FX(外国為替証拠金取引)を始める際、多くのトレーダーがまず一つのFX会社の口座を開設します。しかし、経験を積むにつれて「複数のFX口座を持つ」という戦略が非常に有効であることに気づきます。なぜ、わざわざ複数の口座を管理する必要があるのでしょうか。
一つの口座だけに依存することは、予期せぬシステムトラブルで取引機会を失ったり、特定の取引スタイルや通貨ペアに最適化されていない環境でトレードを続けたりするなど、見えないリスクや機会損失を抱えている状態ともいえます。
この記事では、FXで複数口座を持つことがなぜ重要なのか、その具体的なメリット・デメリットから、目的別の賢い使い分け方法、そして国内外のおすすめFX会社まで、網羅的に解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは複数口座戦略の本質を理解し、自分のトレードスタイルや目的に合わせた最適な口座ポートフォリオを構築できるようになるでしょう。 リスクを巧みに分散し、あらゆる相場環境で利益を追求するための知識を身につけ、FXトレーダーとしてもう一段階上のレベルを目指しましょう。
目次
そもそもFX口座は複数開設できるのか?
FX取引で複数の口座を持つという戦略を考える前に、まず「そもそもFX口座は複数開設できるのか?」という基本的な疑問を解消しておく必要があります。結論から言うと、いくつかのルールを守れば、複数のFX口座を持つことは誰にでも可能です。ここでは、その具体的なルールについて解説します。
同じFX会社で複数の口座開設は原則不可
まず理解しておくべき最も重要なルールは、「原則として、同じFX会社で一個人が複数の取引口座を開設することはできない」という点です。
例えば、AというFX会社で既に自分の名義で口座を持っている場合、同じA社で新たにもう一つ自分の口座を作ることは通常認められていません。これは、多くのFX会社が利用規約で定めているルールです。
この背景にはいくつかの理由があります。
第一に、顧客管理の観点です。一人の顧客が複数の口座を持つと、資金管理や取引履歴の追跡が複雑になり、FX会社側の事務手続きが煩雑になります。また、顧客自身にとっても、どの口座にどれだけの資金があり、トータルの損益がどうなっているのかを正確に把握するのが難しくなる可能性があります。
第二に、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税といった不正行為を防止する目的もあります。金融機関であるFX会社は、顧客の取引を厳格に監視する義務を負っています。一人が複数の口座を自由に開設できると、不正な資金移動の温床になるリスクがあるため、原則として「一人一口座」というルールを設けているのです。
ただし、このルールにはいくつかの例外が存在します。
- 個人口座と法人口座: 個人として開設する口座とは別に、自身が代表を務める法人名義で口座を開設することは可能です。
- 異なる取引プラットフォーム: 同じFX会社でも、例えば標準の取引ツール用の口座と、MT4(メタトレーダー4)専用の口座など、提供している取引システムやプラットフォームが異なる場合に、それぞれで口座開設を認めているケースがあります。
- 目的別のコース: 裁量取引コースと自動売買(システムトレード)コースのように、取引方法によってコースが分かれており、それぞれで口座開設が必要な場合もあります。
これらの例外はFX会社の方針によって異なるため、もし同じ会社で追加の口座開設を検討する場合は、必ずその会社の公式サイトで規約を確認するか、カスタマーサポートに問い合わせることが重要です。しかし、基本的には「同一FX会社内では、特別な理由がない限り追加の口座開設はできない」と覚えておくのが良いでしょう。
異なるFX会社なら何社でも開設可能
一方で、「異なるFX会社であれば、理論上は何社でも口座を開設することが可能」です。
A社に口座を持っていても、B社、C社、D社と、別のFX会社に口座を開設することには何の問題もありません。法律上の制限もなく、実際に多くの経験豊富なトレーダーがこの方法で複数の口座を管理・運用しています。
これが、本記事で解説する「FXの複数口座戦略」の基本的な前提となります。なぜなら、FX会社はそれぞれに独自の特徴や強みを持っているからです。
- スプレッド(売値と買値の差)が狭い会社
- スワップポイント(金利差調整分)が高い会社
- 高性能な分析ツールを提供している会社
- 約定力(注文が滑らずに成立する力)が高い会社
- 情報コンテンツやセミナーが充実している会社
これらの特徴は、一社がすべてを最高水準で満たしているわけではありません。そのため、複数のFX会社の口座を持つことで、それぞれの「良いとこ取り」をし、自分の取引戦略をより有利に進めることが可能になるのです。
ほとんどの国内FX会社では、口座の開設費用や維持手数料は無料です。そのため、コストを気にすることなく複数の口座を開設し、実際に使ってみて自分に合った会社を見つけるというアプローチも有効です。口座開設は、スマートフォンやパソコンからオンラインで申し込み、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)をアップロードするだけで完結する場合が多く、手続きも非常に簡単です。
このように、FX口座は「同じ会社では1つまで、違う会社ならいくつでも」というルールを理解することが、複数口座活用の第一歩となります。この前提知識をもとに、次の章では複数口座を持つことの具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
FXで複数口座を持つ7つのメリット
異なるFX会社でなら何社でも口座を開設できることがわかりました。では、実際に複数の口座を持つことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、FXトレーダーが複数口座を運用することで得られる7つの大きな利点を、具体例を交えながら詳しく解説します。
① サーバーダウンなど不測の事態に備えられる
FX取引を行う上で、最も避けたいリスクの一つが「取引したいときに取引できない」という状況です。これは、FX会社側のシステムトラブルによって引き起こされることがあります。
具体的には、以下のような事態が考えられます。
- サーバーダウン: アクセス集中やハードウェアの故障により、FX会社のサーバーが停止してしまう状態。ログインできず、発注も決済も不可能になります。
- システムメンテナンス: 定期的なメンテナンスのほか、緊急のメンテナンスが入ることもあります。メンテナンス中は取引ができません。
