FX(外国為替証拠金取引)を始めようと考えている方や、すでに取引しているものの「どの時間帯にトレードすれば良いのだろう?」と悩んでいる方にとって、取引時間の理解は成功への重要な鍵となります。
「FXは24時間取引できる」とよく言われますが、実際には時間帯によって市場の参加者や値動きの活発さが大きく異なります。利益を上げやすい時間帯が存在する一方で、予期せぬ損失を被りやすい危険な時間帯もあるのです。
この記事では、FXの取引時間に関するあらゆる疑問に答えるべく、以下の点を網羅的かつ分かりやすく解説します。
- FXが24時間取引できる仕組み
- 夏時間と冬時間の違いと注意点
- 世界の三大市場(東京・ロンドン・ニューヨーク)の特徴
- 時間帯ごとの具体的なトレード戦略
- 相場が特に活発になるタイミング
- 取引ができない時間帯と週末のリスク
この記事を最後まで読めば、あなたは自身のライフスタイルやトレード戦略に最適な時間帯を見つけ出し、より有利にFX取引を進められるようになるでしょう。為替市場の「時間」という武器を味方につけ、トレードの精度を高めていきましょう。
目次
FXの取引時間は平日ほぼ24時間
FXの最大の魅力の一つは、平日はほぼ24時間、いつでも取引に参加できる点です。株式市場のように取引時間が日中の数時間に限定されていないため、日中仕事をしているサラリーマンや、家事・育児で忙しい主婦、夜型の生活を送る学生など、さまざまなライフスタイルの人々が自身の都合の良い時間帯にトレードできます。
しかし、なぜFXはこれほど長い時間、取引が可能なのでしょうか。その仕組みを理解することは、FXの取引時間帯ごとの特徴を掴む上で非常に重要です。
FXはなぜ24時間取引できるのか?
FXが24時間取引できる理由は、世界中の為替市場がリレー形式で次々と開場(オープン)していくからです。地球は自転しているため、世界の各都市では時差が生じます。この時差を利用して、ある国の市場が閉まる頃に、別の国の市場が開くという流れが延々と繰り返されるのです。
この市場のリレーは、日本時間の月曜早朝にオセアニアのウェリントン市場(ニュージーランド)が開くことからスタートします。その後、シドニー(オーストラリア)、東京(日本)、香港、シンガポール、フランクフルト(ドイツ)、ロンドン(イギリス)と続き、最後にニューヨーク(アメリカ)市場が開きます。そして、ニューヨーク市場が閉まる頃には、再びウェリントン市場が開く時間となり、このサイクルが金曜日のニューヨーク市場が閉まるまで続きます。
市場名 | 開場時間(日本時間目安) | 閉場時間(日本時間目安) |
---|---|---|
ウェリントン市場 | 午前4時 | 午後12時 |
シドニー市場 | 午前6時 | 午後2時 |
東京市場 | 午前8時 | 午後5時 |
香港市場 | 午前10時 | 午後7時 |
シンガポール市場 | 午前10時 | 午後7時 |
フランクフルト市場 | 午後4時 | 翌午前0時 |
ロンドン市場 | 午後5時 | 翌午前2時 |
ニューヨーク市場 | 午後10時 | 翌午前7時 |
※上記は冬時間の目安です。夏時間では1時間早まります。 |
このように、常に世界のどこかの為替市場が開いているため、私たちはFX会社を通じて、24時間いつでも為替取引に参加できます。
重要なのは、各市場には「コアタイム」と呼ばれる、取引が特に活発になる時間帯があることです。これは、各市場の主要な参加者である銀行や機関投資家が本格的に取引を始める時間帯を指します。例えば、東京市場であれば午前9時頃から、ロンドン市場であれば午後5時頃から取引量が増加し、値動きが活発になる傾向があります。
さらに、複数の主要市場が同時に開いている時間帯は、取引量が格段に増え、相場が大きく動くチャンスが生まれます。特に、世界最大の取引量を誇るロンドン市場と、それに次ぐニューヨーク市場が重なる日本時間の午後10時(22時)から翌午前2時頃は、世界中のトレーダーが注目するゴールデンタイムと言えるでしょう。
ただし、「ほぼ24時間」という言葉が示す通り、取引ができない時間帯も存在します。それは、世界のほとんどの市場が閉まる土曜日と日曜日、そして各FX会社が定めるメンテナンス時間です。これらの例外については、後の章で詳しく解説します。
FX取引において時間を味方につけるには、まずこの「世界市場のリレー」という基本的な仕組みを頭に入れておくことが第一歩となります。この仕組みを理解することで、各時間帯の値動きの「クセ」を読み解き、自身のトレード戦略に活かせるようになります。
FXの取引時間で知っておきたい「夏時間」と「冬時間」
FXの取引時間を正確に把握する上で、避けては通れないのが「夏時間」と「冬時間」の存在です。特に欧米の市場時間に大きな影響を与えるため、この違いを理解していないと、重要な経済指標の発表時間や市場が活発になるタイミングを見誤ってしまう可能性があります。ここでは、夏時間と冬時間の基本から、具体的な切り替え時期、取引への影響までを詳しく解説します。
