のFX会社の場合、証拠金維持率が50%を下回った瞬間に強制決済が執行されます。常にこの数値を高く保つ(目安として300%以上)ことが、安定した取引の秘訣です。
スプレッド
スプレッドとは、通貨を売るときの価格(Bid/売値)と買うときの価格(Ask/買値)の差のことです。これは、FX会社に支払う実質的な取引コスト(手数料)と考えることができます。
例えば、取引画面に米ドル/円のレートが「Bid: 150.000」「Ask: 150.002」と表示されている場合、その差額である「0.002円 = 0.2銭」がスプレッドです。この状態で買いポジションを持つと、買った瞬間に0.2銭分のマイナスからスタートすることになります。利益を出すためには、このスプレッド分を上回る値動きが必要になります。
- スプレッドは狭いほど有利: スプレッドは取引のたびに発生するコストなので、この差が狭ければ狭いほど、投資家にとっては有利になります。FX会社を選ぶ際には、このスプレッドの狭さが重要な比較ポイントの一つとなります。
- 注意点:
- スプレッドは変動する: 多くのFX会社は「原則固定」のスプレッドを提示していますが、重要な経済指標の発表前後や、早朝などの取引量が少ない時間帯には、スプレッドが一時的に大きく広がる(拡大する)ことがあります。意図しないコスト増につながるため、こうした時間帯の取引には注意が必要です。
通貨ペア
通貨ペアとは、その名の通り、取引の対象となる2つの国の通貨の組み合わせです。FXでは、常に1つの通貨を売り、同時にもう1つの通貨を買うという交換取引を行います。
通貨ペアは「USD/JPY」のように、アルファベット3文字の通貨コードをスラッシュで区切って表記されます。
- USD/JPY (米ドル/円): 左側の「USD(米ドル)」を基軸通貨、右側の「JPY(日本円)」を決済通貨と呼びます。これは、「日本円を使って米ドルを売買する」という意味になります。
通貨ペアは大きく2種類に分けられます。
- メジャー通貨:
米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、日本円(JPY)、英ポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)など、世界的に取引量が多く、流動性が高い通貨のことです。これらの通貨を組み合わせたペア(例: USD/JPY, EUR/USD)は、情報が入手しやすく、スプレッドも狭いため、初心者に適しています。 - マイナー通貨(エキゾチック通貨):
メキシコペソ(MXN)、トルコリラ(TRY)、南アフリカランド(ZAR)など、メジャー通貨以外の通貨です。これらの通貨は流動性が低く、値動きが激しい(ハイリスク・ハイリターン)傾向があります。また、スプレッドも広めに設定されています。高いスワップポイントが魅力となることが多いですが、その分リスクも高いため、初心者がいきなり手を出すのは慎重になるべきです。
注文方法
FXで利益を出すためには、状況に応じて適切な注文方法を使い分けることが重要です。ここでは、初心者が必ず覚えるべき基本的な注文方法を紹介します。
注文方法 | 内容 |
---|---|
成行注文 | 現在表示されているレートで、即座に売買を成立させる注文方法。 |
指値注文 | 現在のレートよりも有利なレートを指定する予約注文。(例:「今より安くなったら買う」「今より高くなったら売る」) |
逆指値注文 | 現在のレートよりも不利なレートを指定する予約注文。(例:「損失を限定するために、今より安くなったら売る(損切り)」) |
OCO注文 | 指値注文と逆指値注文を同時に出し、一方が約定すればもう一方は自動的にキャンセルされる注文。 |
IFD注文 | 新規注文と、そのポジションの決済注文を同時に予約する方法。 |
IFO注文 | IFD注文とOCO注文を組み合わせたもの。新規注文と、決済の「利益確定(指値)」と「損失確定(逆指値)」をすべて一度に設定できる。 |
特に、IFO注文は非常に強力なツールです。例えば、「1ドル150円になったら買い、その後151円になったら利益確定、もし149.5円まで下がったら損切りする」という一連のシナリオを、一度の注文で全て設定できます。これにより、感情に左右されることなく、あらかじめ決めたルール通りの取引を機械的に実行できるため、日中忙しい会社員や、メンタル管理が苦手な初心者に特におすすめの注文方法です。
初心者でも安心!FX会社の選び方7つのポイント
FX取引を始めるにあたり、パートナーとなるFX会社選びは非常に重要です。手数料、ツールの使いやすさ、サポート体制など、会社によって特徴は様々です。ここでは、初心者がFX会社を選ぶ際にチェックすべき7つの重要なポイントを解説します。
① 少額から取引できるか
初心者がFXを始める上で最も大切なのは、リスクを抑えながら実践経験を積むことです。そのためには、少額から取引できるFX会社を選ぶことが必須条件となります。