- DDoS攻撃: 悪意のある第三者から大量のデータを送りつけられ、サーバーが機能不全に陥るサイバー攻撃。
もし、あなたがたった一つのFX口座しか持っていなかった場合、このような不測の事態が発生するとどうなるでしょうか。例えば、重要な経済指標の発表時に大きな利益を狙えるチャンスが到来したにもかかわらず、サーバーダウンでログインできず、指をくわえて見ているしかありません。さらに深刻なのは、保有しているポジションを決済したい場合です。相場が急落しているのに決済注文が出せず、損失がどんどん膨らんでいくという悪夢のようなシナリオも考えられます。
しかし、複数のFX口座を持っていれば、このようなシステムリスクを効果的に分散できます。 A社のサーバーがダウンしても、すぐにB社の口座にログインして取引を再開できるからです。チャンスを逃さず新規ポジションを建てたり、保有ポジションのリスクヘッジとして反対売買を行ったり、あるいはA社と同じポジションをB社で決済注文(両建て決済)したりと、柔軟な対応が可能になります。
これは、FX取引における一種の「保険」と言えるでしょう。 自動車保険や火災保険と同じように、普段はその恩恵を感じることは少ないかもしれませんが、万が一の事態が発生したときに、あなたの資産を守るための重要なセーフティネットとなるのです。特に、数分、数秒の判断が損益を大きく左右する短期トレーダーにとって、このリスクヘッジは不可欠な戦略です。
② 取引のチャンスを逃さず利益を最大化できる
FX取引のコストには、実質的な手数料となる「スプレッド」があります。スプレッドは狭ければ狭いほど、トレーダーにとって有利です。多くのFX会社は平常時には非常に狭いスプレッドを提示していますが、その水準は会社によって微妙に異なります。
さらに重要なのは、相場の急変時におけるスプレッドの変動です。米国の雇用統計や各国の中央銀行による政策金利の発表など、相場が大きく動くイベントの前後では、スプレッドが通常時の数倍、場合によっては数十倍にまで広がることがあります。このスプレッドの広がり方は、FX会社のリスク管理方針によって大きく異なります。
ここで複数口座が真価を発揮します。複数のFX口座の取引ツールを同時に開き、その瞬間に最も有利なスプレッドを提示している会社を選んで取引することで、取引コストを最小限に抑え、利益を最大化できるのです。
例えば、ある経済指標発表後、ドル円のレートが急騰したとします。
- A社:スプレッドが平常時の0.2銭から5.0銭に拡大
- B社:スプレッドが平常時の0.3銭から2.0銭に拡大
- C社:スプレッドが平常時の0.2銭から1.0銭に拡大
この状況で10万通貨の取引を行う場合、C社で取引すればA社に比べて4,000円もコストを抑えられます((5.0銭 – 1.0銭) × 10万通貨 = 4,000円)。一回あたりの差は小さく感じるかもしれませんが、取引回数を重ねることで、この差は無視できない金額になります。
また、スプレッドだけでなく「約定力」も重要です。約定力とは、トレーダーが発注した価格で正確に注文が成立する能力のことです。約定力が低いと、注文した価格と実際に約定した価格がずれる「スリッページ」が発生しやすくなります。これも実質的なコスト増につながります。
複数の口座を実際に使ってみることで、平常時だけでなく、相場急変時における各社のスプレッドの広がり方や約定力の強さを体感的に比較できます。 そして、その時々の状況に応じて最適な口座を使い分けることで、よりシビアに利益を追求するトレードが可能になるのです。
③ 各社のキャンペーンを利用してお得に始められる
多くのFX会社は、新規顧客を獲得するために魅力的なキャンペーンを実施しています。これは、トレーダーにとって見逃せないメリットです。
キャンペーンの代表的な例としては、以下のようなものがあります。
- 新規口座開設キャンペーン: 口座を開設するだけで、数千円の現金やポイントがもらえる。
- 初回入金キャンペーン: 口座開設後、一定額以上を入金することでキャッシュバックが受けられる。
- 取引量キャンペーン: 口座開設から一定期間内に、規定の取引量を達成すると、数万円から数十万円のキャッシュバックがもらえる。
もし一つのFX会社しか利用しなければ、このキャンペーンの恩恵を受けられるのは一度きりです。しかし、複数のFX会社の口座を開設すれば、それぞれの会社のキャンペーンをすべて利用できます。
例えば、A社で口座開設&取引キャンペーンで20,000円、B社で5,000円、C社で10,000円のキャッシュバックを受けたとすると、合計で35,000円のボーナス資金を得ることができます。これは、自己資金に上乗せして取引の証拠金として使えるため、より余裕を持ったトレードを始められます。
特に、これからFXを始める初心者や、少額からスタートしたいトレーダーにとって、このキャンペーンボーナスは非常に大きな助けとなります。実質的にリスクゼロで得た資金でリアルトレードの経験を積むことができるからです。
ただし、取引量キャンペーンには注意が必要です。高額なキャッシュバックの条件として、非常に大きな取引量が設定されている場合があります。初心者がキャッシュバック目当てに無理な取引をすると、かえって大きな損失を出してしまうリスクもあります。キャンペーンの条件は必ず詳細まで確認し、自分の資金力やトレードスキルに見合ったものだけを狙うようにしましょう。
④ 取引スタイルごとに口座を使い分けられる
FXトレーダーと一言で言っても、その取引スタイルは様々です。ポジションを数秒から数分で決済する「スキャルピング」、数時間から1日で決済する「デイトレード」、数日から数週間保有する「スイングトレード」、数ヶ月以上保有する「長期投資」など、多岐にわたります。
そして、それぞれの取引スタイルによって、FX会社に求められるスペックは異なります。
- スキャルピング・デイトレード: 取引回数が多いため、スプレッドの狭さ、約定力の高さ、取引ツールの反応速度が最重要。
- スイングトレード・長期投資: ポジションを長期間保有するため、スワップポイントの高さ、会社の信頼性や信託保全の強固さが重要。
一つのFX会社が、すべてのスタイルにおいて最高のパフォーマンスを提供することは稀です。スプレッドは狭いがスワップは低い会社、スワップは高いがスプレッドは広めの会社など、各社に強みと弱みがあります。
そこで、複数の口座を取引スタイルごとに使い分けることで、それぞれのトレードの収益性を最大化できます。
- A口座(スキャルピング用): 業界最狭水準のスプレッドと高い約定力を誇る会社。
- B口座(スワップ狙いの長期投資用): 高金利通貨のスワップポイントが業界最高水準の会社。
