FXのロンドン時間とは?日本時間や値動きの特徴をプロが解説

FXのロンドン時間とは?、日本時間や値動きの特徴をプロが解説

FX(外国為替証拠金取引)市場は、平日であれば24時間いつでも取引が可能ですが、時間帯によって市場の主役となる地域が異なり、値動きの特性も大きく変わります。その中でも、世界中のトレーダーが最も注目するのが「ロンドン時間」です。ロンドン時間は、世界最大の取引量を誇り、相場に大きなトレンドを生み出す原動力となるため、この時間帯を理解し、攻略することはFXで利益を上げるための重要な鍵となります。

この記事では、FXにおけるロンドン時間の基本的な知識から、具体的な取引時間、値動きの特性、そしてこの時間帯を活かしたトレード戦略まで、網羅的に解説します。初心者の方がロンドン時間での取引に抱く疑問や不安を解消し、自信を持ってトレードに臨めるようになることを目指します。ロンドン時間のダイナミズムを味方につけ、FX取引の可能性を広げていきましょう。

FXのロンドン時間とは

FXのロンドン時間とは

FXにおける「ロンドン時間」とは、その名の通り、イギリスのロンドン市場が活発に取引を行う時間帯を指します。FX市場は特定の取引所を持たず、世界中の金融機関が相対取引を行うネットワークで成り立っていますが、便宜上、各地域の主要な金融都市が活動するコアタイムを「〇〇時間」と呼んでいます。ロンドン時間は、その中でも取引の中核を担う、極めて重要な時間帯です。

なぜロンドン時間がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。その理由は、ロンドンの歴史的・地理的な背景にあります。ロンドンは古くから世界の金融センターとしての地位を確立しており、世界中の大手銀行や機関投資家、ヘッジファンドが拠点を構えています。彼らが一斉に取引を開始することで、莫大な資金が市場に流れ込み、FX市場全体の流動性とボラティリティを飛躍的に高めるのです。

また、地理的にもロンドンはアジア市場の終盤とアメリカ市場の序盤をつなぐ、タイムゾーンの中心に位置しています。これにより、アジアからの流れを引き継ぎ、アメリカへの流れを作るという、世界の為替市場のハブ(中継地点)としての役割を担っています。

この章では、まずFX市場全体の構造を理解するために、ロンドン時間を含む「世界三大市場」のそれぞれの特徴について詳しく見ていきます。これにより、ロンドン時間が他の市場と比べてどのような特異性を持っているのかが明確になるでしょう。

FXにおける三大市場

FX市場は24時間動いていますが、その活動の中心は時間とともに移り変わります。主に、アジアの「東京市場」、ヨーロッパの「ロンドン市場」、そして北米の「ニューヨーク市場」が三大市場と呼ばれ、それぞれがリレーのように取引を引き継いでいくことで、市場は途切れることなく動き続けます。

市場 日本時間(目安) 主な通貨ペア 値動きの特徴
東京時間 8:00~17:00 USD/JPY, AUD/JPY, NZD/JPY 比較的穏やかで、一定の値幅内で動くレンジ相場になりやすい。仲値(9:55)に向けて実需の取引が活発化する。
ロンドン時間 16:00~翌2:00(夏時間) EUR/USD, GBP/USD, EUR/JPY, GBP/JPY 取引量が急増し、値動きが活発化。東京時間の流れを覆すような明確なトレンドが発生・継続しやすい。
ニューヨーク時間 21:00~翌6:00(夏時間) 全てのドルストレート通貨ペア 世界最大の経済大国である米国の市場。重要な経済指標の発表が多く、相場が急変動することも。ロンドン時間と重なる時間帯は最も活発。

これらの市場の特徴を理解することは、どの時間帯に、どの通貨ペアで、どのような戦略を取るべきかを判断する上で不可欠です。それでは、各市場の特性をもう少し詳しく見ていきましょう。

東京時間

日本時間の早朝から夕方にかけての「東京時間」は、ウェリントン(ニュージーランド)市場、シドニー(オーストラリア)市場の流れを引き継いで始まります。アジア・オセアニア地域の金融機関が取引の中心となる時間帯です。

東京時間の最大の特徴は、他の二大市場に比べて値動きが比較的穏やかであることです。大きなトレンドが発生することは少なく、一定の価格帯を行き来する「レンジ相場」を形成する傾向があります。これは、欧米の主要なプレイヤーがまだ市場に参加していないため、取引量が限定的であることが主な理由です。

この時間帯に主役となる通貨は、日本円(JPY)やオーストラリアドル(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)です。特に、日本の輸出入企業による決済が集中する午前9時55分の「仲値(なかね)」に向けては、ドル/円(USD/JPY)を中心に実需に基づいた取引が活発になり、一時的に値が動くことがあります。

東京時間は、大きな値動きを狙うのではなく、レンジ相場での逆張り(サポートラインで買い、レジスタンスラインで売る)や、コツコツと利益を積み重ねるトレードスタイルに向いていると言えるでしょう。

ロンドン時間

東京時間の落ち着いた雰囲気が一変するのが、「ロンドン時間」の始まりです。日本時間の夕方頃から、ヨーロッパ勢が本格的に市場へ参入してきます。

ロンドン時間の最大の特徴は、世界最大の取引量に裏打ちされた、ダイナミックな値動きです。国際決済銀行(BIS)の調査によれば、ロンドン市場は外国為替取引において世界一のシェアを誇っており、その取引量は東京市場やニューヨーク市場を単独で上回ります。(参照:国際決済銀行 Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2022)