夏時間と冬時間とは
夏時間とは、主に欧米諸国で導入されている制度で、日照時間が長くなる夏の期間、時計の針を1時間進めることを指します。英語では「デイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time)」と呼ばれます。この制度の主な目的は、太陽が出ている時間を有効活用し、照明などに使われるエネルギー消費を節約することにあると言われています。
一方、冬時間は標準時間とも呼ばれ、夏時間以外の期間に適用される通常の時間です。FXの世界では、この夏時間と冬時間の切り替えによって、欧米市場の開場・閉場時間が日本時間で1時間変動します。
具体的に、FX取引にどのような影響があるのか見てみましょう。
項目 | 夏時間(サマータイム) | 冬時間(標準時間) |
---|---|---|
適用期間 | 3月~11月頃 | 11月~3月頃 |
ロンドン市場(日本時間) | 16時 ~ 翌1時 | 17時 ~ 翌2時 |
ニューヨーク市場(日本時間) | 21時 ~ 翌6時 | 22時 ~ 翌7時 |
特徴 | 取引時間が1時間早まる | 標準的な取引時間 |
このように、夏時間になるとロンドン市場とニューヨーク市場の取引開始・終了時刻がそれぞれ1時間早まります。例えば、ニューヨーク市場で発表される重要な経済指標(米国雇用統計など)は、冬時間では日本時間の22時30分に発表されますが、夏時間では21時30分に発表されます。この1時間の違いを知らないと、大きな取引チャンスを逃したり、意図せず価格の急変動に巻き込まれたりする危険性があるのです。
特に、ロンドン時間とニューヨーク時間が重なる、取引が最も活発になる時間帯も、夏時間と冬時間で以下のように変化します。
- 冬時間: 日本時間 22時 ~ 翌2時
- 夏時間: 日本時間 21時 ~ 翌1時
このゴールデンタイムを狙って取引しているトレーダーは、夏時間と冬時間の切り替えを正確に把握しておく必要があります。多くのFX会社では、この切り替え時期が近づくとウェブサイトや取引ツール内でお知らせが表示されるため、必ず確認する習慣をつけましょう。
夏時間と冬時間の切り替え時期
夏時間と冬時間の切り替え時期は、国や地域によって微妙に異なります。FX取引で特に重要となるアメリカとヨーロッパの切り替え時期は以下の通りです。
- アメリカ(米国)
- 夏時間開始: 3月の第2日曜日(この日に時計が1時間進む)
- 冬時間開始: 11月の第1日曜日(この日に時計が1時間戻る)
- ヨーロッパ(英国・EU)
- 夏時間開始: 3月の最終日曜日(この日に時計が1時間進む)
- 冬時間開始: 10月の最終日曜日(この日に時計が1時間戻る)
ここで注意すべき点は、アメリカとヨーロッパで夏時間の開始・終了タイミングが数週間ずれていることです。
例えば、3月にはアメリカが先に夏時間に移行し、ヨーロッパはまだ冬時間のままという期間が約2〜3週間発生します。逆に10月下旬から11月上旬にかけては、ヨーロッパが先に冬時間に移行し、アメリカはまだ夏時間のままという期間が生じます。
この「ズレ」の期間は、ロンドン市場とニューヨーク市場の時差が通常期と変わるため、取引時間帯が変則的になります。例えば、通常は5時間の時差があるロンドンとニューヨークですが、このズレの期間中は4時間になったり6時間になったりします。これにより、両市場が重なる時間帯も変動するため、トレード戦略に影響を及ぼす可能性があります。
この変則的な期間は、多くのトレーダーが混乱しやすいポイントです。そのため、3月と10月、11月は特にFX会社からの案内に注意を払い、自分が利用している取引ツールのサーバー時間設定などを確認することが重要です。
まとめると、夏時間と冬時間はFXトレーダーにとって必須の知識です。この制度を正しく理解し、毎年の切り替え時期を意識することで、市場の変動リズムに乗り遅れることなく、安定したトレードを続けるための土台を築けます。
世界の三大市場と値動きの特徴
FX市場は24時間動いていますが、その中心となるのは「東京」「ロンドン」「ニューヨーク」の世界三大市場です。それぞれの市場には、主要な参加者、取引される通貨、そして値動きの「クセ」といった明確な特徴があります。これらの特徴を理解することは、時間帯に応じた適切なトレード戦略を立てる上で不可欠です。
東京時間(日本時間 8時~17時頃)
東京時間は、ウェリントン市場、シドニー市場からバトンを受け継ぎ、アジア地域の取引の中心となる時間帯です。日本はもちろん、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港などのアジア各国の投資家が主な参加者となります。
値動きの特徴:比較的穏やかでレンジ相場になりやすい