このように口座を分けることで、短期取引ではコストを極限まで抑え、長期取引では金利収益を最大化するという、合理的なポートフォリオを組むことができます。また、損益管理の面でもメリットがあります。短期売買の損益と長期投資の損益が混ざらないため、それぞれの戦略のパフォーマンスを正確に評価し、改善につなげやすくなるのです。
⑤ 多様な取引ツールや分析情報を無料で使える
FX会社は、顧客に取引してもらうために、それぞれが工夫を凝らした独自の取引ツールや投資情報コンテンツを提供しています。これらは口座を開設すれば、基本的にすべて無料で利用できます。
- 取引ツール: PCにインストールするリッチクライアント版、ブラウザで使えるWeb版、外出先でも便利なスマートフォンアプリなど。操作性や搭載されているテクニカル指標の種類は会社によって様々です。
- 分析ツール: チャートの形状から将来の値動きを予測する「パターン分析ツール」や、他のトレーダーの売買動向がわかる「売買比率情報」など、ユニークなツールを提供している会社もあります。
- 情報コンテンツ: プロのアナリストによる市場レポート、経済ニュースの速報、初心者向けのオンラインセミナーなど、質の高い情報を提供している会社も多いです。
一つの口座しか持っていなければ、その会社が提供するツールと情報しか利用できません。もしそのツールの使い勝手が悪かったり、欲しい情報が得られなかったりしても、我慢して使い続けるしかありません。
しかし、複数の口座を持つことで、これらの多様なツールや情報をすべて無料で利用できるようになります。
- チャート分析は高機能なA社のPCツールで行う。
- 実際の取引は操作性が軽快なB社のスマホアプリで行う。
- 市場全体のトレンドはC社のアナリストレポートで確認する。
このように、各社の強みを「良いとこ取り」することで、より精度の高い相場分析と、快適な取引環境を両立させることが可能です。情報収集と分析はトレードの根幹をなす要素であり、利用できる武器(ツールや情報)が多ければ多いほど、戦いを有利に進められるのは言うまでもありません。
⑥ 通貨ペアの強みに合わせて最適な会社を選べる
FX会社が取り扱う通貨ペアの種類や、各通貨ペアに設定されているスプレッド、スワップポイントは、会社によって異なります。
特に、米ドル/円やユーロ/米ドルのようなメジャー通貨ペアは、どの会社も顧客獲得のためにスプレッドを極限まで狭く設定しており、大きな差はつきにくい傾向があります。しかし、英ポンド、豪ドル、NZドルなどが絡むクロス通貨や、トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドといった高金利通貨(エキゾチック通貨)になると、会社ごとの条件に大きな差が生まれます。
- A社はトルコリラ/円のスワップポイントが非常に高い。
- B社は南アフリカランド/円のスプレッドが他社より狭い。
- C社は他の会社が扱っていないポーランドズロチ/円などの珍しい通貨ペアを取引できる。
もしあなたが特定の通貨ペアをメインに取引したいと考えているなら、その通貨ペアの取引条件が最も有利な会社を選ぶのが合理的です。 複数の口座を持っていれば、取引したい通貨ペアに応じて、その都度最適な口座を使い分けることができます。
例えば、普段はA社で米ドル/円を取引しつつ、メキシコペソのスワップポイントを狙った長期投資を始めたいと思ったら、ペソのスワップが最も高いD社の口座を使う、といった戦略が取れます。これにより、あらゆる取引機会において、常に最も有利な条件でトレードを実行できるのです。
⑦ ゼロカットシステムで追証リスクを回避できる(海外FX)
これは主に海外FX業者を利用する場合のメリットですが、リスク管理において非常に重要です。
国内のFX会社では、相場の急変動によって口座残高を超える損失が発生した場合、トレーダーはその不足分を追加で入金する義務があります。これを「追証(おいしょう)」と呼びます。2015年のスイスフランショックのような歴史的な相場変動では、追証によって多額の借金を負ってしまったトレーダーもいました。
一方、多くの海外FX業者は「ゼロカットシステム」を採用しています。これは、口座残高を超える損失が発生しても、そのマイナス分をFX業者が負担してくれる仕組みです。つまり、トレーダーの損失は最大でも口座に入金した金額までとなり、追証が発生するリスクがありません。
このゼロカットシステムは、ハイレバレッジ取引と組み合わせることで真価を発揮します。数百倍から数千倍といった高いレバレッジをかけて少額の資金で大きな利益を狙う際も、「最悪でも入金額以上の損失はない」という安心感のもとでトレードに臨めます。
追証リスクのある国内FX口座と、ゼロカットシステムのある海外FX口座を併用することで、高度なリスク管理が可能になります。
- 国内FX口座: 安定した資産運用、低スプレッドでのスキャルピング、税制面の優遇(後述)を活かしたメイン口座として利用。
- 海外FX口座: 重要な経済指標発表時など、ボラティリティが高まるタイミングで、ゼロカットを前提としたハイリスク・ハイリターンな取引を行うサブ口座として利用。
このように、国内FXと海外FXを使い分けることで、守りのトレードと攻めのトレードを両立させ、リスクを限定しながら収益機会を追求するという、戦略の幅を大きく広げることができるのです。
FXで複数口座を持つ3つのデメリット
これまで複数口座の多くのメリットを解説してきましたが、当然ながらデメリットも存在します。これらのデメリットを正しく理解し、対策を講じることが、複数口座戦略を成功させるための鍵となります。ここでは、主な3つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
① 資金管理が複雑になる
これは複数口座を持つ上で最も大きなデメリットと言えるでしょう。口座の数が増えれば増えるほど、全体の資産状況を正確に把握することが難しくなります。
一つの口座であれば、その口座の残高と評価損益を見るだけで、自分の総資産がいくらなのかが一目瞭ว然です。しかし、例えばA社に50万円、B社に30万円、C社に20万円と資金を分散させている場合、それぞれの口座の状況を個別に確認し、合算しなければなりません。
特に問題となるのが、各口座の「証拠金維持率」の管理です。証拠金維持率は、ロスカット(強制決済)を避けるために非常に重要な指標です。複数の口座で同時にポジションを保有していると、それぞれの口座の証拠金維持率を常に監視する必要があり、管理が煩雑になります。
例えば、相場が急変して全体の含み損が増えた場合、どの口座の維持率が危険水域に近づいているのかを素早く把握し、追加入金やポジションの一部決済といった対応を取らなければなりません。この管理を怠ると、まだ余裕があると思っていた口座が、気づかないうちにロスカTットされていたという事態に陥りかねません。
