FX(外国為替証拠金取引)市場は、平日であれば24時間いつでも取引が可能ですが、時間帯によって市場の参加者や取引量が大きく異なり、値動きの特性も変わります。その中でも、世界最大の取引量を誇り、相場が最も活発に動くのが「欧州時間(ロンドン時間)」です。
FXで利益を上げるためには、各時間帯の特徴を理解し、自身のトレードスタイルやライフスタイルに合った時間帯で勝負することが極めて重要です。特に欧州時間は、トレンドが発生しやすく、大きな利益を狙えるチャンスが豊富にある一方で、値動きが激しいためにリスク管理を怠ると大きな損失につながる可能性も秘めています。
この記事では、FXの欧州時間(ロンドン時間)について、その基本的な定義から、日本時間での取引時間、値動きの具体的な特徴、トレードする上でのメリット・デメリット、さらにはおすすめの通貨ペアや取引のポイントまで、網羅的に詳しく解説します。この記事を読めば、欧州時間という強力な武器を使いこなし、トレード成績を向上させるための知識が身につくでしょう。
目次
FXの欧州時間(ロンドン時間)とは
FX市場における「欧州時間」とは、その名の通り、ヨーロッパの金融市場が活発に取引を行う時間帯を指します。特に、世界の金融センターの一つであるロンドン市場がオープンすることから、一般的に「ロンドン時間」とも呼ばれます。 この時間帯は、FXトレーダーにとって最も重要視される時間帯の一つであり、その動向は世界中の市場参加者から注目されています。
FXの取引時間は主に3つの市場に分けられる
FX市場は、特定の取引所が存在するわけではなく、世界中の銀行や金融機関が相対取引を行うネットワークで成り立っています。そのため、どこかの国の市場が閉まっても、別の国の市場が開くことで、24時間取引が継続されます。この24時間の流れは、大きく分けて以下の3つの主要な市場(時間帯)に分類されます。
市場名称 | 主な市場 | 日本時間(目安) | 特徴 |
---|---|---|---|
東京時間(アジア時間) | 東京、シンガポール、香港 | 午前8時~午後5時 | ・比較的値動きが穏やか ・レンジ相場になりやすい ・クロス円(ドル/円、ユーロ/円など)の取引が活発 |
欧州時間(ロンドン時間) | ロンドン、フランクフルト | 午後4時~翌午前2時(夏時間) | ・世界最大の取引量 ・値動きが非常に活発になる ・トレンドが発生・転換しやすい |
ニューヨーク時間(米国時間) | ニューヨーク | 午後9時~翌午前6時(夏時間) | ・ロンドン時間に次ぐ取引量 ・重要な経済指標の発表が多い ・ロンドン時間と重なる時間帯は特に活発 |
※時間は夏時間を基準とした目安であり、冬時間では1時間後ろにずれます。 |
東京時間(アジア時間)
日本時間の早朝、ニュージーランドのウェリントン市場から始まり、オーストラリアのシドニー市場、そして東京市場へと取引の中心が移っていきます。一般的に日本時間の午前8時頃から午後5時頃までを「東京時間」または「アジア時間」と呼びます。
この時間帯は、日本の機関投資家や個人投資家、そして他のアジア諸国の市場参加者が中心となります。ドル/円やユーロ/円といったクロス円の取引が活発になる傾向があります。ただし、欧州や米国の主要なプレーヤーはまだ市場に参加していないため、全体的な取引量は比較的少なく、値動きは穏やかになることが多いです。そのため、大きなトレンドが発生しにくく、一定の値幅で価格が上下する「レンジ相場」を形成しやすいという特徴があります。
欧州時間(ロンドン時間)
東京時間の午後になると、ヨーロッパ勢が市場に参加し始めます。フランクフルト市場(ドイツ)などがオープンし、そして日本時間の夕方には、世界最大の金融市場であるロンドン市場がオープンします。このロンドン市場が取引の中心となる時間帯が「欧州時間(ロンドン時間)」です。
この時間帯になると、それまで比較的静かだった相場が一変します。欧州各国の機関投資家、ヘッジファンド、大手銀行といった巨大な資本を持つプレーヤーが本格的に参入するため、取引量が急増し、ボラティリティ(価格変動率)が格段に高まります。 東京時間で形成されていたレンジ相場をブレイクし、新たなトレンドが発生したり、それまでの流れが転換したりすることが頻繁に起こります。
ニューヨーク時間(米国時間)
欧州時間の後半に差し掛かると、今度はアメリカのニューヨーク市場がオープンし、「ニューヨーク時間(米国時間)」が始まります。ニューヨークもロンドンと並ぶ世界の金融センターであり、この時間帯も取引は非常に活発です。
特に、欧州時間とニューヨーク時間が重なる時間帯(日本時間の午後9時頃から翌午前2時頃)は、世界で最も取引が集中する「ゴールデンタイム」とも言えるでしょう。ロンドンとニューヨークの二大市場の参加者が同時に取引を行うため、流動性が最高潮に達し、トレンドがさらに加速したり、重要な経済指標の発表をきっかけに相場が乱高下したりすることがあります。
欧州時間(ロンドン時間)が重要な理由
数ある市場の中でも、なぜ欧州時間(ロンドン時間)はこれほどまでに重要視されるのでしょうか。その理由は主に3つあります。
- 圧倒的な取引量: 国際決済銀行(BIS)が3年ごとに公表する調査によると、外国為替取引における国別のシェアで、イギリス(ロンドン)は長年にわたり世界第1位を維持しています。世界の約4割の取引がロンドン市場を経由しているとされ、その取引量は東京市場やニューヨーク市場を大きく上回ります。取引量が多いということは、それだけ多くの資金が市場に流入し、価格を動かすエネルギーが強いことを意味します。
参照:Bank for International Settlements “Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2022” - トレンドの起点となりやすい: 東京時間で方向感のないレンジ相場が続いた後、欧州勢が参入することで新たな方向性が示されるケースが非常に多いです。彼らは東京時間の値動きを分析し、割安・割高と判断した水準で大規模な取引を仕掛けてきます。これにより、東京時間までの流れが否定され、新たなトレンドが生まれる起点となることが頻繁にあります。
- 地理的・時間的な中心地: ロンドンは地理的にアジアとアメリカの間に位置しており、時間的にもアジア市場の終わりとアメリカ市場の始まりを繋ぐ役割を担っています。このため、世界中の情報と資金がロンドンに集まりやすく、グローバルな市場のセンチメント(市場心理)を形成する上で中心的な役割を果たしています。
これらの理由から、多くのプロトレーダーは欧州時間(ロンドン時間)をメインターゲットとして取引戦略を組み立てています。
日本時間では何時から何時まで?