FXの取引単位は「Lot(ロット)」で表され、多くのFX会社では「1Lot = 10,000通貨」と設定されています。しかし、初心者向けには「1,000通貨単位」での取引に対応している会社が数多く存在します。
【10,000通貨と1,000通貨の比較(米ドル/円=150円、レバレッジ25倍の場合)】
取引単位 | 必要証拠金(目安) | 1円動いた時の損益 |
---|---|---|
10,000通貨 | 約60,000円 | 10,000円 |
1,000通貨 | 約6,000円 | 1,000円 |
このように、1,000通貨単位であれば、必要な証拠金も動く損益も10分の1になります。これにより、精神的なプレッシャーが少ない状態で、リアルな相場での取引を経験できます。
さらに、一部のFX会社では「1通貨」や「100通貨」といった、さらに少額の単位から取引できるサービスも提供しています。これなら数百円程度の証拠金からでもFXを始められるため、「まずは練習から」と考えている方には最適です。口座を開設しようとしているFX会社が、最低何通貨から取引できるのかを必ず確認しましょう。
② 取引コスト(スプレッド)は狭いか
スプレッドは、FXにおける実質的な取引コストです。取引するたびに発生するため、このスプレッドは狭ければ狭いほど、トレーダーにとって有利になります。
特に、一日に何度も取引を繰り返す「スキャルピング」や「デイトレード」といった短期売買スタイルを考えている場合、スプレッドの差が利益に直結します。たとえ0.1銭の差でも、取引回数が多くなれば、そのコスト差は無視できない金額になります。
FX会社を選ぶ際は、主要な通貨ペアである「米ドル/円」「ユーロ/円」「ポンド/円」などのスプレッドを比較してみましょう。各社の公式サイトには、スプレッドの一覧が掲載されています。
ただし、注意点として「原則固定」と表示されていても、早朝の市場が薄い時間帯や、米国の雇用統計といった重要な経済指標の発表時には、スプレッドが一時的に大きく開く(拡大する)ことがあります。安定して狭いスプレッドを提供しているかどうかも、FX会社の信頼性を測る上で重要なポイントです。
③ スワップポイントは高いか
スワップポイントは、2国間の金利差によって得られる利益で、特に中長期的な視点でポジションを保有し、コツコツと利益を積み上げたいと考えている方にとっては重要な比較項目です。
同じ通貨ペアであっても、受け取れるスワップポイントの額はFX会社によって異なります。そのため、スワップポイント狙いの投資を検討している場合は、各社のスワップカレンダーなどを確認し、より高いスワップポイントを提供している会社を選ぶのが有利です。
特に、メキシコペソ/円やトルコリラ/円といった高金利通貨ペアのスワップポイントは、FX会社間の差が大きくなる傾向があります。
また、プラスのスワップだけでなく、ポジションを逆に持った場合に支払うことになる「マイナススワップ」の金額も同時にチェックしておくことが大切です。マイナススワップが小さい会社を選ぶことで、不利なポジションを持ってしまった際のコストを抑えることができます。
④ 取引ツールやスマホアプリは使いやすいか
取引ツールは、FXトレーダーにとって武器そのものです。PC用のリッチクライアント型ツールから、ブラウザで手軽に使えるWeb版、そして場所を選ばないスマホアプリまで、様々な種類があります。自分の取引スタイルや生活リズムに合った、直感的で使いやすいツールを提供している会社を選びましょう。
【取引ツールのチェックポイント】
- 操作性: 注文画面が見やすく、新規・決済・注文変更などの操作が直感的に行えるか。誤操作をしにくいデザインになっているかは非常に重要です。
- チャート機能: テクニカル指標の種類が豊富か、トレンドラインなどの描画ツールが使いやすいか。自分好みにカスタマイズできると、分析がはかどります。
- 動作の安定性とスピード: 注文ボタンを押してから約定するまでのスピードは速いか。重要な局面でフリーズしたり、動作が重くなったりしないかは死活問題です。
- 情報機能: 最新のニュースや経済指標カレンダーがツール内で確認できるか。情報収集から取引までがワンストップで完結すると効率的です。
ほとんどのFX会社では、口座開設をしなくても無料で利用できる「デモトレード」を提供しています。気になる会社の取引ツールを実際にいくつか試してみて、自分との相性を確かめてから本番の口座を開設するのが、失敗しないための最も確実な方法です。
⑤ サポート体制は充実しているか
FXを始めたばかりの頃は、「注文方法がわからない」「入金が反映されない」といった、予期せぬトラブルや疑問に直面することがあります。そんなときに、迅速かつ丁寧に対応してくれるサポート体制が整っていると、非常に心強いです。
【サポート体制のチェックポイント】
- 対応時間: FX市場は平日24時間動いています。電話サポートが24時間対応している会社であれば、深夜の取引中にトラブルが起きても安心です。
- 問い合わせ方法: 電話だけでなく、メールやチャットなど、複数の問い合わせ手段が用意されていると便利です。特にチャットサポートは、電話がしづらい状況でも気軽に質問できるため重宝します。