また、各口座のIDやパスワードの管理も煩わしくなります。セキュリティの観点から、同じパスワードを使い回すのは危険です。口座ごとに異なる複雑なパスワードを設定し、それを安全に管理する手間が発生します。
対策として、スプレッドシートや資産管理アプリなどを活用して、すべての口座の情報を一元管理することが非常に有効です。 定期的に(例えば毎日、あるいは毎週)各口座の残高、保有ポジション、損益を記録し、総資産とトータルの損益を可視化する習慣をつけることで、このデメリットは大幅に軽減できます。
② 確定申告の手間が増える
FXで年間を通じて利益が出た場合、会社員であっても確定申告が必要です(給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合など)。
一つのFX口座しか利用していなければ、その会社から発行される「年間取引報告書」をもとに申告書を作成するだけで済み、手続きは比較的シンプルです。
しかし、複数のFX口座を利用している場合、すべての口座の損益を合算して申告する必要があります。 例えば、A社で100万円の利益、B社で30万円の損失、C社で10万円の利益が出たとすると、これらの損益をすべて合計した80万円(100 – 30 + 10)が課税対象の所得となります。
この計算を行うために、まず各社から年間取引報告書をすべて取り寄せなければなりません。オンラインで電子交付されることがほとんどですが、ダウンロードし忘れたり、紛失したりしないように管理する必要があります。そして、それぞれの報告書に記載された損益額を自分で集計する手間が発生します。
さらに複雑になるのが、国内FXと海外FXを併用している場合です。
- 国内FXの利益: 「申告分離課税」の対象となり、所得額にかかわらず税率は一律約20%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)。
- 海外FXの利益: 「総合課税」の対象となり、給与所得など他の所得と合算した上で、累進課税(所得が多いほど税率が高くなる、最大約55%)が適用されます。
この二つは税金の区分が異なるため、国内FXの損失と海外FXの利益を相殺する(損益通算する)ことはできません。 したがって、確定申告の際には、国内FXのグループと海外FXのグループで、それぞれ別々に損益を計算して申告する必要があり、手続きはかなり煩雑になります。
対策としては、まず年間取引報告書を年明け後すぐに各社からダウンロードし、一つのフォルダにまとめて保管しておくことです。 また、日頃から取引の損益を記録しておくことで、確定申告の時期に慌てずに済みます。税金の計算に不安がある場合は、税理士に相談するか、国税庁のウェブサイトや確定申告ソフトのガイドをよく読んで、正確な申告を心がけることが重要です。
③ 資金が分散して取引の効率が下がる場合がある
メリットとしてリスク分散を挙げましたが、これは裏を返せば「資金が分散する」ということであり、場合によってはデメリットにもなり得ます。
特に、運用資金があまり多くないトレーダーの場合、限られた資金を複数の口座に分けてしまうと、一つひとつの口座に入れられる証拠金の額が少なくなってしまいます。
例えば、総資金30万円のトレーダーが、3つの口座に10万円ずつ資金を分けたとします。この場合、1つの口座で持てるポジションのサイズ(ロット数)は、30万円を1つの口座に集中させている場合に比べて小さくなります。大きなチャンスが到来しても、証拠金不足で十分な大きさのポジションを建てられず、得られるはずだった利益を逃してしまう可能性があるのです。
また、証拠金が少ないと、わずかな含み損でも証拠金維持率が大きく低下し、精神的なプレッシャーが大きくなったり、早期のロスカットにつながったりするリスクもあります。レバレッジを効かせた取引では、ある程度の余裕を持った証拠金が安定したトレードの基盤となります。
このデメリットは、トレーダーの資金規模に大きく依存します。数百万円、数千万円といった潤沢な資金があれば、複数の口座に分散しても、それぞれの口座で十分な取引が可能です。しかし、数十万円程度の資金でFXを始める初心者の場合は、まず一つのメイン口座に資金を集中させ、そこで取引経験と資金を増やしてから、徐々にサブ口座を追加していくというステップを踏む方が賢明かもしれません。
リスク分散と資金効率はトレードオフの関係にあります。自分の資金力とトレード戦略をよく考え、最適なバランスを見つけることが重要です。
【目的別】FX複数口座の賢い使い分け・活用術
FXで複数の口座を持つメリットとデメリットを理解したところで、次はその具体的な活用方法、つまり「賢い使い分け」について掘り下げていきましょう。ただやみくもに口座を増やすだけでは、管理が煩雑になるだけです。目的を明確にし、それぞれの口座に役割を与えることが、複数口座戦略を成功させる秘訣です。
メイン口座とサブ口座で役割を分ける
最もシンプルで基本的な使い分けが、「メイン口座」と「サブ口座」に役割を分ける方法です。これは、どんなトレーダーにもおすすめできる王道の戦略です。
- メイン口座の役割:
- 資金の集中: 運用資金の大部分(例えば7〜8割)をこの口座に集約します。
- 日常の取引: 主な取引はこの口座で行います。
- 選定基準: スプレッド、約定力、取引ツールの操作性、信頼性など、総合的なバランスに優れたFX会社を選びます。自分が最も使いやすいと感じる口座をメインに据えるのが良いでしょう。
- サブ口座の役割:
- リスクヘッジ: メイン口座でシステム障害が発生した際のバックアップとして機能します。
- 特定目的での利用: キャンペーンの利用、特殊な通貨ペアの取引、新しい手法のテストなど、限定的な目的で使います。
- 選定基準: メイン口座にはない強み(例えば、特定通貨ペアのスワップが高い、ユニークな分析ツールがあるなど)を持つ会社を選びます。複数あっても構いませんが、まずは1〜2社のサブ口座から始めるのが管理しやすいでしょう。
この方法の最大の利点は、資金管理の複雑さを緩和できる点にあります。普段はメイン口座の管理に集中し、サブ口座は必要なときだけ利用するため、頭の中が整理されやすくなります。まずはこの「メインとサブ」という考え方を基本として、自分の戦略に合わせて他の使い分け術を組み合わせていくのがおすすめです。
取引スタイル(短期・長期)で使い分ける
トレーダーの取引スタイルによって、FX会社に求める最適な条件は大きく異なります。自分の取引スタイルが明確な場合は、それに合わせて口座を使い分けることで、パフォーマンスの向上が期待できます。