この莫大な取引量によって流動性が一気に高まり、それまで膠着していた相場が大きく動き出します。東京時間で形成されたレンジ相場をブレイクし、明確なトレンドが発生・継続しやすいのが、この時間帯の典型的なパターンです。

主役となる通貨は、ユーロ(EUR)や英ポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)といった欧州通貨です。これらの通貨が絡む通貨ペア、例えばユーロ/ドル(EUR/USD)やポンド/ドル(GBP/USD)などは、特に活発な値動きを見せます。トレンドフォロー(順張り)を狙うトレーダーにとっては、まさに絶好の機会が訪れる時間帯と言えるでしょう。

ニューヨーク時間

ロンドン時間の後半に差し掛かると、今度は「ニューヨーク時間」が始まります。世界の基軸通貨である米ドルを擁する、世界最大の経済大国アメリカの市場です。

ニューヨーク時間の最大の特徴は、ロンドン時間と重なる時間帯(日本時間の夜)に取引量がピークに達すること、そしてアメリカの重要な経済指標の発表が集中することです。ロンドン市場とニューヨーク市場という二大巨頭が同時に開いている時間帯は、FX市場が最も活発になる「ゴールデンタイム」とも呼ばれ、トレンドがさらに加速したり、大きな値動きが頻発したりします。

また、米国の雇用統計や消費者物価指数(CPI)、FOMC(連邦公開市場委員会)の政策金利発表など、相場の方向性を決定づけるほどのインパクトを持つイベントがこの時間帯に多く予定されています。これらの発表結果次第では、それまでのトレンドが一瞬で転換することもあり、トレーダーは常に高い緊張感を持って相場に臨む必要があります。

このように、三大市場はそれぞれ異なる顔を持っています。その中でもロンドン時間は、「静」の東京時間から「動」のニューヨーク時間への橋渡し役として、相場に方向性を与える極めて重要な役割を担っているのです。

ロンドン時間の取引時間を日本時間で解説

ロンドン時間の重要性を理解したところで、次に気になるのは「具体的に日本時間の何時から何時までがロンドン時間なのか」という点でしょう。この時間を正確に把握することは、トレードプランを立てる上で非常に重要です。

しかし、ここで一つ注意点があります。ヨーロッパやアメリカでは、季節によって時計の針を1時間進める「夏時間(サマータイム)」制度が導入されています。そのため、ロンドン時間の取引時間は、夏と冬で1時間ずれることになります。この違いを知らずにいると、重要な取引チャンスを逃したり、予期せぬ値動きに巻き込まれたりする可能性があるため、しっかりと覚えておく必要があります。

一般的に、FX会社が提供する取引プラットフォームのサーバー時間もこの夏時間・冬時間に合わせて切り替わりますが、自分の目で日本時間との対応を確認しておくことが大切です。

夏時間(サマータイム)の取引時間

夏時間(サマータイム)は、日照時間を有効活用するために導入されている制度です。 Daylight Saving Time (DST) とも呼ばれます。

期間 名称 日本時間でのロンドン時間(コアタイム)
3月最終日曜日~10月最終日曜日 夏時間(サマータイム) 16:00 ~ 翌2:00

ヨーロッパにおける夏時間の適用期間は、毎年3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までです。この期間中、ロンドン市場のコアタイムは日本時間に換算すると、おおよそ午後4時(16:00)から翌日の午前2時(2:00)までとなります。

具体的には、以下のようなタイムスケジュールで市場が動きます。

  • 15:00頃:フランクフルト市場(ドイツ)がオープンし始め、徐々に欧州勢が参入。値動きに変化が見られ始める。
  • 16:00:ロンドン市場が本格的にオープン。取引量が急増し、ボラティリティが一気に高まる。東京時間の高値・安値を試す動きが出やすい。
  • 17:00:ロンドン市場の取引がさらに活発化。トレンドが明確になることが多い。
  • 21:00:ニューヨーク市場がオープンし始め、ロンドン時間と重なる「ゴールデンタイム」に突入。
  • 翌2:00:ロンドン市場のコアタイムが終了。欧州勢が徐々に市場から退出し、値動きが少し落ち着き始める。

特に、日本時間の16時~17時頃は、東京時間の静かな相場からロンドン時間の活発な相場へと切り替わる、非常に重要な時間帯です。多くのトレーダーがこの市場の転換点を狙っており、大きなトレンドの初動を捉えるチャンスが眠っています。

冬時間の取引時間

夏時間期間が終了すると、冬時間に移行します。

期間 名称 日本時間でのロンドン時間(コアタイム)
10月最終日曜日~翌3月最終日曜日 冬時間 17:00 ~ 翌3:00

冬時間の適用期間は、毎年10月の最終日曜日から翌年の3月最終日曜日までです。この期間は、夏時間から1時間遅れて、ロンドン市場のコアタイムは日本時間で午後5時(17:00)から翌日の午前3時(3:00)までとなります。

夏時間との違いは、全ての時間が1時間後ろにずれるだけです。

  • 16:00頃:フランクフルト市場がオープン。
  • 17:00:ロンドン市場が本格的にオープン。この時間から相場が活発化する。
  • 18:00:ロンドン市場の取引が本格化。
  • 22:00:ニューヨーク市場がオープンし始め、「ゴールデンタイム」がスタート。
  • 翌3:00:ロンドン市場のコアタイムが終了。