欧州時間(ロンドン時間)が日本時間の何時から何時までにあたるのかは、欧米で導入されている「夏時間(サマータイム)」と「冬時間」で異なります。毎年切り替わるため、正確に把握しておくことが重要です。
夏時間(サマータイム)の場合
夏時間は、日照時間を有効活用するために時計を1時間進める制度です。
- 期間: 3月の最終日曜日~10月の最終日曜日
- 欧州時間(ロンドン時間)のコアタイム(日本時間): 午後4時頃 ~ 翌午前2時頃
- ロンドン市場のオープン: 日本時間 午後4時
- フランクフルト市場のオープン: 日本時間 午後3時
夏時間の間、ロンドン市場は日本時間の夕方4時に開きます。日本人にとっては、ちょうど仕事が終わる時間帯から本格的な値動きが始まるため、兼業トレーダーにとっても取引しやすい時間帯と言えるでしょう。
冬時間の場合
夏時間が終了すると、時計を1時間戻す冬時間に移行します。
- 期間: 10月の最終日曜日~翌年3月の最終日曜日
- 欧州時間(ロンドン時間)のコアタイム(日本時間): 午後5時頃 ~ 翌午前3時頃
- ロンドン市場のオープン: 日本時間 午後5時
- フランクフルト市場のオープン: 日本時間 午後4時
冬時間になると、夏時間よりも全体が1時間後ろにずれます。ロンドン市場のオープンは午後5時となり、相場が活発になる時間帯もそれに伴って遅くなります。この切り替わりのタイミングは毎年同じではないため、特に10月や3月の最終週には注意が必要です。
コアタイムと呼ばれる特に活発な時間帯
欧州時間の中でも、特に値動きが激しくなり、取引チャンスが増える「コアタイム」が存在します。
- ロンドン市場オープン直後(日本時間 午後4時~5時頃 ※夏時間):
東京時間の静かな相場から一転、欧州勢が本格的に参入してくるこの時間帯は、値動きが非常に活発になります。東京時間の高値や安値を試す動きや、それをブレイクして一気にトレンドが発生することが多いため、短期的な値幅を狙う絶好の機会となります。 - ニューヨーク市場と重なる時間帯(日本時間 午後9時~翌午前2時頃 ※夏時間):
前述の通り、これはロンドン市場とニューヨーク市場という世界二大市場が同時に開いている「ゴールデンタイム」です。取引量は一日の中で最大となり、トレンドが最も加速しやすい時間帯です。また、アメリカの重要な経済指標が発表されることも多く、相場が急騰・急落する可能性も高まります。この時間帯は、大きな利益を狙える反面、リスクも最大になるため、細心の注意が必要です。
これらのコアタイムを意識することで、効率的にトレードを行うことが可能になります。
FXの欧州時間(ロンドン時間)に見られる5つの特徴
欧州時間(ロンドン時間)は、他の時間帯とは一線を画す独特の値動きを見せます。その特徴を深く理解することが、この時間帯を攻略する鍵となります。ここでは、代表的な5つの特徴について詳しく解説します。
① 世界最大の取引量で値動きが活発になる
欧州時間、特にロンドン市場がオープンすると、FX市場の流動性は劇的に向上します。これは、欧州各国の銀行、機関投資家、ヘッジファンド、多国籍企業といった、いわゆる「大口」のプレーヤーが一斉に市場に参加するためです。
国際決済銀行(BIS)の最新の調査(2022年)によれば、世界の外国為替取引のうち、イギリス(ロンドン)が占めるシェアは38.5%に達し、2位のアメリカ(19.4%)、3位のシンガポール(9.3%)を大きく引き離して世界第1位です。この数字が示すように、世界のFX取引のまさに中心地がロンドンであり、その時間帯に取引が集中するのは当然と言えます。
参照:Bank for International Settlements “Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2022”
取引量が増えることで、ボラティリティ(価格変動率)が飛躍的に高まります。 例えば、東京時間では1日を通して30pips程度の値動きだった通貨ペアが、欧州時間に入ると数時間で100pips以上動くことも珍しくありません。この活発な値動きは、短期トレーダーにとっては利益を上げる大きなチャンスとなります。わずかな時間で目標利益に到達できる可能性があるため、スキャルピングやデイトレードとの相性が非常に良いのです。
一方で、値動きが活発になるということは、損失が拡大するスピードも速いことを意味します。そのため、この時間帯に取引する際は、厳格なリスク管理、特に損切り注文(ストップロス)を必ず設定することが不可欠です。
② トレンドが発生・転換しやすい
東京時間は、比較的参加者が少なく、様子見ムードが広がりやすいため、明確な方向感が出ずにレンジ相場(一定の値幅でのもみ合い)になる傾向があります。しかし、欧州勢が市場に参入してくると、この均衡が破られることが頻繁に起こります。