スキャルピング・デイトレード用口座
数秒から数時間で売買を完結させる短期売買では、一回あたりの利益(pips)が小さいため、取引コストが収益に与える影響が非常に大きくなります。
- 最重要視するポイント:
- スプレッドの狭さ: ドル円0.2銭、ユーロ円0.4銭など、主要通貨ペアのスプレッドが業界最狭水準であることが絶対条件です。
- 約定力の高さ: 注文が滑る「スリッページ」や、注文が通らない「約定拒否」が少ないことが重要です。特に経済指標発表時など、値動きが激しい場面での安定性が求められます。
- 取引ツールの性能: チャートの描画速度が速く、ワンクリック注文などスピーディーな発注が可能なツールが必須です。
- スキャルピングの公認: 一部のFX会社は、サーバーに負荷をかけるスキャルピングを規約で禁止または制限している場合があります。「スキャルピングOK」を公言している会社を選ぶと安心です。
短期売買用の口座は、まさに「コンマ1秒、コンマ1銭を争う世界」で戦うための武器です。 スワップポイントなどはほとんど気にする必要はなく、とにかく取引コストとスピードに特化した会社を選びましょう。
スイング・長期投資用口座
数日から数ヶ月、あるいは数年にわたってポジションを保有する長期的なトレードでは、短期的な値動きよりも、異なる視点が重要になります。
- 最重要視するポイント:
- スワップポイントの高さ: ポジションを翌日に持ち越すことで得られるスワップポイントは、長期投資における重要な収益源です。特にメキシコペソやトルコリラなどの高金利通貨を扱う場合、スワップポイントの水準はFX会社によって大きな差があるため、徹底的に比較検討する必要があります。
- 信託保全の信頼性: 長期間にわたって大切な資金を預けるため、FX会社が倒産した場合でも資産が保護される「信託保全」が完備されていることが絶対条件です。国内FX業者は法律で義務付けられていますが、その保全スキームまで確認するとより安心です。
- 情報コンテンツの充実度: 長期的な視点で市場を分析するためのファンダメンタルズ情報、アナリストレポート、経済カレンダーなどが充実している会社が役立ちます。
長期投資用の口座は、短期的なノイズに惑わされず、どっしりと構えて資産を育てるための土台です。 日々のスプレッドのわずかな差よりも、長期的に受け取れるスワップの合計額や、会社の信頼性を優先して選びましょう。
取引する通貨ペアで使い分ける
FX会社によって、得意とする通貨ペア、つまり有利な条件を提示している通貨ペアは異なります。自分が取引する通貨ペアに合わせて口座を使い分けるのは、非常に合理的で効果的な戦略です。
- A社(メジャー通貨用): 米ドル/円、ユーロ/米ドル、ユーロ/円など、取引量が最も多いメジャー通貨ペアに特化。これらの通貨ペアのスプレッドが業界最狭の会社を選びます。
- B社(高金利通貨用): メキシコペソ/円、南アフリカランド/円、トルコリラ/円など、スワップポイント狙いの高金利通貨に特化。スワップポイントが業界最高水準の会社を選びます。スプレッドも併せて確認することが重要です。
- C社(クロス円・その他通貨用): 英ポンド/円、豪ドル/円といった値動きの激しい通貨や、他の会社では扱っていないようなマイナー通貨(ポーランドズロチ、チェココルナなど)の取引に特化。これらの通貨ペアのスプレッドが狭く、品揃えが豊富な会社を選びます。
このように、各通貨ペアの「専門店」を持つようなイメージで口座を構築することで、どの通貨ペアを取引する際にも、常に最高の条件で臨むことができます。特に、複数の通貨ペアを組み合わせてポートフォリオを組んでいるトレーダーにとっては、必須の戦略と言えるでしょう。
裁量トレード用と自動売買(EA)用で使い分ける
取引手法には、自分自身の判断で売買を行う「裁量トレード」と、プログラムに取引を任せる「自動売買(システムトレード)」があります。この二つは、口座に求められる機能が全く異なります。
- 裁量トレード用口座:
- 求められる機能: チャートの分析機能(テクニカル指標の豊富さ、描画ツールの使いやすさ)、最新ニュースの配信速度、直感的な操作性などを重視します。スマホアプリの使い勝手も重要な選定基準です。
- 自動売買(EA)用口座:
- 求められる機能: 世界標準のプラットフォームであるMT4(メタトレーダー4)またはMT5(メタトレーダー5)に対応していることが大前提です。EA(Expert Advisor)と呼ばれる自動売買プログラムは、主にMT4/MT5上で動作するためです。
- また、24時間稼働させるEAのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、スプレッドの狭さとサーバーの安定性が極めて重要になります。一部のFX会社では、自宅のPCを落としてもEAを稼働させ続けられるVPS(仮想専用サーバー)を無料で提供している場合があり、これも大きなメリットになります。
裁量トレードと自動売買を同じ口座で行うと、損益管理が混在してしまい、どちらのパフォーマンスが良いのか評価しづらくなります。口座を分けることで、それぞれの戦略の成績を明確に把握し、改善点を見つけやすくなるというメリットもあります。
国内FXと海外FXで使い分ける
リスク許容度や求めるリターンの大きさによって、国内FXと海外FXを戦略的に使い分けることも有効です。両者は特徴が大きく異なるため、組み合わせることでトレードの幅が格段に広がります。
項目 | 国内FX | 海外FX |
---|---|---|
レバレッジ | 最大25倍 | 数百倍〜数千倍(無制限も) |
追証 | あり | なし(ゼロカットシステム) |
スプレッド | 非常に狭い | 国内よりは広め |
ボーナス | 限定的 | 非常に豊富 |
信頼性 | 信託保全が義務 | ライセンスや分別管理で判断 |
税制 | 申告分離課税(一律約20%) | 総合課税(累進課税) |
この違いを踏まえた使い分け例は以下の通りです。
- 国内FX口座の役割:
- 安定運用・主力口座: 資金の大部分を預け、低スプレッドを活かしたスキャルピングや、信託保全の安心感のもとでのスイング・長期トレードを行います。税制面でも有利なため、安定的に利益を積み重ねていくためのベースキャンプとなります。
- 海外FX口座の役割:
- ハイリスク・ハイリターン用口座: 豊富なボーナスやハイレバレッジを活用し、少額の資金で大きな利益を狙います。重要な経済指標発表時など、相場の大きな変動が予想される場面で、ゼロカットシステムを「保険」として活用し、積極的に攻めることができます。「負けても入金額まで」と割り切れる資金で運用するのが鉄則です。