東京時間の最大の特徴は、後述するロンドン時間やニューヨーク時間と比較して、値動きが比較的穏やかで、一定の価格帯(レンジ)の中を行ったり来たりする「レンジ相場」になりやすいことです。これは、欧米の主要な機関投資家がまだ市場に参加しておらず、取引量がそこまで多くないことが主な理由です。
そのため、大きなトレンドが発生することは少なく、突発的なニュースがない限りは落ち着いた相場展開が期待できます。この特徴から、FX初心者の方が市場の雰囲気に慣れたり、デモトレードで練習したりするのに適した時間帯と言えるでしょう。
主要通貨ペアと注目ポイント
この時間帯は、地理的な要因から日本円(JPY)やオーストラリアドル(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)が絡む通貨ペア(クロス円、オセアニア通貨)の取引が活発になる傾向があります。特に「米ドル/円(USD/JPY)」は、日本の輸出入企業による実需の取引も多く、世界中のトレーダーから注目されています。
ただし、穏やかな時間帯とはいえ、注意すべきタイミングも存在します。
- 仲値(なかね): 午前9時55分頃に金融機関がその日の対顧客取引の基準レートを決定します。この時間に向けて、輸入企業のドル買い需要などからドル/円が上昇しやすいというアノマリー(経験則)があります。
- ゴトー日(5と10のつく日): 5日、10日、15日など、企業の決済が集中する日は、仲値にかけて実需のドル買いが強まる傾向が見られます。
- 経済指標の発表: 日本やオーストラリア、中国などの重要な経済指標が発表される時間帯は、関連する通貨ペアが大きく動く可能性があります。
- 要人発言: 日銀総裁や財務大臣などの発言は、相場に大きな影響を与えることがあります。
これらの要因が重なると、東京時間であっても価格が急変動する可能性があるため、常に警戒は怠らないようにしましょう。
ロンドン時間(日本時間 16時~翌2時頃)
東京時間の取引が落ち着き始める夕方頃、ヨーロッパ勢が本格的に市場へ参入し、ロンドン時間がスタートします。ロンドン市場は、世界の為替取引のおよそ4割を占める世界最大の市場であり、この時間帯からFX市場は一気に活気づきます。
値動きの特徴:トレンドが発生しやすく値動きが活発になる
ロンドン時間の最大の特徴は、トレンドが発生しやすく、ボラティリティ(価格変動率)が高まることです。世界中のヘッジファンドや大手銀行などの機関投資家が参入し、莫大な資金が動くため、東京時間で形成されていたレンジを打ち破り、一方向に力強く動く「トレンド相場」が形成されやすくなります。
東京時間の高値や安値をブレイクする動きも頻繁に見られ、デイトレーダーやスキャルパーにとっては絶好の取引機会が訪れます。値動きが活発になるため、短時間で大きな利益を狙える可能性がある一方で、損失のリスクも高まるため、しっかりとした資金管理が求められます。
主要通貨ペアと注目ポイント
ロンドン時間では、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)といった欧州通貨が主役となります。「ユーロ/米ドル(EUR/USD)」や「ポンド/米ドル(GBP/USD)」、「ユーロ/円(EUR/JPY)」といった通貨ペアの取引量が急増します。
また、この時間帯はイギリスやドイツ、ユーロ圏全体の重要な経済指標が次々と発表されます。
- ECB(欧州中央銀行)の政策金利発表
- BOE(イングランド銀行)の政策金利発表
- ドイツのZEW景況感指数やIfo景況指数
- ユーロ圏やイギリスの消費者物価指数(CPI)
これらの指標発表時は、相場が数秒で数十pips動くことも珍しくありません。事前に発表スケジュールを経済指標カレンダーで確認し、トレード戦略を立てておくことが重要です。
ニューヨーク時間(日本時間 21時~翌6時頃)
ロンドン時間の後半に差し掛かると、今度はアメリカの投資家が市場に参入し、ニューヨーク時間が始まります。特に、ロンドン市場とニューヨーク市場が重なる日本時間21時頃から翌2時頃までは、世界で最も取引が集中する時間帯であり、FX市場のクライマックスとも言えます。
値動きの特徴:世界で最も取引量が多く変動が大きい
ニューヨーク時間は、ロンドン時間を上回るほどの取引量とボラティリティを誇ります。基軸通貨である米ドル(USD)に関する取引が中心となり、世界中から投機的な資金が流入するため、非常にダイナミックな値動きが期待できます。
この時間帯は、トレンドがさらに加速することもあれば、ロンドン時間で作られたトレンドが反転することもあり、一瞬たりとも目が離せません。
主要通貨ペアと注目ポイント
ニューヨーク時間では、米ドルが絡むすべての通貨ペア、いわゆる「ドルストレート」の取引が最も活発になります。
- 米ドル/円(USD/JPY)
- ユーロ/米ドル(EUR/USD)
- ポンド/米ドル(GBP/USD)
そして、この時間帯の最大イベントは、アメリカの重要経済指標の発表です。