欧州のトレーダーは、アジア時間帯に形成された価格水準や、その間に発表されたニュース、経済指標を分析し、新たな視点で市場に臨みます。彼らが「現在の価格は割安だ」と判断すれば大規模な買い注文を入れ、「割高だ」と判断すれば売り注文を入れます。この大口のフローが、レンジ相場の上限(レジスタンスライン)や下限(サポートライン)を突破するきっかけとなり、明確なトレンド(一方向への継続的な動き)を発生させるのです。
例えば、東京時間にドル/円が150.00円から150.30円の狭いレンジで推移していたとします。欧州時間に入り、欧州勢が円売りの材料を見つけると、一斉に円売り・ドル買いを進め、レンジ上限の150.30円を力強くブレイク。その後、買いが買いを呼び、151.00円まで一気に上昇する、といったシナリオが典型的なパターンです。
また、トレンドの「転換」も起こりやすい特徴があります。東京時間でじりじりと上昇していたトレンドが、欧州時間に入ると一転して下落に転じる、といったケースです。これは「東京時間の流れはロンドン勢に否定されやすい」という市場のアノマリー(経験則)としても知られています。
③ 重要な経済指標が多く発表される
欧州時間には、ユーロ圏やイギリス、スイスなど、欧州各国の重要な経済指標が数多く発表されます。これらの指標は、各国の経済状況を示すバロメーターであり、その結果は為替レートに直接的な影響を与えます。
【欧州時間に発表される主な経済指標の例】
- ユーロ圏:
- ドイツ ZEW景況感指数: ドイツの機関投資家やアナリストの景気見通しを示す指標。ユーロ圏経済の先行指標として注目度が高い。
- ユーロ圏 消費者物価指数(HICP): ユーロ圏全体のインフレ率を示す最重要指標。欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定に直結する。
- ユーロ圏・ドイツ 製造業/サービス業PMI: 企業の購買担当者への調査から算出される景況感指数。景気の勢いを測る上で重視される。
- イギリス:
- 消費者物価指数(CPI): イギリスのインフレ動向を示す最重要指標。イングランド銀行(BOE)の金融政策に大きな影響を与える。
- 失業率・雇用統計: 景気の根幹である雇用情勢を示す指標。
- 小売売上高: 個人消費の強さを示し、景気動向を判断する材料となる。
これらの経済指標の発表時刻は、事前に経済指標カレンダーで確認できます。 発表前後は、市場参加者の思惑が交錯し、様子見ムードが広がることもありますが、発表された数値が市場予想と大きく乖離した場合、相場は一瞬で大きく動きます。例えば、予想を大幅に上回る良い結果が出ればその国の通貨は買われ、悪い結果が出れば売られます。
この瞬間的な大きな値動きを狙って利益を得ようとする「指標トレード」という手法もありますが、スプレッド(売値と買値の差)が急拡大したり、スリッページ(注文価格と約定価格のズレ)が発生しやすくなったりするなど、非常に高いリスクを伴います。初心者のうちは、重要な指標発表の時間帯は取引を避けるのが賢明でしょう。
④ 欧州関連通貨(ユーロ・ポンド)の取引が中心になる
欧州時間という名前の通り、この時間帯はユーロ(EUR)、イギリスポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)といった欧州通貨が主役となります。これらの通貨が絡む通貨ペア、特に世界で最も取引されているユーロ/ドル(EUR/USD)や、値動きの激しさで知られるポンド/ドル(GBP/USD)は、この時間帯に取引量がピークに達し、最もダイナミックな動きを見せます。
もちろん、ユーロ/円(EUR/JPY)やポンド/円(GBP/JPY)といったクロス円も、欧州通貨と日本円の組み合わせであるため、活発に取引されます。特にポンド/円はボラティリティが非常に高いことで有名で、ハイリスク・ハイリターンを好むトレーダーに人気があります。
この時間帯にトレードするなら、これらの欧州通貨ペアの値動きを注視することが基本戦略となります。オセアニア通貨である豪ドルやNZドルなども動きますが、主役はあくまで欧州通貨であり、関連ニュースや経済指標に最も素直に反応するのはこれらの通貨ペアです。
⑤ 東京時間の流れを引き継がず、逆の動きをすることがある
これは「② トレンドが発生・転換しやすい」とも関連しますが、欧州時間の特徴的なアノマリーとして「ロンドン・リバーサル(London Reversal)」、つまりロンドン勢が東京時間の流れをひっくり返す動きが挙げられます。
例えば、東京時間に特定の材料がないまま円安がじりじりと進んだとします。欧州勢は、その動きを「根拠の薄い、投機的な動き」と判断し、反対売買(この場合は円買い)を仕掛けてくることがあります。これをきっかけに、東京時間の上昇分をすべて打ち消すような急落が起こる、といった展開です。