- サポートの質: 「初心者にも分かりやすい言葉で説明してくれるか」「親身に対応してくれるか」といったサポートの質も重要です。これについては、SNSや口コミサイトでの評判も一つの参考になります。
⑥ 多くの情報を提供しているか
FXで継続的に利益を上げていくためには、テクニカル分析だけでなく、世界の経済情勢を読み解くファンダメンタルズ分析も欠かせません。そのために必要となるのが「情報」です。
FX会社は、顧客向けに様々な投資情報を提供しています。
- マーケットニュース: DZHフィナンシャルリサーチやMarketWin24など、プロも利用する金融情報ベンダーからのニュースをリアルタイムで配信しています。
- アナリストレポート: 各社の専属アナリストが、今後の相場見通しや注目すべき経済指標について、日次・週次などでレポートを公開しています。
- オンラインセミナー: プロのトレーダーやアナリストが、取引手法や相場分析について解説するセミナーを無料で視聴できる会社も多くあります。
口座開設者限定で提供される質の高いレポートやセミナーが充実しているFX会社は、トレーダーの成長を力強くサポートしてくれます。情報収集の面でも、自分にとって有益なコンテンツを提供している会社を選びましょう。
⑦ 安全性や約定力は高いか
大切なお金を預けるわけですから、FX会社の安全性は絶対に無視できません。また、思い通りの取引を実現するためには、約定力の高さも重要です。
- 安全性(信託保全):
日本のFX会社は、法律により「信託保全」が義務付けられています。これは、トレーダーから預かった証拠金を、FX会社の資産とは完全に分離して信託銀行などの第三者機関で管理する仕組みです。これにより、万が一FX会社が倒産したとしても、預けた資金は全額保護されます。口座を開設する際は、信託保全がしっかりと行われていることを必ず確認してください(国内の金融庁登録業者であれば、すべて義務付けられています)。 - 約定力:
約定力とは、トレーダーが「この価格で買いたい/売りたい」と出した注文を、その通りに成立させる能力のことです。約定力が低いと、注文した価格と実際に約定した価格がズレる「スリッページ」が発生したり、そもそも注文が通らない「約定拒否」が起きたりする可能性があります。特に、相場が急変動している場面では、この約定力の差がパフォーマンスに大きく影響します。公式サイトなどで「約定率〇〇%」といった実績を公表している会社は、約定力に自信がある証拠と言えるでしょう。
【2024年最新】初心者におすすめのFX口座7選
ここでは、前述した7つの選び方のポイントを踏まえ、数あるFX会社の中から特に初心者におすすめできる7社を厳選してご紹介します。各社の特徴を比較し、自分にぴったりの口座を見つけるための参考にしてください。
※下記の情報は2024年5月時点のものです。スプレッドやキャンペーン内容は変更される可能性があるため、必ず各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。
FX会社名 | 最小取引単位 | スプレッド (米ドル/円) | 取引ツール (PC/スマホ) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
DMM FX | 10,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | DMMFX PLUS / DMMFX (アプリ) | 初心者向けツールの使いやすさに定評。LINEでのサポートも可能で安心。 |
GMOクリック証券 | 1,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | はっちゅう君FXプラス / GMOクリック FXneo | FX取引高12年連続国内第1位(※1)。高機能ツールと安定した取引環境が魅力。 |
外為どっとコム | 1,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | G.com Trader / 外貨ネクストネオ「GFX」 | 情報量が圧倒的に豊富。レポートやセミナーで学びながら取引したい初心者に最適。 |
みんなのFX | 1,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | FXトレーダー / FXトレーダーアプリ版 | 高水準のスワップポイントが人気。自動売買「みんなのシストレ」も提供。 |
LINE FX | 1,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | LINE FX Pro / LINE FX (アプリ) | LINEアプリとの連携が強み。経済指標などをLINE通知で受け取れる。 |
松井証券 FX | 1通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | FXトレーダー・プラス / 松井証券 FXアプリ | 100円からFXが始められる。リスクを極限まで抑えて練習したい人に。 |