この夏時間と冬時間の切り替わりは、毎年10月と3月の最終日曜日に行われます。FXトレーダーにとっては衣替えのようなもので、このタイミングでトレードの生活リズムを調整する必要があります。特に、普段仕事終わりの夜にトレードしている方にとっては、ゴールデンタイムの開始時間が1時間変わることは大きな影響があるかもしれません。自分が取引するFX会社の告知などを確認し、正確な切り替えタイミングを把握しておくことが重要です。

FXのロンドン時間に見られる値動きの5つの特徴

世界最大の取引量で値動きが活発になる、明確なトレンドが発生・継続しやすい、ユーロやポンドなど欧州通貨の取引が活発になる、東京時間の高値・安値が意識される、ダマシが発生することもある

ロンドン時間は、ただ取引が活発になるというだけではありません。その膨大なエネルギーは、為替相場にいくつかの特徴的な値動きのパターンを生み出します。これらの特徴を深く理解することで、相場の流れを読み解き、優位性の高いトレード戦略を立てることができます。ここでは、ロンドン時間に見られる代表的な5つの値動きの特徴について、その背景とともに詳しく解説します。

① 世界最大の取引量で値動きが活発になる

ロンドン時間が他の市場と一線を画す最大の理由は、その圧倒的な取引量にあります。前述の通り、ロンドンは世界第一の外国為替取引センターであり、その取引シェアは世界全体の約4割を占めるとも言われています。

この莫大な取引量は、市場にいくつかの重要な影響をもたらします。
第一に、「流動性」が飛躍的に向上します。流動性が高いとは、市場に売り手と買い手が豊富に存在し、取引が成立しやすい状態を指します。これにより、トレーダーは自分が意図した価格で注文が約定しやすくなる(スリッページが起きにくい)というメリットがあります。
第二に、「スプレッド」が狭くなる傾向があります。スプレッドは買値(Ask)と売値(Bid)の差であり、トレーダーにとっては取引コストにあたります。取引量が増えることでFX会社間の競争が激化し、スプレッドが縮小しやすくなるのです。これは、特に取引回数が多くなるスキャルピングなどの短期売買において、非常に有利な条件となります。

そして最も重要なのが、「ボラティリティ(価格変動率)」が格段に高まることです。東京時間では1時間で10pips程度しか動かなかった通貨ペアが、ロンドン時間に入った途端に50pips、100pipsと大きく動くことも珍しくありません。このダイナミックな値動きこそが、短時間で大きな利益を狙うチャンスを生み出す源泉なのです。

② 明確なトレンドが発生・継続しやすい

東京時間が比較的穏やかなレンジ相場を形成しやすいのに対し、ロンドン時間では明確な一方向への「トレンド」が発生しやすいという顕著な特徴があります。

この背景には、ロンドン市場に参加するプレイヤーの性質が関係しています。東京市場が実需(輸出入企業の決済など)の取引の割合が比較的高いのに対し、ロンドン市場では莫大な資金を運用する機関投資家やヘッジファンドといった、利益を追求する投機筋が主役となります。彼らは一度方向性を定めると、巨額の資金を投じてその方向にポジションを傾けるため、相場に強い推進力が生まれるのです。

多くの場合、彼らは東京時間で形成されたレンジ相場を分析し、その上限(レジスタンスライン)や下限(サポートライン)をブレイクさせる形でトレンドを発生させます。一度トレンドが始まると、その動きに追随する他のトレーダーも巻き込み、雪だるま式に勢いが加速していく傾向があります。そのため、ロンドン時間は「トレンドフォロー(順張り)」という、トレンドの方向に沿ってエントリーする王道の戦略が最も機能しやすい時間帯と言えるでしょう。

③ ユーロやポンドなど欧州通貨の取引が活発になる

当然のことながら、ロンドン時間にはその地理的な中心であるヨーロッパに関連する通貨の取引が最も活発になります。具体的には、ユーロ(EUR)、英ポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)などが主役となります。

したがって、これらの欧州通貨が絡む「通貨ペア」は、ロンドン時間に特に注目すべき対象です。

  • EUR/USD(ユーロ/ドル):世界で最も取引量の多い通貨ペア。ロンドン時間とニューヨーク時間が重なる時間帯に最も活発に動きます。
  • GBP/USD(ポンド/ドル):ボラティリティの高さで有名な通貨ペア。英国の経済指標に敏感に反応します。
  • EUR/JPY(ユーロ/円):ユーロ主導でトレンドが発生しやすく、日本人トレーダーにも馴染みやすい通貨ペアです。
  • GBP/JPY(ポンド/円):非常にボラティリティが高く、ハイリスク・ハイリターンな通貨ペアとして知られています。

これらの通貨ペアは、ロンドン時間になると東京時間とは比べ物にならないほどの値動きを見せるため、大きな利益機会を提供してくれます。逆に言えば、ドル/円(USD/JPY)など、東京時間に主役だった通貨ペアは、ロンドン時間では欧州通貨ペアの値動きに引きずられる脇役になることも少なくありません。ロンドン時間で取引する際は、主役である欧州通貨ペアに焦点を当てるのがセオリーです。

④ 東京時間の高値・安値が意識される

ロンドン市場に参入してくる欧州のトレーダーたちは、闇雲に取引を始めるわけではありません。彼らは、自分たちが市場に参加する前の「東京時間」の値動きを非常に重要な判断材料としています。