この背景には、「ストップ狩り」と呼ばれる動きも関係していると言われます。東京時間の上昇トレンドを見て、多くのトレーダーが安値圏に損切り注文(ストップロス)を置きます。大口のプレーヤーは、このストップロスが溜まっている水準を狙って意図的に価格を下げ、損切り注文を誘発させます。損切り注文(買いポジションの損切りは売り注文)が連鎖的に発動することで、下落がさらに加速するというメカニズムです。
このため、東京時間のトレンドを鵜呑みにせず、欧州時間開始直後の動きを慎重に見極めることが重要です。東京時間の高値や安値が簡単に破られるのか、それとも反発するのかを確認してからエントリーすることで、「ダマシ」の動きに巻き込まれるリスクを減らすことができます。
FXの欧州時間(ロンドン時間)に取引するメリット
値動きが活発でダイナミックな欧州時間は、トレーダーにとって多くの魅力とメリットを提供します。この時間帯を主戦場とすることで、FX取引の効率を大きく高めることが可能です。
大きな利益を狙いやすい
欧州時間に取引する最大のメリットは、何と言っても大きな利益(キャピタルゲイン)を狙いやすいことです。その理由は、前述の通り、この時間帯が持つ圧倒的なボラティリティの高さにあります。
ボラティリティが高いということは、短時間で為替レートが大きく動くことを意味します。例えば、東京時間では1日で20~30pips動けば良い方だった通貨ペアが、欧州時間に入ると1時間で50pips、1日で100pips以上動くことも日常茶飯事です。
仮に、1万通貨の取引で50pipsの利益を獲得した場合、その利益は約5,000円になります。10万通貨であれば約50,000円です。値動きが小さければ、この利益を得るのに何時間も、あるいは何日もかかるかもしれませんが、欧州時間であれば数時間、時には数分で達成できる可能性があります。
このように、一度のトレードで獲得できる値幅が大きいため、少ない取引回数でも効率的に利益を積み重ねていくことが可能です。これは、トレードに多くの時間を割けない兼業トレーダーにとっても大きな利点と言えるでしょう。
短期トレード(スキャルピング・デイトレード)に向いている
活発な値動きは、スキャルピングやデイトレードといった短期売買のスタイルと非常に相性が良いです。
- スキャルピング: 数秒から数分という極めて短い時間で、数pips程度の小さな利益を何度も積み重ねていく手法です。値動きが活発な欧州時間では、エントリーチャンスが頻繁に訪れるため、スキャルピングを行うには最適な環境です。価格が常に動いているため、少しの値動きを捉えるだけで利益を確定させることができます。
- デイトレード: 数十分から数時間でポジションを決済し、その日のうちに取引を完結させる手法です。欧州時間では、明確なトレンドが発生しやすいため、そのトレンドに乗って数十pipsの利益を狙うデイトレードが非常に有効です。例えば、ロンドン市場のオープン直後に発生したトレンドに乗り、ニューヨーク時間の中盤までに決済するといった戦略が立てやすくなります。
逆に、数日から数週間にわたってポジションを保有するスイングトレードやポジショントレードを行う場合でも、欧州時間の値動きは重要です。なぜなら、大きなトレンドの初動は欧州時間に発生することが多いため、この時間帯にエントリーすることで、より有利な価格でポジションを持つことができるからです。
順張り(トレンドフォロー)戦略が有効に働きやすい
欧州時間は、東京時間のレンジ相場をブレイクし、一方向に力強く進むトレンド相場を形成しやすいという特徴があります。このため、発生したトレンドの方向に沿ってエントリーする「順張り(トレンドフォロー)」戦略が非常に有効に機能します。
FXの基本的なセオリーは「トレンドには逆らわない」ことであり、順張りは王道的な取引手法です。トレンドが発生している相場では、移動平均線、ボリンジャーバンド、MACDといったトレンド系のテクニカル指標が機能しやすくなります。
例えば、以下のようなシンプルな順張り戦略が考えられます。
- 東京時間の高値・安値を確認する。
- 欧州時間に入り、価格が東京時間の高値を明確に上抜ける(ブレイクアウトする)のを確認する。
- ブレイクアウトした方向に「買い」でエントリーする。
- 損切りは、ブレイクした高値の少し下に設定する。
- トレンドが継続する限り利益を伸ばし、勢いが弱まったところで利益を確定する。
このような戦略は、トレンドが発生しやすい欧州時間だからこそ、成功確率が高まります。レンジ相場が続きやすい東京時間で同じことをしようとしても、ブレイクアウトが「ダマシ」に終わってしまい、すぐに価格が戻ってきて損失を被るケースが多くなります。
明確なトレンドに乗ることで、リスクを限定しながら大きなリターンを狙える。これが、欧州時間で順張り戦略が推奨される理由です。
FXの欧州時間(ロンドン時間)に取引するデメリットと注意点
大きな利益が期待できる欧州時間ですが、その魅力的な側面の裏には、相応のリスクと注意すべき点が潜んでいます。メリットとデメリットは表裏一体であり、リスクを正しく理解し、対策を講じなければ、大切な資金を失うことになりかねません。