ヒロセ通商 LION FX | 1,000通貨 | 0.2銭 (原則固定) ※例外あり | LION FX C2 / LION FX (アプリ) | 約定力の高さと豊富な通貨ペアが特徴。ユニークな食品キャンペーンも有名。 |
(※1)参照:GMOクリック証券公式サイト。Finance Magnates「2023年年間FX取引高調査報告書」において、2012年~2023年のFX取引高(売買代金/ドル換算)で12年連続国内第1位を記録。
① DMM FX
DMM FXは、シンプルな操作性と見やすい画面デザインで、初心者からの人気が非常に高いFX会社です。特に取引ツール「DMMFX PLUS」は、取引に必要な機能がバランス良くまとまっており、直感的に操作できると評判です。また、業界で初めてLINEを使った問い合わせに対応しており、電話やメールが苦手な方でも気軽に質問できる点が大きな魅力です。取引量に応じて貯まる「取引応援ポイント」は、現金に交換できるため、実質的なコスト削減にも繋がります。ただし、最小取引単位が10,000通貨なので、ある程度の資金を用意できる方向けです。
参照:DMM.com証券公式サイト
② GMOクリック証券
GMOクリック証券は、FXの取引高で12年連続国内第1位(※1)を誇る、業界のリーディングカンパニーです。その理由は、業界最狭水準のスプレッド、高い約定力、そして高機能な取引ツールにあります。特に、PCツール「はっちゅう君FXプラス」やスマホアプリ「GMOクリック FXneo」は、豊富なテクニカル指標や描画ツールを搭載し、スピーディーな注文も可能なため、初心者から上級者まで幅広い層のトレーダーに支持されています。1,000通貨単位からの取引にも対応しており、少額から本格的な取引環境を体験したい方におすすめです。
参照:GMOクリック証券公式サイト
③ 外為どっとコム
外為どっとコムは、「情報力」で他社を圧倒する老舗のFX会社です。自社で運営する情報サイト「マネ育チャンネル」では、初心者向けの基礎知識からプロのアナリストによる詳細なレポート、動画セミナーまで、質の高いコンテンツが豊富に提供されています。「FXをしっかりと勉強しながら始めたい」という学習意欲の高い初心者には、これ以上ない環境と言えるでしょう。もちろん、1,000通貨からの少額取引にも対応しており、スプレッドなどの基本スペックも業界高水準です。
参照:外為どっとコム公式サイト
④ みんなのFX
みんなのFX(トレイダーズ証券)は、業界でもトップクラスの高いスワップポイントを提供していることで知られています。特にメキシコペソ/円やトルコリラ/円といった高金利通貨ペアのスワップは魅力的で、中長期的なスワップ狙いの投資を考えている方から人気を集めています。また、簡単な設定でプロのトレーダーの取引を真似できる自動売買システム「みんなのシストレ」も提供しており、裁量取引とシステムトレードの両方に挑戦できる点もユニークです。
参照:トレイダーズ証券公式サイト
⑤ LINE FX
LINE FXは、コミュニケーションアプリ「LINE」を手掛けるLINEヤフーグループと野村ホールディングスが共同で設立したFXサービスです。最大の強みは、普段使っているLINEアプリとのシームレスな連携です。経済指標の発表前や相場の急変をLINEの通知で知らせてくれるため、取引チャンスを逃しにくくなります。取引ツールもLINEのUI/UXを意識したシンプルで分かりやすいデザインになっており、スマホでの取引をメインに考えているFX初心者に特におすすめです。
参照:LINE証券公式サイト
⑥ 松井証券 FX
老舗ネット証券である松井証券が提供するFXサービスは、なんといっても「1通貨単位」から取引できる点が最大の特徴です。米ドル/円であれば、レバレッジ25倍で約7円程度の証拠金から取引を始めることができます。これは、実質100円あればFXを体験できることを意味し、初心者がリスクを限りなくゼロに近づけて練習するには最高の環境です。「いきなり数万円を入金するのは怖い」と感じる方は、まず松井証券 FXで取引の感覚を掴んでみてはいかがでしょうか。
参照:松井証券公式サイト
⑦ ヒロセ通商 LION FX
ヒロセ通商(LION FX)は、「約定力の高さ」と「スキャルピング公認」を掲げる、アクティブなトレーダーに人気のFX会社です。自社で開発したシステムにより、高速で安定した約定を実現しています。また、50種類以上の豊富な通貨ペアを扱っており、メジャー通貨だけでなく様々な国の通貨で取引してみたいというニーズにも応えてくれます。さらに、毎月開催されるユニークな食品プレゼントキャンペーンも有名で、取引を楽しみながら続けられる工夫が満載です。
参照:ヒロセ通商公式サイト
FX初心者が失敗しないための5つの注意点
FXは大きな利益を狙える可能性がある一方で、リスクも伴います。しかし、これから紹介する5つの注意点を守ることで、大きな失敗を避け、市場から退場するリスクを大幅に減らすことができます。これらはFXで長く生き残るための鉄則です。
① まずは少額から始める