特に、東京時間中に付けられた「高値」と「安値」は、極めて強力なテクニカルポイントとして意識されます。これらの価格帯は、その日のアジア市場における買い圧力と売り圧力の均衡点を示しており、欧州勢にとっては、相場の次の展開を占う試金石となるのです。

ロンドン時間開始後、相場はしばしばこの東京時間の高値・安値を目指して動きます。そして、

  • 高値を上抜ければ(ブレイクすれば)、強い上昇トレンドのサインと見なされ、買いが殺到する。
  • 安値を下抜ければ(ブレイクすれば)、強い下降トレンドのサインと見なされ、売りが殺到する。
  • 高値・安値で反発すれば、レンジ相場が継続する可能性が示唆される。

このように、東京時間の高値・安値は、ロンドン時間のトレンドの起点や転換点となることが非常に多いのです。したがって、ロンドン時間での取引を始める前に、必ずチャートに東京時間の高値と安値のラインを引いておくことは、有効な戦略を立てるための基本的な準備と言えるでしょう。

⑤ 「ダマシ」が発生することもある

ロンドン時間は明確なトレンドが発生しやすい一方で、その激しい値動きゆえの罠も存在します。それが「ダマシ(フェイクアウト)」と呼ばれる現象です。

ダマシとは、セオリー通りの動きを見せかけて、多くのトレーダーを誘い込んだ後、一気に逆方向へ動く値動きのことを指します。ロンドン時間でよく見られるのが、「ロンドン・フェイクアウト」とも呼ばれるパターンです。

例えば、東京時間の高値をブレイクし、上昇トレンドが発生したように見せかけます。これを見て多くのトレーダーが「ブレイクアウトだ!」と買いで飛び乗ります。しかし、価格は少し上昇した後すぐに失速し、今度は逆に急落して東京時間の安値をも割り込んでしまう、といった動きです。この場合、高値で買ったトレーダーは一斉に損切りを強いられることになり、その損切り注文がさらなる下落を加速させます。

このようなダマシは、ストップロス注文を狙った大口投資家の仕掛けであるとも言われています。ダマシを完全に回避することは困難ですが、警戒することは可能です。例えば、ブレイクした瞬間に飛び乗るのではなく、ブレイクした後のローソク足が確定するのを待つ、一度ブレイクした後に少し戻ってきたところ(押し目・戻り)を狙う、といった工夫でダマシに引っかかるリスクを低減できます。ロンドン時間のエネルギーは、時にトレーダーを欺くこともあるのです。

他の市場時間との関係性

FX市場は24時間ノンストップで動いているため、各市場時間は独立しているわけではなく、互いに密接に関係し合っています。特に、市場の主役が交代する「移行時間帯」は、相場の雰囲気がガラリと変わる重要な局面です。ロンドン時間の特性をより深く理解するためには、その前後の市場、すなわち東京時間とニューヨーク時間との関係性を把握することが不可欠です。

東京時間からロンドン時間への移行

日本時間の午後、東京市場が終盤に差し掛かり、ロンドン市場のオープンが近づく時間帯(日本時間15時~17時頃)は、FX市場における「静から動への転換点」です。この時間帯には、独特の値動きが見られます。

まず、東京時間の終盤(15時頃)には、その日の取引を手仕舞う動きや、これから始まるロンドン市場を見越したポジション調整の動きが出始めます。特に目立つのが「東京オプションカット」と呼ばれるイベントです。これは、通貨オプションの権利行使期限時刻(日本時間15時)のことで、この時刻に向けて特定の価格帯にレートを寄せようとする力学が働くことがあり、一時的に値動きが活発化する場合があります。

そして、ロンドン市場が本格的にオープンする16時(冬時間は17時)を迎えると、市場の空気は一変します。東京時間の穏やかな値動きが嘘だったかのように、取引量が急増し、ボラティリティが一気に高まります。この瞬間に、その日の相場の方向性が決まることも少なくありません。

この移行時間帯の値動きには、大きく分けて2つの典型的なパターンがあります。

  1. トレンド継続型(フォロー・スルー):東京時間から発生していた緩やかなトレンドが、ロンドン勢の参入によって一気に加速するパターン。
  2. トレンド転換型(リバーサル):東京時間のトレンドとは全く逆の方向に、強いトレンドが発生するパターン。東京時間の値動きが「ダマシ」であったかのように、流れが反転します。

この移行時間帯は、大きなチャンスがある一方で、方向性が定まらずに乱高下することもあるため、注意が必要です。経験の浅いトレーダーは、ロンドン時間開始直後の荒い値動きが落ち着き、明確な方向性が見えてくるまで様子見に徹するのも一つの賢明な戦略です。

ロンドン時間とニューヨーク時間が重なるゴールデンタイム

ロンドン時間の取引が中盤から後半に差し掛かる日本時間の夜21時(冬時間は22時)頃になると、今度はニューヨーク市場がオープンします。この瞬間から、ロンドン市場がクローズする翌2時(冬時間は3時)までの約4~5時間は、世界二大市場が同時に開いている、FX市場で最も取引が活発になる時間帯です。この特別な時間帯は、多くのトレーダーから「ゴールデンタイム」と呼ばれています。

ゴールデンタイムは、まさに世界の金融パワーが一点に集中する時間です。ロンドンの機関投資家とニューヨークの機関投資家が同じ土俵で取引を行うため、取引量、流動性、ボラティリティの全てがピークに達します。