値動きが激しく損失リスクも高まる
欧州時間最大のメリットである「活発な値動き」は、同時に最大のデメリットにもなり得ます。利益が大きくなる可能性があるということは、裏を返せば損失も大きくなる可能性があるということです。
例えば、トレンドに乗ろうと買いでエントリーした直後に、相場が急反転して下落したとします。値動きが緩やかな相場であれば、損失が拡大する前に冷静に対処する時間的余裕がありますが、ボラティリティの高い欧州時間では、一瞬で含み損が膨らみ、あっという間に大きな損失が確定してしまう可能性があります。
このリスクを管理するために、何よりも重要なのが「損切り(ストップロス)注文」を徹底することです。「もう少し待てば価格が戻るかもしれない」という淡い期待は、欧州時間の激しい値動きの中では命取りになります。エントリーと同時に、許容できる損失額をあらかじめ計算し、その水準に必ず損切り注文を入れておく。これは、この時間帯で生き残るための絶対的なルールです。損切りをためらっている間に、強制ロスカット(証拠金が一定水準を下回り、強制的にポジションが決済されること)に至る危険性も、他の時間帯より格段に高まります。
「ダマシ」と呼ばれる予測不能な動きが発生しやすい
欧州時間、特にロンドン市場のオープン直後は、「ダマシ」と呼ばれるテクニカル分析のセオリーに反する動きが頻繁に発生します。
ダマシの典型的な例が「ブレイクアウトの失敗」です。例えば、東京時間の高値を上抜けて、上昇トレンドが発生したかのように見せかけた直後、すぐに失速して元のレンジ内に戻ってきてしまう、あるいは逆に急落してしまうといった動きです。このダマシに引っかかると、ブレイクアウトした瞬間に買いで飛び乗ったトレーダーは、一気に含み損を抱えることになります。
なぜダマシが起こるのか。その一因として、大口の機関投資家による「ストップ狩り」が挙げられます。彼らは、個人投資家がどこに損切り注文を置いているかをおおよそ把握しており、意図的にその水準まで価格を動かして損切りを誘発させ、その後の反対方向への大きな値動きで利益を得ようとします。
このダマシを完全に回避することは困難ですが、リスクを軽減するための対策はあります。
- ブレイクアウト直後に飛び乗らない: ブレイクした後に、価格が一度戻ってくる「押し目」や「戻り」を待ってからエントリーする。
- ローソク足の確定を待つ: 例えば1時間足でトレードしているなら、1時間足がブレイクした状態で確定するのを見てから判断する。
- 複数の時間足を確認する: 5分足ではブレイクしていても、1時間足や4時間足では依然としてレンジの中、ということもある。長期足のトレンドに逆らっていないかを確認する。
経済指標の発表時はスプレッドが広がりやすい
ユーロ圏やイギリスの重要な経済指標が発表される前後には、スプレッド(売値と買値の差)が通常時よりも大幅に広がる傾向があります。スプレッドはFX会社にとっての収益源であり、トレーダーにとっては取引コストです。
スプレッドが広がる理由は、指標発表によって相場がどう動くか予測困難になるため、為替レートを提示する銀行や金融機関(カバー先)がリスクを回避しようとするからです。市場の流動性(取引のしやすさ)が一時的に低下し、買いたい人と売りたい人のバランスが崩れるため、売値と買値の差を広げざるを得なくなるのです。
普段は0.2pipsのスプレッドが、指標発表時には5pipsや10pips、あるいはそれ以上に広がることもあります。この状態で取引を行うと、エントリーした瞬間に大きなマイナスからのスタートとなり、トレードが著しく不利になります。 また、このタイミングで損切り注文が執行されると、想定していた価格よりもはるかに悪いレートで決済されてしまうリスクもあります。
したがって、特に初心者のうちは、重要な経済指標の発表時刻(前後数十分を含む)は取引を控え、相場が落ち着くのを待つのが賢明な判断です。
スリッページが発生する可能性がある
スリッページとは、注文した価格と、実際に約定(取引が成立)した価格との間に生じるズレのことです。特に、相場の急変時にはスリッページが発生しやすくなります。
例えば、ドル/円を150.00円で買いの成行注文を出したにもかかわらず、注文がサーバーに届いて処理されるまでのコンマ数秒の間にレートが急騰し、150.02円で約定してしまう、といったケースです。この場合、トレーダーにとって0.02円(2pips)不利な価格で約定したことになり、これを「ネガティブスリッページ」と呼びます。
欧州時間は値動きが激しいため、このスリッページが発生する可能性が他の時間帯よりも高まります。特に、経済指標発表時や要人発言時など、注文が殺到する場面では顕著です。
スリッページを完全に防ぐことはできませんが、
- 約定力の高いFX会社を選ぶ
- 安定した高速なインターネット回線を使用する
- 相場の急変時は成行注文ではなく指値注文を活用する