- 米国雇用統計: 最も注目される指標の一つ。発表後には相場が乱高下することが多い。
- FOMC(連邦公開市場委員会)の政策金利発表: アメリカの金融政策を決定する会合。
- 消費者物価指数(CPI): インフレ動向を示す重要な指標。
- 小売売上高
これらの指標は世界の金融市場に絶大な影響力を持つため、発表前後には細心の注意が必要です。
また、「ロンドンフィキシング」と呼ばれる日本時間午前0時(夏時間)または午前1時(冬時間)には、金融機関のオーダーが集中し、短期的に相場が大きく動くことがあります。
ニューヨーク時間の後半(日本時間で深夜から早朝)になると、ロンドン市場が閉まり、取引参加者が減少するため、徐々に値動きは落ち着いていきます。
このように、三大市場それぞれの特徴を理解することで、「今は攻めるべき時間帯か、それとも様子を見るべき時間帯か」を判断する材料となり、トレードの精度を大きく向上させることができます。
時間帯別のトレード戦略
世界の三大市場の特徴を理解したら、次はその知識を具体的なトレード戦略に落とし込んでいきましょう。各時間帯の値動きの「クセ」に合わせた戦略を用いることで、FX取引の優位性を高めることができます。ここでは、「東京時間」「ロンドン時間」「ニューヨーク時間」それぞれに適した代表的なトレード戦略を、具体例を交えて解説します。
東京時間:値動きが穏やかでレンジ相場になりやすい
東京時間は、欧米市場に比べて値動きが落ち着いており、一定の価格幅(レンジ)で上下動を繰り返す「レンジ相場」が形成されやすいという特徴があります。この特徴を活かした戦略が有効です。
基本戦略:レンジ相場での逆張り
逆張りとは、相場の流れとは逆の方向にポジションを持つ手法です。レンジ相場においては、価格がレンジの上限に近づいたら「売り」、下限に近づいたら「買い」を仕掛けるのが基本となります。
- 具体例:
ある日の米ドル/円が、157.00円を下値支持線(サポートライン)、157.50円を上値抵抗線(レジスタンスライン)とするレンジ相場を形成しているとします。- 価格が157.50円に近づいてきたら、そこで反発して下落することを見越して「売り(ショート)」のエントリーを検討します。
- 逆に、価格が157.00円まで下落してきたら、そこで反発して上昇することを見越して「買い(ロング)」のエントリーを検討します。
逆張り戦略の注意点
- 損切り(ストップロス)注文は必須: レンジ相場はいつか必ず終わり、価格がレンジを突き抜ける「レンジブレイク」が発生します。もし逆にポジションを持っていた場合、大きな損失につながる可能性があります。そのため、エントリーと同時に必ず損切り注文を入れましょう。上記の例では、売りエントリーの場合は157.50円を少し超えた水準(例:157.60円)、買いエントリーの場合は157.00円を少し下回った水準(例:156.90円)に損切りを設定します。
- レンジの見極め: 明確なレンジが形成されているかを見極めることが重要です。ボリンジャーバンドやRSIといったテクニカル指標を活用すると、レンジの上限・下限や相場の過熱感を判断しやすくなります。
- イベントリスク: 穏やかな東京時間といえど、日銀の金融政策発表や要人発言、突発的なニュースなどがあれば、レンジは簡単に崩壊します。経済指標カレンダーは常にチェックしておきましょう。
東京時間の逆張り戦略は、比較的予測がしやすく、精神的な負担も少ないため、FX初心者の方がトレードに慣れるための練習としても最適です。
ロンドン時間:トレンドが発生しやすく値動きが活発になる
夕方になりロンドン市場が開くと、相場の雰囲気は一変します。取引量が増大し、東京時間で作られたレンジをブレイクして、一方向に力強く進む「トレンド相場」が発生しやすくなります。この時間帯では、トレンドの流れに乗る「順張り」戦略が基本となります。
基本戦略:トレンドフォロー(順張り)とブレイクアウト
トレンドフォローとは、発生したトレンドと同じ方向にポジションを持つ手法です。上昇トレンドなら「買い」、下降トレンドなら「売り」でエントリーします。
- 具体例①(押し目買い):
ユーロ/米ドル(EUR/USD)で強い上昇トレンドが発生しているとします。価格が一直線に上がり続けることは稀で、途中で一時的に下落する「押し目」を形成することがよくあります。その押し目を確認してから「買い(ロング)」でエントリーするのが、トレンドフォローの王道的な手法です。移動平均線やトレンドラインを基準に、価格がタッチして反発したタイミングを狙います。 - 具体例②(ブレイクアウト):
東京時間で形成されていたレンジの上値抵抗線(レジスタンスライン)を、ロンドン時間に入って力強く上抜けた(ブレイクアウトした)とします。これは強い買いのサインと捉え、ブレイクした直後に「買い(ロング)」で追随する戦略です。
順張り戦略の注意点