この時間帯の値動きには、以下のような特徴があります。

  • トレンドの加速:ロンドン時間で発生したトレンドが、ニューヨーク勢の参入によってさらに勢いを増すことがあります。利益を大きく伸ばす絶好のチャンスとなります。
  • 重要な経済指標の発表:ニューヨーク時間には、米国の雇用統計や政策金利など、世界経済を揺るがす最重要クラスの経済指標が発表されます。これらの発表結果によっては、相場が瞬時に数十pips、時には100pips以上も乱高下することがあります。
  • トレンドの転換:経済指標の結果や、ニューヨーク市場のセンチメント(市場心理)によって、ロンドン時間からのトレンドが完全に反転することも珍しくありません。

ゴールデンタイムは、1日で最も大きな利益を狙える可能性がある一方で、最も大きな損失を被るリスクも内包している、ハイリスク・ハイリターンな時間帯です。この時間帯に取引する場合は、経済指標カレンダーの確認を怠らず、予期せぬ急変動に備えて、ストップロスの設定を徹底するなど、通常以上に厳格なリスク管理が求められます。特に、会社員など日中に取引できないトレーダーにとっては、このゴールデンタイムが主戦場となることが多いでしょう。

ロンドン時間で取引するメリット

これまで見てきたように、ロンドン時間はFX市場の中でも特異な性質を持っています。そのダイナミックな環境は、トレーダーにとって数多くのメリットをもたらします。ここでは、ロンドン時間で取引することの具体的な利点を2つに絞って詳しく解説します。これらのメリットを最大限に活かすことが、トレード成績の向上に直結します。

短時間で大きな利益を狙える

ロンドン時間で取引する最大のメリットは、その高いボラティリティ(価格変動率)を活かして、短時間で大きな利益を狙えることです。

FXの利益は、獲得した値幅(pips)と取引量(ロット数)によって決まります。値動きが穏やかな東京時間では、大きな利益を得るためには長い時間ポジションを保有するか、大きなロット数で取引する必要があります。しかし、ロンドン時間では、相場が活発に動くため、短時間のトレードであっても十分な値幅を獲得できる可能性が高まります。

例えば、デイトレードで1日に50pipsの利益を目標にするとします。東京時間では、10pipsの利益を5回繰り返す必要があるかもしれません。しかし、ロンドン時間で明確なトレンドが発生した場合、たった一度のエントリーで、1時間もかからずに50pips以上の利益に到達することも決して珍しくありません。

このような特性は、特にスキャルピング(数秒~数分で売買を完結させる手法)やデイトレード(その日のうちに売買を完結させる手法)といった短期売買を主戦場とするトレーダーにとって、非常に魅力的です。取引にかけられる時間が限られているトレーダーでも、効率的に利益を積み重ねることが可能になります。

ただし、このメリットは常にリスクと表裏一体であることを忘れてはなりません。大きく利益を狙えるということは、逆に動いた場合には大きく損失を出す可能性もあるということです。このダイナミズムを味方につけるには、後述するリスク管理が不可欠となります。

テクニカル分析が機能しやすい

もう一つの大きなメリットは、テクニカル分析が機能しやすいという点です。

テクニカル分析とは、過去の価格チャートのパターンから将来の値動きを予測する分析手法です。移動平均線やトレンドライン、MACDといった様々な指標が用いられます。このテクニカル分析が有効に機能するためには、市場に十分な「取引参加者」と「取引量」が存在することが前提となります。

取引量が少ない市場では、特定の誰かによる比較的少額の注文でも価格が大きく動いてしまう「ノイズ」が発生しやすく、テクニカル指標が「ダマシ」のサインを出すことが多くなります。例えば、移動平均線を少し超えただけですぐに戻ってきてしまう、といった現象です。

その点、ロンドン時間は世界中のトレーダーが参加し、取引量が膨大になるため、市場の動きが大衆心理を素直に反映しやすくなります。個々の小さな注文は巨大な流れの中に飲み込まれ、より純粋な需給のバランスがチャート上に現れるのです。

その結果、

  • トレンドラインやサポート・レジスタンスラインが明確に意識され、きれいに反発したり、力強くブレイクしたりする。
  • 移動平均線が示すトレンドの方向性が信頼できるものになる。
  • オシレーター系指標(RSIなど)の「買われすぎ」「売られすぎ」のサインの精度が高まる。

このように、教科書通りのテクニカル分析が通用しやすい環境であるため、FX初心者の方にとっても、学習した知識を実践で試し、成功体験を積みやすい時間帯と言えるかもしれません。もちろん100%ではありませんが、他の時間帯に比べて、チャートがセオリー通りに動きやすい傾向があることは、大きなアドバンテージです。

ロンドン時間で取引するデメリットと注意点

値動きが激しく損失リスクも大きい、重要な経済指標の発表に注意する、ロンドンフィキシングに注意する

ロンドン時間は大きな利益機会を提供してくれる魅力的な市場ですが、その光が強ければ強いほど、影もまた濃くなります。メリットの裏側には、相応のデメリットとリスクが潜んでいます。これらの危険性を十分に理解し、適切な対策を講じなければ、大切な資金を一瞬で失いかねません。ここでは、ロンドン時間で取引する際に必ず心に留めておくべきデメリットと注意点を詳しく解説します。

値動きが激しく損失リスクも大きい

ロンドン時間で取引する最大のデメリットは、メリットの裏返しでもありますが、値動きが激しいがゆえに損失のリスクも非常に大きいという点です。

短時間で50pipsの利益が狙えるということは、もし相場が逆に動けば、短時間で50pipsの損失を被る可能性があることを意味します。特に、トレンドの転換点や経済指標の発表時など、ボラティリティが極端に高まる局面では、一瞬のうちに強制ロスカットに至るほどの急変動に見舞われることもあり得ます。