といった対策で、その影響をある程度抑えることが可能です。
欧州時間(ロンドン時間)の取引におすすめの通貨ペア
欧州時間には、欧州関連の通貨ペアが主役となります。ボラティリティの高さや値動きの素直さなど、それぞれの通貨ペアに特徴があるため、自分のトレードスタイルやリスク許容度に合ったものを選ぶことが重要です。
通貨ペア | 通称 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
ユーロ/ドル (EUR/USD) | ユーロドル | ・世界No.1の取引量 ・流動性が高くスプレッドが狭い ・比較的素直なトレンドを形成しやすい |
・初心者 ・安定した環境で取引したい人 |
ポンド/ドル (GBP/USD) | ケーブル | ・ボラティリティが非常に高い ・投機的な値動きが多い ・トレンドが一方向に伸びやすい |
・短期で大きな利益を狙いたい中〜上級者 ・リスク管理が得意な人 |
ユーロ/円 (EUR/JPY) | ユーロ円 | ・ユーロ/ドルとドル/円の両方の影響を受ける ・トレンドが比較的はっきりしている ・日本人にも馴染み深い |
・ドルストレートとクロス円の両方を監視できる人 |
ポンド/円 (GBP/JPY) | ポン円 | ・FX通貨ペアの中でトップクラスのボラティリティ ・値動きが非常に激しく、ハイリスク・ハイリターン |
・スリルを求める上級者 ・徹底した資金管理ができる人 |
ユーロ/ドル (EUR/USD)
ユーロ/ドルは、世界で最も取引されている通貨ペアであり、「キング・オブ・カレンシーペア」とも呼ばれます。取引量が圧倒的に多いため流動性が非常に高く、その結果、スプレッドがFX通貨ペアの中で最も狭い水準に設定されているのが大きな魅力です。
欧州時間には、ユーロ圏と米国の両方の市場参加者が注目するため、取引が最高潮に達します。値動きは活発ですが、取引量の多さから比較的安定しており、大口の注文によっても価格が急激に飛びにくいという特徴があります。そのため、テクニカル分析が効きやすく、比較的素直なトレンドを形成しやすいと言われています。
これらの理由から、FX初心者の方が欧州時間で最初に取引する通貨ペアとして最もおすすめできます。まずはユーロ/ドルで欧州時間の値動きに慣れることから始めると良いでしょう。取引する際は、ユーロ圏と米国の金融政策や経済指標(特にインフレ率や雇用統計)に注目することが重要です。
ポンド/ドル (GBP/USD)
イギリスポンドと米ドルの組み合わせであるポンド/ドルは、その歴史的な背景から「ケーブル」という愛称で呼ばれています。この通貨ペアの最大の特徴は、ユーロ/ドルと比較してボラティリティが格段に高いことです。
ポンドは、かつて世界の基軸通貨であった名残から、現在でも投機的な資金が流入しやすく、値動きが非常に激しくなる傾向があります。英国の経済指標や政治的なニュース(特にブレグジット関連の話題など)に敏感に反応し、一方向に大きくトレンドが伸びることが多いです。
その激しい値動きは、短時間で大きな利益を得られるチャンスがある一方で、大きな損失を被るリスクも高いことを意味します。そのため、初心者にはやや扱いが難しい通貨ペアと言えます。取引に慣れてきた中級者以上の方で、高いボラティリティを活かしてダイナミックなトレードをしたい方に向いています。取引する際は、厳格な損切り設定が不可欠です。
ユーロ/円 (EUR/JPY)
ユーロと日本円を組み合わせたクロス円通貨ペアです。ユーロ/円の価格は、ユーロ/ドルとドル/円のレートを掛け合わせて算出されるため、その値動きはユーロと円、両方の強弱だけでなく、ドルの動向にも影響を受けます。
東京時間では日本の材料で、欧州時間ではユーロ圏の材料で動きやすく、一日を通して比較的取引チャンスが多いのが特徴です。トレンドも比較的はっきりと出やすい傾向があるため、順張り戦略が有効に働きやすい通貨ペアの一つです。
日本人トレーダーにとっては、ドル/円と並んで馴染み深く、情報も得やすいため人気があります。欧州時間にユーロ関連の経済指標が発表された際には、ユーロ/ドルと共によく動きます。ドルストレート(対ドル通貨ペア)とクロス円の値動きの連動性を理解しているトレーダーにおすすめです。
ポンド/円 (GBP/JPY)
FXの通貨ペアの中で、最もボラティリティが高い通貨ペアの一つとして知られているのが、このポンド/円です。一部のトレーダーからは、その殺人級の値動きから「殺人通貨」や「悪魔の通貨」といった物騒なニックネームで呼ばれることもあります。
値動きが激しいポンドと、比較的変動が穏やかな円を組み合わせているため、ボラティリティが相殺されず、非常に大きな価格変動を生み出します。1日に200pipsや300pips動くことも珍しくなく、まさにハイリスク・ハイリターンの代名詞と言える通貨ペアです。