- ダマシに注意: ブレイクアウトしたかと思ったら、すぐに価格が戻ってきてしまう「ダマシ」も頻繁に発生します。ブレイクしたローソク足が確定するのを待つなど、エントリータイミングを慎重に見極める必要があります。
- ボラティリティの高さ: 値動きが激しいため、利益が大きくなる可能性がある反面、損失も大きくなりやすいです。損切り幅をあらかじめ決めておき、許容できるリスクの範囲内で取引することが鉄則です。
- 経済指標発表時: 欧州の重要な経済指標が発表される時間は、スプレッド(売値と買値の差)が急拡大したり、価格が乱高下したりします。初心者は無理にトレードせず、相場が落ち着くのを待つのが賢明です。
ロンドン時間は、デイトレードやスキャルピングで積極的に利益を狙いたいトレーダーにとって、最も魅力的な時間帯と言えるでしょう。
ニューヨーク時間:世界で最も取引量が多く変動が大きい
ニューヨーク時間は、ロンドン時間と重なる前半部分が取引のピークタイムです。世界中の資金が流れ込み、ボラティリティは最大に達します。戦略の基本はロンドン時間と同様にトレンドフォローですが、よりダイナミックな値動きに対応する必要があります。
基本戦略:重要経済指標発表後のトレンドフォロー
ニューヨーク時間の最大の特徴は、米国雇用統計やFOMCなど、世界経済を揺るがすほどの重要経済指標が発表されることです。この発表をきっかけに、非常に強力なトレンドが発生することがあります。
- 具体例:
日本時間21時30分(夏時間)に発表された米国雇用統計の結果が市場予想を大幅に上回り、ドルが全面高になったとします。米ドル/円(USD/JPY)が急騰し、強い上昇トレンドが発生しました。- 発表直後は避ける: 発表直後は価格が上下に激しく振れる「ノイズ」が多いため、すぐには飛びつかず、5分~15分ほど様子を見ます。
- 方向性を見極める: 上昇の方向性が明確になったことを確認し、押し目を待って「買い(ロング)」でエントリーします。
ニューヨーク時間の注意点
- 最大のリスク: 大きな利益が狙える反面、FX市場で最もリスクが高い時間帯でもあります。予想と逆方向に動いた場合、一瞬で大きな損失を被る可能性があります。徹底した資金管理とリスク管理が何よりも重要です。
- トレンドの転換: ロンドン時間から続いていたトレンドが、ニューヨーク市場の参加者の思惑によって、突然反転することもあります。「もう十分に上がった(下がった)」という利益確定の動きや、米国のニュースに反応した動きには常に注意を払いましょう。
- 初心者は慎重に: FXに慣れていないうちは、この時間帯のトレードは避けるか、まずはデモトレードで十分に練習することをおすすめします。もし取引するなら、レバレッジを低く抑え、少額の取引から始めましょう。
自身のトレードスタイルやリスク許容度、そして生活リズムに合わせて、これらの時間帯別戦略を使い分けることが、FXで継続的に成果を出すための鍵となります。
FXの取引が特に活発になる3つのタイミング
これまで解説してきた三大市場の時間帯という大きな枠組みに加えて、FXの相場には、特定のイベントやアノマリー(経験則)によって、瞬間的に取引が活発になり、価格が大きく変動するタイミングが存在します。ここでは、特に注意すべき3つのタイミングを詳しく見ていきましょう。これらの「スポットライトが当たる瞬間」を把握しておくことで、大きな利益機会を捉えたり、予期せぬリスクを回避したりできます。
① 経済指標の発表時
FX市場で最も予測可能かつインパクトの大きい変動要因が、各国政府や中央銀行が発表する経済指標です。これらの指標は、その国の経済の健康状態を示す通信簿のようなものであり、結果が市場参加者の予想と大きく異なると、サプライズとなって為替レートを大きく動かします。
なぜ活発になるのか?
世界中の投資家は、経済指標の「事前予想」を元に、すでにポジションを組んだり、戦略を立てたりしています。発表された数値がこの予想通りであれば、相場の反応は限定的です。しかし、予想を大幅に上回る(ポジティブ・サプライズ)か、下回る(ネガティブ・サプライズ)と、その結果を織り込むために一斉に売買注文が殺到し、価格が急騰・急落するのです。
特に注目すべき重要経済指標
数ある経済指標の中でも、特に市場への影響力が大きいものは以下の通りです。
国・地域 | 非常に重要度が高い経済指標 |
---|---|
アメリカ | ・政策金利(FOMC) ・非農業部門雇用者数(雇用統計) ・消費者物価指数(CPI) ・小売売上高 ・国内総生産(GDP) |
ユーロ圏 | ・政策金利(ECB) ・消費者物価指数(HICP) ・ドイツZEW景況感指数 |
イギリス | ・政策金利(BOE) ・消費者物価指数(CPI) |
日本 | ・金融政策決定会合(日銀) ・全国消費者物価指数(CPI) |
これらの指標の発表スケジュールは、FX会社が提供する「経済指標カレンダー」で事前に確認できます。発表時刻、前回結果、市場予想、そして結果の重要度が一覧でわかるため、トレード前には必ずチェックする習慣をつけましょう。