また、こうした急変動時には、以下のようなトレーダーにとって不利な現象も発生しやすくなります。

  • スリッページ:注文した価格と実際に約定した価格にズレが生じる現象。不利な価格で約定してしまうリスクが高まります。
  • スプレッドの拡大:FX会社がリスクを回避するため、一時的にスプレッド(売値と買値の差)を大きく広げることがあります。これにより、エントリーした瞬間に大きなマイナスからスタートすることになります。

これらのリスクから資金を守るために、ロンドン時間での取引では「損切り(ストップロス)設定の徹底」が絶対条件となります。エントリーする前に、「もし予測が外れたら、どこで損失を確定させるか」という損切りポイントを必ず決め、注文と同時にストップロス注文も入れておく習慣をつけましょう。「もう少し待てば戻るかもしれない」という安易な期待は、ロンドン時間の激しい値動きの中では命取りになります。

重要な経済指標の発表に注意する

ロンドン時間には、相場の方向性を一変させる力を持つ、イギリスやユーロ圏の重要な経済指標が数多く発表されます。

例えば、以下のような指標は特に注目度が高く、発表前後で相場が大きく動く可能性があります。

  • イギリスの経済指標
    • 消費者物価指数 (CPI):インフレの動向を示す最重要指標。
    • 失業率・雇用統計:景気の動向を測る上で重要。
    • BOE(イングランド銀行)政策金利発表・議事録公表:金融政策の方向性を示し、ポンドの価値に直結する。
  • ユーロ圏・ドイツの経済指標
    • ECB(欧州中央銀行)政策金利発表・総裁会見:ユーロの価値に最も大きな影響を与える。
    • ドイツ ZEW景況感指数、Ifo景況指数:ユーロ圏最大の経済大国であるドイツの景況感を示す先行指標。

これらの指標が市場の予想と大きく異なる結果だった場合、関連する通貨ペア(ポンド/ドル、ユーロ/ドルなど)は爆発的な値動きを見せることがあります。トレンドが加速することもあれば、一瞬で反転することもあります。

したがって、取引を始める前には、必ずその日に発表が予定されている経済指標を「経済指標カレンダー」で確認することが不可欠です。そして、重要な指標発表の前後30分程度は、相場が不安定になりやすいため、ポジションを持たない、あるいは取引を手控えるのが賢明なリスク管理です。あえて指標発表を狙う「指標トレード」という手法もありますが、非常にギャンブル性が高く、高度な技術と経験が求められるため、初心者にはおすすめできません。

ロンドンフィキシング(ロンフィク)に注意する

ロンドン時間の中でも、特に注意が必要なアノマリー(規則的な変則性)として「ロンドンフィキシング(London Fixing)」、通称「ロンフィク」の存在が挙げられます。

ロンフィクとは、本来は金(ゴールド)のスポット価格を決定する時間(値決め)のことですが、外国為替市場においては、この値決めに合わせて大手金融機関などが顧客からの依頼による実需の通貨売買(決済)を執行する時間帯を指します。

この時間は、日本時間の午前0時(夏時間)、または午前1時(冬時間)に設定されています。この時間に向けて、月末や週末などには特に、巨額の資金フローが発生し、為替レートに一時的かつ特殊な動きをもたらすことがあります。

ロンフィク前後の値動きの特徴としては、

  • 特定の時間に向けて、一方的な買いや売りが続くことがある。
  • それまでのトレンドとは関係なく、実需のフロー主導で価格が動く。
  • フィキシング通過後は、その動きがピタリと止まり、元のトレンドに戻ったり、反転したりする。

このように、ロンフィクの時間帯は、通常のテクニカル分析が通用しにくい、特殊な需給によって相場が動く時間です。投機的な動きとは異なるため、値動きの予測が非常に困難になります。この特殊性を理解せずに不用意にポジションを持っていると、予期せぬ大きな損失につながる可能性があります。特に初心者のうちは、ロンフィクが近づく時間帯(日本時間の23:30頃から翌1:30頃)は、ポジションを整理して取引を避けるのが安全策と言えるでしょう。

ロンドン時間におすすめのトレード手法

ロンドン時間の特性である「高いボラティリティ」と「明確なトレンド」を理解すれば、それを活かした効果的なトレード手法が見えてきます。ここでは、ロンドン時間という土俵で戦う上で特に相性が良いとされる、代表的な3つのトレード手法を具体的に解説します。自分の性格やライフスタイルに合った手法を見つける参考にしてください。

トレンドフォロー(順張り)

トレンドフォローは、発生したトレンドと同じ方向にポジションを持つ「順張り」の手法であり、ロンドン時間において最も王道かつ効果的な戦略と言えます。ロンドン時間の「明確なトレンドが発生・継続しやすい」という最大の特徴を、最も素直に利用する手法です。