FXを始めるにあたり、最も重要な心構えは「必ず少額からスタートする」ことです。多くの初心者は、早く儲けたいという気持ちから、最初から大きな金額で取引を始めてしまいがちです。しかし、これは失敗への最短ルートです。
大きな金額で取引すると、わずかな価格変動でも損益額が大きくなります。含み損が膨らんでいくのを見ると、冷静な判断ができなくなり、「もう少し待てば戻るかもしれない」と根拠のない期待をして損切りが遅れたり、損失を取り返そうと焦って無謀な取引(リベンジトレード)に手を出したりしてしまいます。
失っても精神的なダメージが少なく、生活に全く影響のない金額で始めることで、心に余裕が生まれます。この余裕が、冷静な相場分析や適切なリスク管理につながるのです。また、少額取引は、注文ミスやツールの操作ミスといった、初心者にありがちな失敗をしても被害を最小限に抑えられるというメリットもあります。まずは1,000通貨単位の取引で、リアルマネーの緊張感を味わいながら、FXの基本を体に染み込ませていきましょう。
② 余剰資金で取引する
「少額から始める」と関連して、「絶対に余剰資金で取引する」というルールも厳守してください。余剰資金とは、当面の生活費や、将来的に使う予定のあるお金(教育資金、住宅ローンの頭金、老後資金など)を除いた、万が一失ってしまっても生活に支障をきたさないお金のことです。
生活費や必要資金をFXに投じてしまうと、「このお金を失うわけにはいかない」という強烈なプレッシャーがかかります。このプレッシャーは、正常な判断を歪めます。少しの利益が出るとすぐに確定したくなり(チキン利食い)、逆に損失が出るとそれを受け入れられずに損切りできず(塩漬け)、結果的に大きな損失を被ることになります。
FXは資産運用の一環ですが、それはあくまで余剰資金の範囲内で行うべきものです。借金をしてまでFXに投資するのは、言語道断です。精神的に追い詰められた状態では、決して良いトレードはできません。心穏やかに取引に臨むためにも、必ず余剰資金の範囲内で運用することを徹底してください。
③ 損切りルールを必ず決める
FXで成功するトレーダーと失敗するトレーダーを分ける最大の要因は、「損切り」を徹底できるかどうかにあります。損切りとは、含み損を抱えたポジションを、損失がまだ小さいうちに自らの意思で決済し、損失を確定させる行為です。
多くの初心者は、「損を確定させたくない」「もう少し待てば価格が戻るはず」という心理(プロスペクト理論)に陥り、損切りを先延ばしにしてしまいます。その結果、コツコツと積み上げてきた利益を、たった一度の大きな損失で全て吹き飛ばしてしまう「コツコツドカン」を経験し、市場から退場していくのです。
そうならないために、エントリーする(ポジションを持つ)前に、必ず損切りラインを決めておく必要があります。そして、そのルールを感情を挟まずに機械的に実行することが重要です。
【損切りルールの決め方の例】
- 値幅で決める: 「エントリー価格から〇〇pips(または〇〇円)逆行したら損切りする」
- テクニカル指標で決める: 「直近の安値(サポートライン)を割ったら損切りする」
- 資金の割合で決める: 「1回の取引の損失を、総資金の2%までと決める」
最も効果的な方法は、新規注文を出すと同時に、損切りラインに「逆指値注文」を入れておくことです。こうすることで、もし相場が急変しても、あらかじめ決めた水準で自動的に損切りが執行されるため、感情が介入する余地がなくなります。損切りは、大きな損失からあなたの資産を守り、次のトレードチャンスに備えるための必要経費だと考えましょう。
④ 感情に任せた取引はしない
FXの相場は、時に非情な動きを見せます。損失が続くと、冷静さを失い、感情的な取引に走ってしまうことがあります。これは、初心者が最も陥りやすい罠の一つです。
【代表的な感情的トレード】
- リベンジトレード: 損失を取り返そうと躍起になり、取引ルールを無視して、通常より大きなロットで何度もエントリーを繰り返す行為。損失をさらに拡大させる典型的なパターンです。
- ポジポジ病: ポジションを持っていないと落ち着かず、特に明確な根拠もないのに、常にポジションを保有しようとしてしまう状態。無駄な取引が増え、スプレッドコストがかさむだけでなく、大きな損失につながるリスクも高まります。
これらの感情的な取引を防ぐためには、「自分なりの取引ルール」を明確に作り、それを聖書のように守り抜くことが不可欠です。「こういうチャートパターンになったらエントリーする」「経済指標発表の30分前後は取引しない」など、具体的なルールを事前に定めておきましょう。そして、そのルールに合致しない相場では、何もしないで「待つ」という選択をすることも、立派な戦略です。
⑤ 取引の記録をつける
自分のトレードを客観的に見つめ直し、スキルを向上させるために非常に有効なのが「トレードノート(取引日誌)」をつけることです。
面倒に感じるかもしれませんが、自分の取引を記録し、後から振り返ることで、なぜその取引で勝てたのか、なぜ負けたのかという原因を分析することができます。これにより、自分の得意な勝ちパターンや、陥りがちな負けパターンが明確になり、同じ過ちを繰り返すのを防ぐことができます。