取引する際の注意点
経済指標発表時は、大きな利益を狙えるチャンスであると同時に、非常に高いリスクを伴います。
- スプレッドの拡大: 注文が殺到するため、FX会社はリスクを回避しようとスプレッド(売値と買値の差)を一時的に大きく広げます。これにより、取引コストが通常時よりも高くなります。
- スリッページ: 指定した価格で注文が約定せず、不利な価格で約定してしまう「スリッページ」が発生しやすくなります。
- 乱高下: 発表直後は、買いと売りの思惑が交錯し、価格が上下に激しく振れることがあります。
これらのリスクから、初心者のうちは指標発表時のトレードは避け、相場が落ち着いてからトレンドの方向性を見極めてエントリーするのが賢明です。
② ロンドンフィキシング
「ロンドンフィキシング(London Fixing)」、通称「ロンフィク」は、特に月末や期末に注目される値動きのパターンです。これは、日本時間の午前0時(夏時間)または午前1時(冬時間)に行われる金のスポット価格(値決め)に合わせて、多くの金融機関が顧客の注文を執行するために、為替の売買を行う時間帯を指します。
値動きの特徴
この時間帯には、年金基金や投資信託など、巨額の資金を運用する機関投資家からの大口の注文(リバランスに伴う売買など)が持ち込まれることがあります。特に、月末にはこうした実需に基づいたフローが集中する傾向があり、特定の通貨ペア(特にユーロ/ドルやポンド/ドル)が短期的に一方向へ大きく動くことがあります。
例えば、ある月の月末に英国の年金基金が米国株への投資を増やすために、ポンドを売って米ドルを買うという大口注文を出すと、ロンフィクの時間帯にポンド/ドルが下落する、といった動きが見られます。
トレーダーの動きと注意点
この特徴的な値動きを狙って、短期売買を仕掛ける投機筋も多く参加するため、値動きはさらに増幅されることがあります。スキャルピングや短時間のデイトレードを行うトレーダーにとっては、一つの取引チャンスとなり得ます。
ただし、ロンフィクの動きはあくまでアノマリー(経験則)であり、毎回必ず同じ方向に動くとは限りません。その日の市場全体のテーマや他のニュースに影響されることも多々あります。また、ロンフィクを狙った投機的な動きが、逆に相場を不安定にさせることもあります。この時間帯にポジションを持つ場合は、短期的な急変動に備え、ストップロスの設定を徹底することが不可欠です。
③ ゴトー日(5と10のつく日)
「ゴトー日」は、日本市場特有のアノマリーとして知られています。これは、日付の末尾が5や10のつく日(5日、10日、15日、20日、25日)と、月末日を指します。
値動きの特徴
これらの日は、日本の多くの企業にとって決済日にあたります。特に、海外から製品や原材料を輸入している企業は、仕入れ代金を米ドルで支払う必要があります。そのため、ゴトー日には、決済資金を確保するための円を売ってドルを買う「ドル買い・円売り」の実需の注文が多くなる傾向があるのです。
この動きは、東京時間の朝から午前9時55分の仲値(金融機関がその日の対顧客レートを決める時間)に向けて、特に顕著になると言われています。その結果、ゴトー日の午前中は、米ドル/円(USD/JPY)が上昇しやすいという経験則が生まれました。
トレーダーの動きと注意点
このアノマリーを狙って、朝のうちに米ドル/円を買い、仲値が決まる前に決済して利益を得ようとするトレーダーもいます。
しかし、これもロンフィクと同様にあくまでアノマリーです。ゴトー日のドル買い需要よりも、海外市場の大きなニュースや、他の通貨の強いトレンド、日銀の動向などの影響が強ければ、この法則は全く機能しません。近年は、企業の決済日も多様化しており、ゴトー日の影響力は以前よりも薄れているという指摘もあります。
ゴトー日のアノマリーは、あくまで相場環境を分析する上での一つの要素として捉え、この法則だけを鵜呑みにして取引するのは非常に危険です。他のテクニカル分析やファンダメンタルズ分析と組み合わせて、総合的に判断することが重要です。
FXの取引ができない時間帯と注意点
FXは「平日ほぼ24時間」取引が可能ですが、逆に言えば取引ができない時間帯も存在します。これらの時間帯を正確に把握しておくことは、意図せぬ取引機会の損失を防ぎ、リスク管理を徹底する上で非常に重要です。ここでは、FX取引が停止する主な時間帯とその注意点について詳しく解説します。
土日
FX市場が完全に休場となるのが、土曜日と日曜日です。これは、世界の主要な金融市場(ロンドン、ニューヨーク、東京など)が全て休みになるためです。
具体的な取引停止時間はFX会社によって若干異なりますが、一般的には以下のようになります。
- 取引終了: 日本時間の土曜日午前7時頃(米国市場の金曜営業終了時刻)
- 取引開始: 日本時間の月曜日午前7時頃(オセアニア市場の月曜営業開始時刻)