具体的なトレードの流れは以下のようになります。

  1. 環境認識:ロンドン時間開始後、しばらく値動きを観察します。東京時間の高値・安値をブレイクするなど、明確な方向性(上昇トレンドか下降トレンドか)が出るのを待ちます。
  2. トレンドの確認:移動平均線(Moving Average)の向きや、複数の移動平均線の並び(パーフェクトオーダー)、MACD(マックディー)のゴールデンクロス/デッドクロスなどを利用して、トレンドが本物であるかを確認します。
  3. エントリー:トレンドが一服し、一時的に価格が戻ってきたところ(上昇トレンドなら「押し目」、下降トレンドなら「戻り」)を狙ってエントリーします。これにより、高値掴みや安値売りを避け、より有利な価格でポジションを持つことができます。
  4. 利益確定と損切り:利益確定は、トレンドの勢いが弱まったと判断できるポイント(例:重要なレジスタンスライン、移動平均線からの乖離)で行います。損切りは、エントリーの根拠が崩れたポイント(例:直近の安値/高値を割ったところ)に必ず設定します。

トレンドフォローの魅力は、一度トレンドに乗ることができれば、リスクを限定しながら大きな利益(大きな値幅)を狙える点にあります。ロンドン時間の力強いトレンドの波に乗ることを目指す、シンプルかつ強力な手法です。

ブレイクアウト

ブレイクアウトは、相場が一定のレンジ(揉み合い)を抜けた瞬間を狙って、その抜けた方向にエントリーする手法です。特に、東京時間で形成されたレンジ相場が、ロンドン時間の開始とともに破られることが多いことから、この手法はロンドン時間と非常に相性が良いです。

具体的なトレードの流れは以下の通りです。

  1. ラインの特定:取引を始める前に、チャート上で意識されている重要な価格帯にラインを引きます。最も分かりやすいのが、東京時間中の高値(レジスタンスライン)と安値(サポートライン)です。
  2. ブレイクの監視:ロンドン時間に入り、価格がこれらのラインに近づいてきたら注意深く監視します。
  3. エントリー:ローソク足の実体が、レジスタンスラインを明確に上抜けるか、サポートラインを明確に下抜けたことを確認して、その方向にエントリーします。
  4. 利益確定と損切り:利益確定は、値幅を計算して目標価格を設定する方法(例:レンジの幅と同じだけ伸びたところ)などがあります。損切りは、ブレイクしたラインの内側に戻ってきてしまった場合など、ブレイクが失敗(ダマシ)だったと判断できるポイントに設定します。

ブレイクアウト手法は、トレンドの初動を捉えることができるため、大きな利益につながる可能性を秘めています。しかし、前述の「ダマシ」に最も引っかかりやすい手法でもあります。ブレイクした瞬間に慌てて飛び乗るのではなく、ブレイク後の値動きを少し確認してからエントリーするなどの慎重さが、成功の確率を高める鍵となります。

スキャルピング

スキャルピングは、数秒から数分という非常に短い時間で売買を繰り返し、小さな利益(数pips)をコツコツと積み重ねていく超短期売買の手法です。

一見するとトレンドを狙うロンドン時間とは合わないように思えるかもしれませんが、実は非常に相性が良い面があります。

  • 高いボラティリティ:値動きが活発なため、短時間でもスキャルピングで狙う数pipsの値幅は十分に発生します。取引チャンスが豊富にあります。
  • 狭いスプレッド:取引量が多く流動性が高いため、スプレッドが狭くなる傾向があります。取引回数が多くなるスキャルピングにおいて、取引コストを抑えられるのは大きな利点です。

スキャルピングでは、1分足や5分足といった短い時間軸のチャートを使い、移動平均線やボリンジャーバンドなどの指標を参考に、瞬時の判断でエントリーと決済を繰り返します。

ただし、スキャルピングは高い集中力と素早い判断力、そして厳格な規律が求められる、難易度の高い手法です。一回の損失は小さく抑えるのが基本ですが、感情的になって損切りを怠ると、それまでの利益を一度に吹き飛ばす「コツコツドカン」に陥りがちです。ロンドン時間の激しい値動きの中で冷静さを保ち続けられる、上級者向けの手法と言えるでしょう。

ロンドン時間におすすめの通貨ペア

ロンドン時間の特性を活かして効率的に利益を上げるためには、どの通貨ペアを選択するかが極めて重要です。ロンドン時間には、やはり主役である欧州通貨が絡む通貨ペアが最も活発に動きます。ここでは、ロンドン時間の取引におすすめの代表的な4つの通貨ペアを、それぞれの特徴とともに紹介します。

通貨ペア 特徴 こんなトレーダーにおすすめ
EUR/USD (ユーロ/ドル) 世界一の取引量を誇り、流動性が非常に高い。値動きが比較的素直でテクニカル分析が機能しやすい。スプレッドが狭い。 初心者から上級者まで。安定した環境でテクニカル分析の基本を実践したい方。
GBP/USD (ポンド/ドル) ボラティリティ(値動きの激しさ)が非常に高い。英国の経済指標に大きく反応する。ハイリスク・ハイリターン。 大きな値幅を狙いたい中〜上級者。リスク管理を徹底できる方。
EUR/JPY (ユーロ/円) ユーロと円の組み合わせで、日本人トレーダーに馴染み深い。クロス円の中でも取引量が多く、トレンドが出やすい。 ドルストレート以外の通貨ペアで、トレンドフォローを実践したい方。
GBP/JPY (ポンド/円) 最もボラティリティが高い通貨ペアの一つ。1日の値幅が非常に大きい。「殺人通貨」とも呼ばれるほどの激しい動き。 最もハイリスク・ハイリターンな取引を求める上級者。短期売買で大きな利益を狙いたい方。

ユーロ/ドル (EUR/USD)