このように、「守りの国内FX」と「攻めの海外FX」を組み合わせることで、リスクをコントロールしながら、あらゆる相場局面で利益を追求する、バランスの取れたトレード戦略を構築できます。ただし、税制の違いは常に念頭に置いておく必要があります。
複数口座の開設におすすめの国内FX会社7選
ここでは、複数口座戦略を実践する上でおすすめの国内FX会社を7社、それぞれの特徴とともに紹介します。各社に強みがあるため、自分の目的や取引スタイルに合わせて組み合わせてみましょう。
FX会社名 | 特徴 | 最小取引単位 | 通貨ペア数 | 信託保全 |
---|---|---|---|---|
GMOクリック証券「FXネオ」 | 業界トップクラスの取引高。低スプレッド・高機能ツールで総合力が高い。メイン口座向き。 | 1,000通貨 | 20ペア | 三井住友銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、日証金信託銀行 |
SBI FXトレード | 1通貨から取引可能。超少額から始めたい初心者や、細かなロット調整をしたい中上級者に最適。 | 1通貨 | 34ペア | 三井住友銀行、みずほ信託銀行 |
外為どっとコム「外貨ネクストネオ」 | 情報コンテンツが圧倒的に豊富。初心者向けセミナーやレポートが充実し、学習しながら取引できる。 | 1,000通貨 | 30ペア | 三井住友銀行、みずほ信託銀行 |
みんなのFX | 高金利通貨のスワップポイントが業界最高水準。スワップ狙いの長期投資に強み。 | 1,000通貨 | 34ペア | 三井住友銀行 |
DMM FX | シンプルで直感的なツールが初心者から人気。LINEでのカスタマーサポートも手厚い。 | 10,000通貨 | 21ペア | 日証金信託銀行 |
松井証券 | 1通貨から取引可能。レバレッジを1倍、5倍、10倍、25倍から選択でき、リスク管理しやすい。 | 1通貨 | 20ペア | 三井住友銀行 |
ヒロセ通商「LION FX」 | 約定力に定評があり、スキャルピングを公認。短期トレーダーに人気。食品キャンペーンもユニーク。 | 1,000通貨 | 54ペア | 三井住友銀行 |
*上記の情報は2024年5月時点の各社公式サイトの情報に基づいています。最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。 |
① GMOクリック証券「FXネオ」
総合力が高く、どんなトレーダーにもおすすめできるメイン口座の最有力候補です。FX取引高は長年にわたり国内トップクラスを維持しており、その信頼性は抜群です(参照:GMOクリック証券公式サイト)。スプレッドは業界最狭水準で安定しており、取引コストを抑えたいトレーダーの期待に応えます。PC版取引ツール「はっちゅう君FX+」やスマホアプリは、高機能でありながら直感的な操作が可能で、初心者から上級者まで幅広く支持されています。まずは手堅いメイン口座を持ちたい、という場合に最初に検討すべき一社です。
② SBI FXトレード
最大の魅力は、わずか1通貨単位から取引できる点です(参照:SBI FXトレード公式サイト)。多くのFX会社が1,000通貨や10,000通貨を最小単位とする中、数円〜数十円の証拠金でリアルトレードを始められる手軽さは、特に初心者にとって大きなメリットです。デモトレードでは得られない本番の緊張感を、極めて低いリスクで体験できます。また、スプレッドも業界最狭水準を誇るため、少額資金でコツコツと利益を積み重ねたいトレーダーや、ポートフォリオの微調整などで細かなロット管理をしたい上級者のサブ口座としても非常に有用です。
③ 外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
情報力で選ぶなら、外為どっとコムが際立っています。 各分野の専門家による詳細な市場レポートや今後の見通し、リアルタイムでのニュース配信、初心者向けのオンラインセミナーなど、トレードの判断材料となる情報コンテンツが圧倒的に充実しています(参照:外為どっとコム公式サイト)。ただ取引するだけでなく、FXに関する知識を深め、分析力を高めたいという学習意欲の高いトレーダーにとっては、最高の環境と言えるでしょう。情報収集用のサブ口座として持っておくだけでも価値があります。
④ みんなのFX
スワップポイントを狙った長期投資を考えるなら、「みんなのFX」は外せない選択肢です。 特にメキシコペソ/円やトルコリラ/円といった高金利通貨ペアにおいて、業界最高水準のスワップポイントを提供していることで知られています(参照:みんなのFX公式サイト)。スワップカレンダーで将来の付与日数も確認できるため、計画的な長期運用が可能です。また、スプレッドも主要通貨ペアで狭く設定されており、短期から長期まで幅広いニーズに対応できるバランスの良さも魅力です。スワップ専用口座として活用するのがおすすめです。
⑤ DMM FX
「シンプルで分かりやすい」を追求したサービスが特徴で、特にFX初心者に人気があります。PC取引ツールもスマホアプリも、複雑な機能を削ぎ落とし、直感的に操作できるデザインになっています(参照:DMM.com証券公式サイト)。また、平日24時間の電話サポートに加えて、業界では珍しいLINEでの問い合わせにも対応しており、困ったときに気軽に相談できる手厚いサポート体制が安心感につながっています。これからFXを始める方が、最初に操作を覚える口座として適しています。
⑥ 松井証券
老舗の証券会社である松井証券が提供するFXサービスは、リスク管理を重視するトレーダーにとって非常に魅力的です。1通貨単位からの取引に対応していることに加え、最大の特色はレバレッジを1倍、5倍、10倍、25倍の4つのコースから任意に選択できる点です(参照:松井証券公式サイト)。「まずはレバレッジ1倍(外貨預金のような感覚)で始めて、慣れてきたら5倍、10倍とステップアップしていく」といった使い方が可能です。自分のリスク許容度に合わせてレバレッジを細かくコントロールしたい慎重派のトレーダーに最適な口座です。
⑦ ヒロセ通商「LION FX」
スキャルピングやデイトレードといった短期売買をメインに行うトレーダーから絶大な支持を集めています。その理由は、注文が滑りにくいと評判の高い約定力と、短期売買の代名詞であるスキャルピングを公式に歓迎している点にあります(参照:ヒロセ通商公式サイト)。取引ツールも短期売買に特化した機能が充実しており、まさに「勝つ」ための環境が整っています。また、毎月開催されるユニークな食品キャンペーンも有名で、取引を楽しみながら行える点も人気の秘密です。短期売買専用の口座として、その性能を最大限に活かすのが良いでしょう。