- ※夏時間では、これが1時間早まり、土曜午前6時終了、月曜午前6時開始となるのが一般的です。
この間、トレーダーは新規注文、決済注文、注文の変更・取消など、取引に関する一切の操作ができなくなります。金曜日の取引終了時点でポジションを保有している場合、それは月曜日の取引開始まで強制的に持ち越されることになります。この「週末のポジション持ち越し」には特有のリスクが伴うため、注意が必要です(詳細は後述)。
日本の祝日
多くの日本人トレーダーが勘違いしやすいのが、日本の祝日の扱いです。ゴールデンウィークやお盆、その他の国民の祝日など、日本の株式市場は休場となりますが、FX取引は通常通り可能です。
なぜなら、為替市場はグローバルな市場であり、日本が祝日であっても海外のロンドン市場やニューヨーク市場は開いているからです。そのため、FX会社も通常通りサービスを提供しています。
日本の祝日取引の注意点
ただし、日本の祝日には特有の注意点があります。
- 流動性の低下: 東京市場の主要な参加者である日本の銀行や機関投資家が休みのため、東京時間帯の取引量が通常よりも減少します。これを「流動性が低い」状態と言います。
- 値動きの鈍化または急変動: 流動性が低いと、値動きが非常に小さく、方向感のない展開になることがあります。一方で、何か大きなニュースが出た際には、少ない取引量でも価格が大きく振れやすくなるという側面もあります。普段なら吸収されるようなオーダーでも、相場を大きく動かす可能性があるのです。
- スプレッドの拡大: 流動性の低下に伴い、FX会社がスプレッドを広げる可能性があります。
日本の祝日に取引する際は、こうした通常とは異なる市場環境であることを認識し、慎重な判断を心がけましょう。
年末年始・クリスマス・元日
年末年始は、世界的に市場の動きが特殊になる期間です。
- クリスマス(12月25日): キリスト教圏の国々では国民の祝日です。ヨーロッパ、北米、オセアニアなど、世界の主要な金融市場が休場となるため、多くのFX会社で取引時間が大幅に短縮されたり、終日取引休止となったりします。取引できたとしても、市場参加者が極端に少なく、流動性が著しく低下するため、実質的に取引に適した環境ではありません。
- 元日(1月1日): 世界のほとんどの国が祝日であるため、FX市場は完全に休場となります。
- 年末年始(クリスマス前後~1月3日頃): この期間は、多くの市場参加者が休暇に入るため、全体的に取引量が減少します。流動性が低下する中で、2019年1月3日に発生した「フラッシュ・クラッシュ」のように、何かのきっかけで相場が瞬間的に暴落・暴騰するリスクが高まる時期でもあります。
年末年始にポジションを持ち越すのは非常にリスクが高いため、多くのトレーダーは年内のうちにポジションを全て決済します。
FX会社のメンテナンス時間
FX会社は、サーバーの安定稼働やシステム更新のために、定期的にメンテナンス時間を設けています。このメンテナンス時間中は、ログイン、発注、決済、口座照会など、取引システムの全ての機能が停止します。
- 日次メンテナンス: 毎日、数分から数十分程度行われます。通常、取引が最も少なくなるニューヨーク市場のクローズ後(日本時間の早朝)に設定されています。
- 週次メンテナンス: 週末の取引時間外(土曜日や日曜日)に、数時間にわたって行われることが多いです。
メンテナンス時間の注意点
日次メンテナンスは短時間ですが、もしその時間に価格が大きく動き、保有しているポジションがロスカットの基準に達した場合、メンテナンス明けに強制的に決済されてしまう可能性があります。
特に、深夜から早朝にかけてスキャルピングなどの短期売買を行うトレーダーは、各FX会社が定めるメンテナンス時間を正確に把握しておく必要があります。メンテナンス時間に入る前にポジションを決済しておくか、万が一に備えて逆指値注文(ストップロス)をあらかじめ設定しておくなどの対策が不可欠です。
これらの取引できない時間帯や特殊な時間帯を事前に理解し、ご自身の取引計画に組み込むことが、安定したFXトレードを続けるための重要な要素となります。
取引時間外に注意すべき2つのこと
FX取引ができない土日の間も、世界では様々な出来事が起こります。週末に発生した政治・経済ニュースや地政学リスクは、週明け月曜日の市場に大きな影響を与え、トレーダーに予期せぬ損失をもたらすことがあります。ここでは、FXの取引時間外、特に週末にポジションを持ち越す際に注意すべき2つの重要なリスクについて解説します。
① 週明けの「窓開け」による価格の急変動
FXトレーダーが最も警戒すべき週末リスクの一つが、週明けの「窓開け」です。「窓」とは、チャート上でローソク足とローソク足の間に生じる空間(ギャップ)のことを指します。FXにおいては、金曜日の終値(取引終了時の価格)と、翌週月曜日の始値(取引開始時の価格)との間に大きな価格差が発生する現象を指します。
窓開けはなぜ起こるのか?