「ユーロドル」の愛称で知られるEUR/USDは、世界で最も取引されている、まさに為替市場の王様とも言える通貨ペアです。その圧倒的な取引量から生まれる高い流動性が最大の特徴で、スプレッドは主要通貨ペアの中で最も狭い水準にあります。

値動きは、他の通貨ペアに比べて比較的穏やかで素直な傾向があり、突発的な乱高下が少ないとされています。そのため、トレンドラインや移動平均線といった基本的なテクニカル分析が機能しやすく、初心者の方でも分析しやすいのが魅力です。

ロンドン時間にはユーロ主導で動き、ニューヨーク時間が始まるとドル主導の動きも加わるため、ゴールデンタイムには非常に活発な取引が行われます。安定した環境で、テクニカル分析のセオリーに基づいたトレードをしたいと考えるなら、まず最初に検討すべき通貨ペアです。

ポンド/ドル (GBP/USD)

「ポンドル」の愛称で呼ばれるGBP/USDは、そのボラティリティの高さで非常に有名な通貨ペアです。ユーロ/ドルに比べて値動きが激しく、1日に200pips以上動くことも珍しくありません。その荒々しい値動きから、一部のトレーダーには「殺人通貨」と揶揄されることもあります。

この高いボラティリティは、大きな利益を狙えるチャンスであると同時に、大きな損失リスクも伴います。特に、BOE(イングランド銀行)の金融政策発表や英国の重要な経済指標の結果には極めて敏感に反応し、一瞬で相場の流れが変わることもあります。

テクニカル分析も機能しますが、時にそれを無視するような突発的な動きも見せるため、取引するには相応の経験と度胸が必要です。リスクを十分に理解した上で、大きなリターンを狙いたい中級者以上のトレーダー向けの通貨ペアと言えるでしょう。

ユーロ/円 (EUR/JPY)

EUR/JPYは、ユーロと日本円を組み合わせた「クロス円」と呼ばれる通貨ペアの一つです。日本人トレーダーにとっては、円が絡むため値動きの感覚が掴みやすく、馴染み深い存在です。

値動きの特性としては、EUR/USDとUSD/JPYの動きを合成したものになります。ロンドン時間ではユーロの動向に強く影響されるため、欧州の経済指標やニュースによって明確なトレンドが発生しやすい特徴があります。EUR/USDほどではありませんが取引量も多く、比較的素直なトレンドを形成することが多いため、トレンドフォロー戦略と相性が良いです。ドルストレート(米ドルが絡む通貨ペア)以外の選択肢として、有力な候補となります。

ポンド/円 (GBP/JPY)

「ポン円」の愛称で親しまれる(あるいは恐れられる)GBP/JPYは、主要通貨ペアの中で最もボラティリティが高い通貨ペアの一つです。値動きの激しいポンドと、比較的ボラティリティの高い円の組み合わせであるため、その変動幅は絶大で、1日に300pips以上動くこともあります。

この尋常ではないボラティリティは、スキャルピングやデイトレードで短時間に大きな利益を叩き出す可能性を秘めていますが、その一方で、一瞬の判断ミスが致命的な損失につながる、極めてハイリスクな通貨ペアでもあります。初心者が安易に手を出すべきではありません。

GBP/JPYを取引するには、鉄の規律に基づいた厳格な損切り設定と、相場の急変に動じない強靭なメンタルが不可欠です。まさに、百戦錬磨の上級者向けトレーダーが、その腕を試すための通貨ペアと言えるでしょう。

まとめ

本記事では、FX取引における「ロンドン時間」について、その基本的な定義から日本時間での取引時間、値動きの具体的な特徴、メリット・デメリット、そしておすすめのトレード戦略や通貨ペアに至るまで、多角的に掘り下げてきました。

最後に、この記事の要点を改めて整理します。

  • ロンドン時間は世界最大の取引量を誇る、FX市場で最も重要な時間帯です。日本時間の夕方から深夜にかけて、相場は最もダイナミックに動きます。
  • ロンドン時間の最大の特徴は、①世界最大の取引量による高いボラティリティ、②明確なトレンドの発生・継続、③ユーロやポンドなど欧州通貨が主役になる、という3点に集約されます。
  • トレーダーにとってのメリットは、その高いボラティリティを活かして「短時間で大きな利益を狙える」こと、そして取引参加者が多く大衆心理が反映されやすいため「テクニカル分析が機能しやすい」ことです。
  • 一方で、デメリットとして「値動きが激しく損失リスクも大きい」こと、そして「重要な経済指標」「ロンフィク」といった特有のリスク要因に注意する必要があります。
  • ロンドン時間の特性を活かすトレード手法としては、「トレンドフォロー(順張り)」「ブレイクアウト」が王道です。通貨ペアは、EUR/USDやGBP/USDといった欧州通貨ペアに注目するのがセオリーです。

FX市場は24時間動いていますが、すべての時間帯が同じではありません。ロンドン時間は、その中でも特に多くのチャンスとリスクが凝縮された、エキサイティングな舞台です。この時間帯の特性を正しく理解し、そのエネルギーを味方につけることができれば、あなたのFXトレードは新たなステージへと進むことができるでしょう。

しかし、そのパワフルな流れに安易に飛び込むのではなく、常にリスク管理、特に損切り設定を徹底することを忘れないでください。ロンドン時間という荒波を乗りこなし、安定した利益を上げていくためには、知識だけでなく、規律と慎重さが不可欠です。この記事が、あなたがロンドン時間を攻略するための一助となれば幸いです。