【トレードノートに記録する項目例】
- 取引日時
- 通貨ペア
- 売買の別(買い/売り)
- エントリー価格と決済価格
- 損益(pips/金額)
- エントリーした根拠(なぜそこで入ろうと思ったのか)
- 決済した根拠(なぜそこで決済したのか)
- 取引中の感情や反省点
最初は簡単なメモ程度でも構いません。記録を続けることで、漠然とした感覚的なトレードから、根拠に基づいた論理的なトレードへと進化させていくことができます。記録と改善のサイクルこそが、成長への最短距離です。
FX初心者に最適な勉強法3選
FXはギャンブルではなく、知識と技術を駆使するスキルゲームです。継続的に勝ち続けるためには、絶え間ない学習が欠かせません。ここでは、FX初心者が効率的にスキルアップするための、おすすめの勉強法を3つご紹介します。
① デモトレードで実践感覚を養う
デモトレードは、仮想の資金を使って、本番とほぼ同じ環境でFX取引を体験できる無料のサービスです。ほとんどのFX会社が提供しており、メールアドレスなどを登録するだけで簡単に始められます。
【デモトレードのメリット】
- ノーリスクで練習できる: 実際のお金を使わないため、どれだけ損失を出しても懐は痛みません。失敗を恐れずに、様々な注文方法やテクニカル分析を試すことができます。
- 取引ツールに慣れることができる: 本番で使う取引ツールの操作方法を、心ゆくまで練習できます。注文方法やチャートの設定など、一通りの操作をマスターしておけば、本番の取引で慌てることがなくなります。
- 自分の手法を検証できる: 「こういう条件が揃ったらエントリーする」といった自分なりの取引ルールを考え、それが実際の相場で通用するのかをリスクなしで検証できます。
ただし、デモトレードには注意点もあります。それは、実際のお金がかかっていないため、本番特有の緊張感やプレッシャーを体験できないことです。デモトレードでは冷静に損切りできても、本番のリアルマネーでは感情が邪魔をして損切りできない、というケースはよくあります。
デモトレードは、あくまで操作方法の習熟や手法の検証の場と割り切り、ある程度慣れたら、少額のリアルマネー取引と並行して活用するのが最も効果的な使い方です。
② 本やWebサイトで知識を深める
実践練習と並行して、FXに関する知識を体系的にインプットすることも非常に重要です。
- 本で学ぶ:
FXの全体像や基礎知識を体系的に学びたい場合は、本が最適です。初心者向けの入門書を1〜2冊読めば、FXの仕組み、主要な専門用語、基本的な分析方法などを網羅的に理解できます。その後、テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析、資金管理術など、自分が興味を持った分野の専門書を読んで知識を深めていくと良いでしょう。名著と呼ばれる本は、時代を超えて通用する普遍的な知恵を与えてくれます。 - Webサイトや動画で学ぶ:
WebサイトやYouTubeなどの動画コンテンツは、最新の相場情報や、他のトレーダーの具体的な分析手法を手軽に学べるというメリットがあります。FX会社が運営するオウンドメディア(例:外為どっとコムの「マネ育チャンネル」)や、信頼できる金融情報サイトは、質の高い情報源となります。ただし、インターネット上には根拠のない情報や煽るような内容も多いため、発信者の信頼性を見極めることが重要です。
インプットした知識は、必ずデモトレードや少額取引でアウトプットし、「知っている」から「できる」へと昇華させていきましょう。
③ 経済ニュースをチェックする習慣をつける
為替レートは、世界各国の経済状況や金融政策、政治情勢を映し出す鏡です。したがって、日々の経済ニュースに目を通し、世の中の大きな流れを把握する習慣をつけることは、FXトレーダーにとって必須のスキルです。これを「ファンダメンタルズ分析」と呼びます。
【特に注目すべきニュース】
- 各国の金融政策: 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が開催するFOMC(連邦公開市場委員会)や、日本銀行の金融政策決定会合は、金利に関する発表があるため最も注目度が高いイベントです。金利の変動は為替に直接的な影響を与えます。
- 重要な経済指標: 各国が発表する経済データの中でも、特に米国の雇用統計は相場を大きく動かすことで知られています。その他、GDP(国内総生産)、CPI(消費者物価指数)、小売売上高なども重要な指標です。
- 要人発言: 各国の中央銀行総裁や政府高官の発言は、将来の金融政策を暗示することがあり、市場の憶測を呼んで相場が変動するきっかけになります。
- 地政学リスク: 戦争、紛争、テロなど、特定の地域で政治的な緊張が高まると、安全資産とされる円やスイスフランが買われる傾向があります。
これらの情報は、FX会社が提供する経済指標カレンダーで簡単に確認できます。重要なイベントが予定されている時間帯は、相場が乱高下するリスクがあるため、初心者のうちは取引を避けるのが賢明です。日々のニュースを通じて、なぜ今相場が動いているのか、その背景を理解できるようになると、トレードの精度は格段に向上します。