この激しい値動きは、一度トレンドに乗れば莫大な利益をもたらす可能性がある一方で、一瞬の判断ミスが致命的な損失につながる危険性も秘めています。 そのため、初心者が安易に手を出すべきではありません。十分な経験と、徹底した資金管理・リスク管理能力を身につけた上級者向けの通貨ペアと言えるでしょう。
欧州時間(ロンドン時間)の取引で意識すべきポイント
欧州時間の特性を理解し、適切な通貨ペアを選んだ上で、さらに勝率を高めるためには、いくつかの重要なポイントを意識してトレードに臨む必要があります。ここでは、プロのトレーダーも実践している4つのポイントを解説します。
東京時間の高値と安値を確認する
これは欧州時間のトレードにおける最も基本的ながら、最も重要なテクニカル分析の一つです。東京時間の値動きは比較的穏やかで、多くの場合、特定の値幅内で上下するレンジ相場を形成します。この時に形成されたレンジの上限(高値、レジスタンスライン)と下限(安値、サポートライン)は、世界中のトレーダーが意識する重要な価格帯となります。
欧州勢が市場に参入してきた際、彼らはまずこの東京時間の高値・安値を試す動きを見せることが非常に多いです。
- ブレイクアウト戦略: 価格が東京時間の高値を力強く上抜けたら、上昇トレンドの発生と判断して「買い」で追随する。逆に、安値を下抜けたら、下降トレンドの発生と判断して「売り」で追随する。
- 反発狙いの逆張り戦略: 価格が東京時間の高値に到達したものの、上抜けできずに反落する動きを見せたら「売り」でエントリーする。逆に、安値で反発する動きを見せたら「買い」でエントリーする。
どちらの戦略を取るにせよ、欧州時間開始前に、必ずチャートに東京時間の高値と安値のラインを引いておくことが、トレードプランを立てる上での第一歩となります。
経済指標カレンダーを事前にチェックする
欧州時間には、ユーロ圏やイギリスの重要な経済指標が数多く発表されます。これらのイベントを知らずにトレードするのは、嵐が来るのを知らずに航海に出るようなものです。
トレードを始める前には、必ずその日に発表が予定されている経済指標をカレンダーで確認する習慣をつけましょう。経済指標カレンダーでは、以下の情報を確認できます。
- 発表時刻: 日本時間で何時に発表されるか。
- 対象国・地域: どの通貨に影響を与えるか。
- 指標の重要度: 通常、星の数(★★★など)で示される。重要度が高いほど、相場へのインパクトが大きい。
- 市場予想: アナリストなどが事前に予想した数値。
- 前回結果: 前回の発表時の数値。
特に、重要度が「高」または「★★★」の指標発表時は、相場が乱高下する可能性が非常に高いです。初心者のうちは、発表時刻の前後30分程度はポジションを持たず、様子見に徹するのが安全です。中級者以上であっても、この時間帯にトレードする際は、スプレッドの拡大やスリッページのリスクを十分に覚悟の上で臨む必要があります。
ニューヨーク時間と重なる時間帯を狙う
一日の中で最もFX取引が活発になるのは、欧州時間(ロンドン市場)とニューヨーク時間(ニューヨーク市場)が重なる、日本時間の午後9時頃から翌午前2時頃(夏時間)です。この時間帯は、世界の二大金融センターのプレーヤーが同時に取引に参加するため、取引量と流動性がピークに達します。
この「ゴールデンタイム」には、以下のような特徴があります。
- トレンドが加速しやすい: 欧州時間に発生したトレンドが、ニューヨーク勢の参入によってさらに勢いを増すことが多い。
- 値動きが大きい: 一日の中で最もボラティリティが高くなり、大きな値幅を狙いやすい。
- 重要な経済指標が発表される: アメリカの雇用統計や消費者物価指数(CPI)といった最重要指標がこの時間帯に発表されることが多い。
一日中チャートに張り付くことができないトレーダーは、この時間帯に絞ってトレードするだけでも、十分に効率的な取引が可能です。ただし、最もチャンスが多い時間帯であると同時に、最もリスクが高い時間帯でもあることを忘れてはなりません。値動きの速さについていけるよう、集中力を高めて臨む必要があります。
ロンドンフィキシングを意識する
「ロンドンフィキシング(通称:ロンフィク)」は、多くのトレーダーが意識する特殊な時間帯です。これは、ロンドン時間の午後4時、日本時間では冬時間で午前1時、夏時間で午前0時に行われる金の価格決定(値決め)のことを指しますが、この時間を基準に、多くの機関投資家や輸出入企業が当日の決済に使う為替レートを確定させます。
このため、ロンフィクの時間帯に向けて、実需(貿易決済など)に基づいたまとまった量の注文(フロー)が入ることがあります。例えば、月末のロンフィクでは、イギリスの輸入企業によるポンド売り・ドル買いや、日本の投資信託のリバランスに伴う円売りなど、特定の方向に大きな注文が集中する傾向があります。