複数口座の開設におすすめの海外FX会社3選
次に、ハイレバレッジやゼロカットシステムといった国内FXにはない魅力を持ち、複数口座戦略の幅を広げる海外FX会社を紹介します。海外FX業者は日本の金融庁の登録を受けていないため、利用は自己責任となりますが、その特性を理解して活用すれば強力な武器となります。
FX会社名 | 最大レバレッジ | ゼロカット | ボーナス | 日本語サポート |
---|---|---|---|---|
XM Trading | 1,000倍 | あり | 口座開設・入金ボーナスが豊富 | 充実(Webサイト、メール、ライブチャット) |
Exness | 無制限(条件あり) | あり | なし(低スプレッドに注力) | 充実(Webサイト、メール、ライブチャット) |
HFM(旧HotForex) | 2,000倍 | あり | 口座開設・入金ボーナスが豊富 | 充実(Webサイト、メール、電話) |
*上記の情報は2024年5月時点の各社公式サイトの情報に基づいています。最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。 |
① XM Trading
日本人トレーダーからの知名度と人気が最も高い海外FX業者の一つです。その理由は、手厚いボーナスキャンペーンにあります。口座を開設するだけでもらえる「口座開設ボーナス」や、入金額に応じて付与される「入金ボーナス」が非常に充実しており、自己資金を抑えてトレードを始めることができます(参照:XM Trading公式サイト)。最大1,000倍のレバレッジとゼロカットシステムも完備。日本語のウェブサイトやカスタマーサポートも質が高く、海外FXが初めての人でも安心して利用できる環境が整っています。ボーナスを活用してハイレバトレードを試してみたい場合の最初の選択肢として最適です。
② Exness
「レバレッジ無制限」という業界でも突出した特徴を持つ業者です(一定の条件を満たす必要あり)。これにより、理論上は極めて少ない証拠金で非常に大きなポジションを持つことが可能になります。また、ロスカット水準が0%であるため、証拠金が尽きるギリギリまでポジションを保有できる点も、短期のハイレバトレーダーにとっては大きな魅力です(参照:Exness公式サイト)。ボーナスキャンペーンがない代わりに、スプレッドを極限まで狭くすることに注力しており、取引コストを重視するトレーダーにも支持されています。資金管理を徹底できる上級者が、そのスペックを最大限に活かすための口座と言えるでしょう。
③ HFM(旧HotForex)
2012年からサービスを提供する老舗の海外FX業者で、世界中に多くの顧客を抱えています。最大2,000倍のハイレバレッジと、充実したボーナスプログラムが魅力です(参照:HFM公式サイト)。特に、複数の口座タイプを提供しており、トレーダーのスタイルに合わせて「低スプレッド特化型」や「ボーナス重視型」などを選べる柔軟性があります。取引プラットフォームもMT4/MT5に加えて、独自のHFMプラットフォームを提供しており、選択肢の幅が広いのも特徴です。XM Tradingと同様に、ボーナスを活かしたトレードに適していますが、より多様な口座タイプから選びたい場合に検討すると良いでしょう。
複数口座を持つ際の注意点と対策
複数口座を効果的に活用するためには、デメリットとして挙げた「資金管理の複雑さ」や「確定申告の手間」といった課題に、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。ここでは、その具体的な注意点と対策を解説します。
資金管理をシンプルにするコツ
複数の口座に資金が散らばると、全体の資産状況が把握しにくくなります。これを放置すると、意図しないロスカットや機会損失につながりかねません。以下の方法で、資金管理をできるだけシンプルに保ちましょう。
取引履歴や資産状況をツールで一元管理する
最も効果的な対策は、すべての口座情報を一つの場所で管理・可視化することです。
特別なアプリを使わなくても、GoogleスプレッドシートやExcelで簡単に管理表を作成できます。
- 作成例:
- 行に日付、列に各FX会社名(A社、B社、C社…)、総資産、前日比などを設定します。
- 毎日または毎週決まった時間に、各口座の残高や評価損益を転記します。
- 簡単な関数を使えば、総資産や日々の増減を自動で計算・グラフ化できます。
この作業を習慣化することで、「今、自分の全財産はいくらで、どの口座がどれくらいのリスクを抱えているのか」が一目でわかるようになります。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が、長期的に安定した運用を行うための土台となります。また、複数のMT4/MT5口座の情報をまとめて表示できるサードパーティ製のツールやアプリも存在するため、そういったものを活用するのも良いでしょう。
定期的に資金をメイン口座に集約する
サブ口座は特定の目的(キャンペーン利用、高スワップ通貨の取引など)で利用することが多いですが、取引が完了したり、利益が一定額に達したりした場合は、その資金を放置しないようにしましょう。
「毎週末」や「月末」など、自分でルールを決め、サブ口座で得た利益や余剰資金をメイン口座に移動させることをおすすめします。これにより、資金の大部分が常にメイン口座にある状態を維持でき、資産の全体像を把握しやすくなります。また、メイン口座の証拠金が増えることで、より安定した取引が可能になるというメリットもあります。
確定申告の手間を減らす方法
複数のFX口座を利用すると、確定申告の際に損益の計算が煩雑になります。しかし、事前の準備と正しい知識があれば、スムーズに進めることが可能です。
年間の取引報告書を早めに準備する
確定申告の期間(通常2月16日〜3月15日)が始まってから慌てて書類を探すことのないよう、準備は早めに行いましょう。
年が明けたら、1月中には利用しているすべてのFX会社から「年間取引報告書」または「年間損益報告書」をダウンロードし、一つのフォルダにまとめて保管しておきましょう。 多くのFX会社では、会員ページからPDF形式でダウンロードできます。会社によってはダウンロードできる期間が限られている場合もあるため、早めの対応が肝心です。
損益通算を忘れずに行う
これは節税において非常に重要なポイントです。複数の国内FX口座間では、利益と損失を相殺することができます。これを「損益通算」と呼びます。
- 具体例:
- A社(国内FX)で年間100万円の利益
- B社(国内FX)で年間30万円の損失