自分に合ったFXの取引スタイルを見つけよう
FXには、ポジションを保有する時間の長さに応じて、いくつかの取引スタイルがあります。どのスタイルが優れているというわけではなく、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分の性格やライフスタイルに合った取引スタイルを見つけることが、FXを長く続けるための鍵となります。
スキャルピング(数秒〜数分)
スキャルピングは、数秒から数分という非常に短い時間で取引を完結させ、1日に何十回、何百回と売買を繰り返すことで、数pips程度のごくわずかな利益をコツコツと積み重ねていく超短期売買スタイルです。「スキャルプ」とは「頭の皮を薄く剥ぐ」という意味で、その名の通り、相場から薄い利益を剥ぎ取っていくイメージです。
- メリット:
- ポジションの保有時間が極端に短いため、経済指標の発表や要人発言といった相場の急変リスクに巻き込まれにくい。
- 1回あたりの利益は小さいですが、取引回数をこなすことで、短時間で大きな利益を狙える可能性がある(資金効率が高い)。
- その日のうちにすべての取引が完結するため、精神的な負担が少ない。
- デメリット:
- 常にチャートに張り付き、一瞬の判断で売買する必要があるため、高い集中力と瞬発力が求められる。
- 取引回数が多くなるため、スプレッド(取引コスト)が利益を圧迫しやすい。
- FX会社によっては、サーバーに負荷をかけるとしてスキャルピングを規約で禁止、または推奨していない場合があるため、事前の確認が必要。
- 向いている人: ゲーム感覚でトレードに集中できる人、日中にまとまった取引時間を確保できる人、決断が速い人。
デイトレード(数時間〜1日)
デイトレードは、その日のうちに新規で建てたポジションを、その日のうちに決済する取引スタイルです。数時間から1日程度の時間軸で、数十pips程度の値幅を狙います。多くの兼業トレーダーに人気のスタイルです。
- メリット:
- ポジションを翌日に持ち越さない(オーバーナイトしない)ため、寝ている間に相場が急変するといったリスクを避けられる。
- スキャルピングほど頻繁に売買しないため、精神的にも肉体的にも負担が少ない。
- 1日の終わりに損益が確定するため、日々の収支管理がしやすい。
- デメリット:
- ある程度まとまった値幅を狙うため、取引時間中はある程度チャートをチェックする必要がある。
- 市場が大きく動くトレンドが発生しても、その日のうちに決済するため、大きな利益を取り逃すことがある。
- 向いている人: 日中に数時間程度、取引に集中できる時間を作れる会社員や主婦。毎日コツコツと利益を積み重ねたい人。
スイングトレード(数日〜数週間)
スイングトレードは、数日から数週間、場合によっては数ヶ月にわたってポジションを保有し、比較的大きなトレンド(相場の波)に乗って、数百pipsという大きな値幅を狙う中期的な取引スタイルです。
- メリット:
- 一度ポジションを建てたら、日々の細かい値動きに一喜一憂する必要がなく、頻繁にチャートをチェックしなくてもよい。
- 日足や週足といった長い時間軸のチャートで分析するため、一度の取引で大きな利益を狙える。
- 仕事や家事で忙しい人でも、自分のペースで取り組むことができる。
- デメリット:
- ポジションを長期間保有するため、週末や寝ている間の価格変動リスクに常に晒される。
- 利益確定または損切りまでの期間が長くなるため、含み損を抱える期間も長くなる可能性があり、精神的な忍耐力が必要。
- 売買の方向によっては、マイナススワップが日々蓄積していくコストになる。
- 向いている人: 日中は仕事で忙しい会社員、大局的な視点で相場を分析するのが好きな人、じっくりと腰を据えて取引したい人。
長期トレード(数週間以上)
長期トレードは、数ヶ月から数年という非常に長い期間にわたってポジションを保有するスタイルです。日々の細かい為替差益を狙うというよりは、各国の金利差から得られるスワップポイントの蓄積と、為替レートの大きな変動による為替差益の両方を狙います。ファンダメンタルズ分析が中心となります。
- メリット:
- 一度ポジションを建てれば、あとは基本的に放置するため、取引にほとんど時間を取られない。
- 長期的な経済成長が見込める国の通貨に投資することで、安定した資産形成を目指せる。
- デメリット:
- 成果が出るまでに非常に長い時間がかかる。
- 相場の大きな変動に耐えられるよう、レバレッジを低く抑え、十分な資金を用意する必要がある。
- 各国の金融政策の変更や、政治情勢の悪化といった、長期的なリスクに晒される。
- 向いている人: 資金に余裕があり、腰を据えてじっくりと資産を育てたい人。経済の長期的な動向を予測するのが得意な人。
FXの始め方に関するよくある質問
最後に、FXを始めるにあたって初心者が抱きがちな疑問について、Q&A形式でお答えします。
FXを始めるのにいくら必要ですか?