この実需のフローに乗じて、ヘッジファンドなどが投機的な仕掛けをすることも多く、ロンフィクの前後で一時的に相場が急変動することがあります。 この動きは予測が難しく、短期的で一方的なものになることが多いため、基本的には注意が必要な時間帯です。しかし、月末や四半期末といった特定のタイミングでの値動きのパターン(アノマリー)を研究し、それをトレード戦略に組み込んでいる上級トレーダーもいます。
欧州時間(ロンドン時間)の取引が向いている人
欧州時間(ロンドン時間)は、そのダイナミックな特徴から、すべての人に向いているわけではありません。自身のライフスタイルや性格、トレードスキルと照らし合わせて、この時間帯が自分に合っているかを見極めることが大切です。
日本時間の夕方から深夜にトレードできる人
欧州時間が本格的に始まるのは、日本時間の夕方以降です。
- 夏時間: 午後4時頃~翌午前2時頃
- 冬時間: 午後5時頃~翌午前3時頃
この時間帯は、日中に仕事をしているサラリーマンや、家事・育児が一段落した主婦の方にとって、トレードに集中しやすい時間帯と言えます。仕事や日中の用事を終え、リラックスした状態でPCに向かい、世界で最も活発な市場で取引に参加することができます。
逆に、日中にしか時間が取れない方や、夜は早く就寝したいというライフスタイルの方には、欧州時間のコアタイムで取引することは難しいかもしれません。その場合は、比較的穏やかな東京時間での取引がメインとなるでしょう。自分の生活リズムに無理なく組み込めるかどうかが、まず最初の判断基準となります。
短期トレードで効率よく利益を狙いたい人
欧州時間は、その高いボラティリティから、スキャルピングやデイトレードといった短期売買で利益を追求するトレーダーにとって、まさに理想的な環境です。
- 短時間で結果を出したい。
- ポジションを翌日に持ち越したくない。
- 小さな値動きをコツコツと積み重ねるのが好き(スキャルピング)。
- 一日のトレンドに乗って大きな利益を狙いたい(デイトレード)。
このような志向を持つトレーダーにとって、値動きが少なく、エントリーチャンスが限られる東京時間は退屈に感じられるかもしれません。欧州時間であれば、常に市場が動いているため、取引機会に事欠きません。時間効率を重視し、アクティブに取引をしたい方には、欧州時間が最適な選択肢となります。
ボラティリティの高い相場で取引したい人
静かな相場よりも、荒々しく動く相場にこそ魅力を感じるというタイプのトレーダーもいます。価格が大きく動くということは、それだけ大きなリスクを伴いますが、同時に一攫千金のチャンスも眠っていると考えるからです。
このようなトレーダーにとって、欧州時間の激しい値動きは、スリリングでやりがいのある舞台となります。ただし、このタイプのトレーダーに絶対的に求められるのは、鉄の規律と徹底したリスク管理能力です。感情に流されて無謀なトレードを繰り返せば、あっという間に市場から退場させられてしまいます。
ボラティリティを味方につけるためには、
- 1回のトレードで許容できる損失額を明確に決めている。
- エントリーと同時に必ず損切り注文を入れる。
- 利益が出ても調子に乗らず、常に冷静な判断を心がける。
といった自己管理能力が不可欠です。高いリスクを許容できるだけでなく、そのリスクを的確にコントロールできるスキルを持つトレーダーこそが、欧州時間という戦場を制することができるのです。
まとめ
本記事では、FXの欧州時間(ロンドン時間)について、その基本から特徴、メリット・デメリット、具体的な取引戦略まで、幅広く解説してきました。
最後に、重要なポイントを改めて整理します。
- 欧州時間(ロンドン時間)とは: 日本時間の夕方から深夜にかけて、ロンドン市場を中心にヨーロッパ勢が活発に取引する時間帯。
- 最大の特徴: 世界最大の取引量を誇り、ボラティリティが非常に高く、トレンドが発生・転換しやすい。
- メリット: 大きな利益を狙いやすく、スキャルピングやデイトレードといった短期売買に向いている。明確なトレンドが発生しやすいため、順張り戦略が有効。
- デメリット: 値動きが激しい分、損失リスクも高い。「ダマシ」の動きや、経済指標発表時のスプレッド拡大、スリッページに注意が必要。
- 取引のポイント: 東京時間の高値・安値を意識し、経済指標カレンダーを事前に確認する。特にニューヨーク時間と重なる時間帯は最大のチャンスであり、最大の注意が必要。
結論として、FXの欧州時間は、トレーダーにとって最も収益機会の多い、魅力的な時間帯であることは間違いありません。しかし、その輝かしいチャンスの裏には、常に大きなリスクが潜んでいます。
この時間帯で成功を収めるためには、まずその特性を深く理解すること。そして、自身のライフスタイルやトレードスタイル、リスク許容度と照らし合わせ、適切な戦略と厳格なリスク管理のもとで臨むことが成功への唯一の道と言えるでしょう。
この記事で得た知識を元に、まずはデモトレードなどで欧州時間の値動きを実際に体験してみることをお勧めします。そして、自分なりの勝ちパターンを見つけ出し、ダイナミックな欧州市場でのトレードに挑戦してみてください。