- この場合、課税対象となる所得は 100万円 – 30万円 = 70万円 となります。
もし損益通算をせず、A社の利益100万円だけで申告してしまうと、本来よりも多くの税金を支払うことになってしまいます。複数の口座で取引している場合は、必ずすべての損益を合算して申告してください。
注意点として、前述の通り、税金の区分が異なる国内FX(申告分離課税)と海外FX(総合課税)の間では損益通算はできません。 このルールは必ず覚えておきましょう。
FX会社の信頼性と信託保全を確認する
複数の口座を持つということは、それだけ多くの金融機関に自分の資産を預けるということです。したがって、各社の信頼性、特に資産の保全方法をしっかりと確認することが極めて重要になります。
国内のFX会社は、金融商品取引法によって「信託保全」が義務付けられています。 これは、顧客から預かった証拠金などの資産を、FX会社の自己資産とは明確に区分し、信託銀行などの第三者機関に預託・管理する制度です。
これにより、万が一FX会社が倒産するようなことがあっても、顧客の資産は保全され、原則として全額が返還されます。 複数の国内FX口座を開設する際は、各社がどの信託銀行を利用して信託保全を行っているかを公式サイトで確認しておくと、より安心感が増すでしょう。
一方、海外FX業者は日本の法律の管轄外にあるため、この信託保全は義務付けられていません。 しかし、信頼性の高い大手業者の多くは、顧客資金を会社の運転資金とは別に管理する「分別管理」を徹底していたり、万が一の際に顧客資産を補償するための民間の賠償責任保険に加入していたりします。
海外FX業者を選ぶ際は、レバレッジやボーナスといった魅力的な条件だけでなく、どこの国の金融ライセンス(例:キプロス証券取引委員会(CySEC)、セーシェル金融サービス庁(FSA)など)を取得しているか、資産保全についてどのような対策を講じているかを必ず確認し、信頼できる業者を慎重に選ぶようにしましょう。
FXの複数口座に関するよくある質問
最後に、FXの複数口座に関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。
FX会社ごとに確定申告は必要ですか?
いいえ、その必要はありません。 確定申告は、FX会社ごとに行うのではなく、1年間(1月1日から12月31日まで)のすべてのFX取引による損益を合算し、一つの申告書にまとめて税務署に提出します。
例えば、3社の国内FX口座を利用している場合、それぞれの会社から発行される「年間取引報告書」を用意し、そこに記載されている損益額をすべて足し合わせます(利益はプラス、損失はマイナスとして計算)。その合計額が、あなたのその年のFXによる所得(または損失)となり、それを申告書に記入します。手続きが会社ごとに分かれるわけではないので、ご安心ください。
複数口座を持つと税金で不利になりますか?
いいえ、基本的には不利になることはなく、むしろ有利になる場合があります。
不利にならない理由は、国内FXの利益に対する税率(申告分離課税)が所得額にかかわらず一律約20%だからです。利益が1つの口座に集中していても、複数の口座に分散していても、合計利益額が同じであれば、支払う税金の額は変わりません。
そして、有利になる場合があるのは、前述した「損益通算」が可能だからです。複数の国内FX口座のうち、ある口座では利益が出て、別の口座では損失が出た場合、これらを相殺して課税対象となる利益を減らすことができます。これは、複数口座を持つからこそ活用できる節税メリットです。
ただし、国内FXと海外FXを併用している場合は注意が必要です。海外FXの利益は総合課税(累進課税)の対象となり、国内FXの損失と相殺することはできません。この税制の違いを理解していないと、想定外の税負担が発生する可能性があるため、その点だけは不利に働くリスクがあると言えます。
複数口座の開設に審査はありますか?
はい、あります。 FX口座を開設する際には、国内・海外を問わず、すべてのFX会社で必ず審査が行われます。これは、顧客が証拠金取引のリスクを理解し、損失を被った場合に生活に支障が出ないかなどを判断するために法律で定められている手続きです。
審査基準は各社で異なり、公表されていませんが、一般的に以下の項目がチェックされると言われています。
- 年齢(多くの会社で20歳以上75歳未満など)
- 年収や勤務先などの職業情報
- 金融資産の状況
- 投資経験の有無
ただし、審査はそれほど厳しいものではありません。 安定した収入があり、一定の金融資産(数十万円程度でも可)があれば、ほとんどの場合で審査に通ります。すでに一つの口座を持っているからといって、二つ目の口座の審査が厳しくなるということも基本的にはありません。
万が一、あるFX会社で審査に落ちてしまったとしても、他の会社では審査に通る可能性は十分にあります。諦めずに、別の会社に申し込んでみることをおすすめします。
まとめ
本記事では、FXで複数の口座を持つ必要性について、メリット・デメリット、具体的な活用術から注意点まで、多角的に解説してきました。
改めて重要なポイントを整理すると、FXで複数口座を保有することは、単なる選択肢の一つではなく、リスクを管理し、収益機会を最大化するための極めて有効な戦略であると言えます。
複数口座を持つ主なメリット:
- システム障害への備え(リスク分散)
- 有利なレートでの取引(コスト削減・利益最大化)
- お得なキャンペーンの複数利用
- 取引スタイルや通貨ペアに合わせた最適化
- 多様なツールや情報の無料活用
- ゼロカットによる追証リスクの回避(海外FX)
これらのメリットは、あなたのトレードをより安全に、そしてより有利に進めるための強力な追い風となります。
一方で、資金管理の複雑化や確定申告の手間といったデメリットも存在しますが、これらはスプレッドシートでの一元管理や、事前の書類準備といった対策を講じることで十分に克服可能です。
最も重要なのは、「なぜ複数口座を持つのか」という目的を自分の中で明確にすることです。リスクヘッジのためなのか、スキャルピングのパフォーマンスを上げるためなのか、あるいはスワップポイントを効率的に得るためなのか。その目的に合わせて、この記事で紹介した「メインとサブの使い分け」や「スタイル別の使い分け」などを参考に、自分だけの口座ポートフォリオを構築してみてください。
もし、あなたがまだ一つの口座しか持っていないのであれば、まずはリスクヘッジ用のサブ口座として、あるいは自分のメイン口座にはない強みを持つ会社の口座を一つ追加で開設してみることを強くおすすめします。ほとんどの口座は無料で開設・維持できます。その一歩が、あなたのFXトレーダーとしての可能性を大きく広げるきっかけになるかもしれません。