法律で「いくら以上必要」という決まりはありませんが、FX会社が設定する「最小取引単位」によって、事実上必要な最低資金が決まります。
多くのFX会社が採用する1,000通貨単位で取引する場合、米ドル/円(1ドル150円)なら、レバレッジ25倍で約6,000円の必要証拠金でポジションを持つことができます。しかし、これは最低限の金額であり、少しでも価格が逆行すればすぐにロスカットされてしまいます。
そのため、ある程度の価格変動に耐え、安定して取引を続けるためには、最低でも5万円〜10万円程度の余裕を持った資金で始めることを強くおすすめします。もし、それも難しいと感じる場合は、松井証券のように1通貨(約7円の証拠金)から始められる会社を選び、数百円〜数千円から試してみるのが良いでしょう。
スマホだけでもFXはできますか?
結論から言うと、スマホだけでもFX取引は十分に可能です。現代のFX会社のスマホアプリは非常に高機能で、チャート分析、ニュース閲覧、入出金、そしてもちろん取引まで、PCと遜色ない機能が搭載されています。
【スマホ取引のメリット】
- 場所や時間を選ばずに、いつでもどこでも相場をチェックし、取引できる。
- 急な相場変動や経済指標の発表をプッシュ通知で受け取れる。
【スマホ取引のデメリット】
- PCに比べて画面が小さいため、複数のチャートや情報を同時に表示させて分析するには不向き。
- 詳細なテクニカル分析やライン描画は、PCの方が操作しやすい。
通勤中や外出先ではスマホで手軽にチェックし、自宅ではPCの大画面でじっくり分析するといった、PCとスマホの併用が最も理想的なスタイルと言えるでしょう。
会社員でもFXはできますか?
はい、まったく問題なくできます。実際に、FXトレーダーの多くは本業を持つ会社員です。平日24時間取引できるFXは、仕事が終わった後の夜間や、早朝の時間帯でも取引できるため、会社員のライフスタイルと非常に相性が良いです。
特に、数日に一度チャートを確認すればよいスイングトレードは、日中忙しい会社員に人気の取引スタイルです。また、あらかじめ利益確定と損切りの注文を入れておけるIFO注文を活用すれば、チャートに張り付いていなくても計画的な取引が可能です。
ただし、注意点として、会社の就業規則で副業が禁止されている場合があります。FXは一般的に「資産運用」と見なされることが多く、副業には該当しないケースがほとんどですが、念のため自社の規定を確認しておくと安心です。また、FXで得た利益(給与以外の所得)が年間で20万円を超えた場合は、雑所得として確定申告が必要になることを覚えておきましょう。
FXは危ない・やめとけと言われるのはなぜですか?
「FXは危ない」「破産する」といったイメージが根強いのは、主に以下の3つの理由が考えられます。
- レバレッジによるハイリスク: FXの最大の特徴であるレバレッジは、少ない資金で大きな利益を狙える反面、損失も大きく拡大させます。知識のないまま高いレバレッジをかけてしまうと、あっという間に資金を失うリスクがあります。
- 追証のリスク: まれに、相場が極端に急変動した場合、ロスカットが間に合わず、預けた証拠金以上の損失が発生することがあります。これを「追証(追加証拠金)」といい、借金を負うリスクがゼロではないため、「危ない」というイメージにつながっています。
- ゼロサムゲームであること: FXは、誰かが得をすれば、その裏で誰かが損をする「ゼロサムゲーム」の側面を持ちます。プロの投資家も参加する厳しい世界であり、安易な気持ちで始めても簡単に勝てるわけではないため、「やめとけ」と言われることがあります。
しかし、これらのリスクは、FXを正しく理解し、適切なリスク管理を行うことで十分にコントロール可能です。
- 低いレバレッジで運用する
- 余剰資金で取引する
- 損切りルールを徹底する
これらの大原則を守れば、FXは危険なギャンブルではなく、合理的な資産運用の一つの手段となり得ます。危ないのはFXそのものではなく、無謀な取引をしてしまうことなのです。正しい知識を身につけ、堅実な一歩を踏み出しましょう。