取引が停止している土日の間に、為替相場に大きな影響を与えるような出来事が発生した場合、月曜日の市場が開くと同時に、そのニュースを織り込むための注文が殺到します。
- 主な発生要因:
- G7やG20などの国際会議での声明発表
- 各国の選挙結果や国民投票
- 戦争、紛争、テロなどの地政学リスクの発生
- 大規模な自然災害
- 政府や中央銀行の要人による週末の発言
例えば、週末にある国の金融緩和が示唆されるようなニュースが出た場合、その国の通貨を売る注文が月曜の朝に集中し、金曜の終値よりも大幅に安い価格から取引がスタートします。この価格差が「窓」としてチャートに現れるのです。
窓開けがもたらす最大のリスク
窓開けの最も恐ろしい点は、設定していた損切り注文(ストップロス)が機能しない可能性があることです。
例えば、米ドル/円を157.00円で買い、156.80円に損切り注文を置いて週末を迎えたとします。週末に大きな円高ニュースが発生し、月曜の始値が156.50円だった場合、取引システムは156.80円で決済することができず、始値である156.50円、あるいはそれよりもさらに不利な価格で強制的に決済(約定)してしまいます。
このように、注文価格と約定価格に大きなズレが生じることを「スリッページ」と呼びますが、窓開け時にはこのスリッページが極端に大きくなるリスクがあります。結果として、当初想定していた損失額(この例では20pips)を大幅に超える損失を被る可能性があるのです。
窓開けリスクへの対策
- 週末にポジションを持ち越さない(ウィークエンドクローズ): 最も安全かつ確実な対策は、金曜日の取引終了までに全てのポジションを決済し、ノーポジションで週末を迎えることです。多くのデイトレーダーや短期トレーダーはこの手法を徹底しています。
- レバレッジを低く抑える: やむを得ずポジションを持ち越す場合は、レバレッジを極力低くし、証拠金維持率に十分な余裕を持たせておきましょう。これにより、多少の窓開けには耐えられるようになります。
- 情報収集を怠らない: 週末も主要な経済ニュースには目を通し、週明けに相場が大きく動きそうな要因がないかを確認する習慣をつけることが重要です。
② 為替レートは土日も動いている
「土日は世界の主要市場が閉まっているのに、なぜ月曜日に価格が飛ぶの?」と疑問に思うかもしれません。実は、個人トレーダーが取引できない土日でも、為替レートは完全に停止しているわけではありません。
その理由は、中東の一部の国々(バーレーン、クウェート、サウジアラビアなど)にあります。これらの国では、イスラム教の安息日に合わせて金曜日と土曜日が休日となり、日曜日が営業日となっています。そのため、中東の金融市場では日曜日にも為替取引が行われているのです。
この中東市場の取引量は、ロンドン市場やニューヨーク市場に比べればごくわずかであり、通常は世界の相場に大きな影響を与えることはありません。しかし、週末に何か大きな材料が出た場合、この中東市場での取引が、月曜朝のオセアニア市場の始値に影響を与え、結果として窓開けの一因となることがあります。
私たち個人投資家が中東市場で直接取引することはできませんが、「土日の間も世界のどこかでは為替が動いている」という事実を認識しておくことは、市場の連続性を理解する上で重要です。金曜の終値が絶対的なものではなく、月曜の始値は週末の出来事を反映して形成されるということを肝に銘じておきましょう。
これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが、FX市場で長期的に生き残るためには不可欠です。
主要FX会社の取引時間一覧
FXの基本的な取引時間は世界共通ですが、各FX会社が提供する具体的な取引可能時間や、日次・週次のメンテナンス時間はそれぞれ異なります。自分が利用している、あるいは利用を検討しているFX会社の正確な取引時間を把握しておくことは、スムーズな取引を行うための基本です。
ここでは、日本国内の主要なFX会社の取引時間を一覧でまとめました。夏時間と冬時間で取引時間が1時間ずれる点にも注意してください。
FX会社名 | 冬時間(標準時間) | 夏時間(米国サマータイム) | メンテナンス時間 |
---|---|---|---|
GMO外貨 | 月曜 7:00~土曜 6:50 | 月曜 7:00~土曜 5:50 | 【日次】火~金曜 6:55~7:00、土曜 6:50~月曜 7:00 |
外為どっとコム | 月曜 7:00~土曜 6:55 | 月曜 7:00~土曜 5:55 | 【日次】火~金曜 6:55~7:10、土曜 5:55~月曜 7:00 (夏時間) / 土曜 6:55~月曜 7:00 (冬時間) |
みんなのFX | 月曜 7:00~土曜 6:55 | 月曜 7:00~土曜 5:55 | 【日次】火~金曜 6:55~7:05 (夏時間 5:55~6:05) 【週次】土曜 12:00~18:00 |
DMM FX | 月曜 7:00~土曜 6:50 | 月曜 7:00~土曜 5:50 | 【日次】火~金曜 6:59~7:09 (夏時間 5:59~6:09) 【週次】土曜 12:00~月曜 6:00 |
SBI FXトレード | 月曜 7:00~土曜 6:30 | 月曜 7:00~土曜 5:30 | 【日次】火~金曜 6:30~7:00 (夏時間 5:30~6:00) 【週次】土曜 6:30~月曜 7:00 (夏時間 土曜 5:30~月曜 7:00) |
楽天FX | 月曜 7:00~土曜 6:55 | 月曜 7:00~土曜 5:55 | 【日次】火~金曜 6:55~7:05 (夏時間 5:55~6:05) 【週次】土曜のNY市場クローズ後~日曜 16:00頃 |
参照:GMO外貨 公式サイト、外為どっとコム 公式サイト、みんなのFX 公式サイト、DMM FX 公式サイト、SBI FXトレード 公式サイト、楽天FX 公式サイト(2024年5月時点の情報)
【注意点】
- 上記の表は、各社の基本的な取引時間をまとめたものです。クリスマスや年末年始などの祝祭日には、変則的な取引時間となる場合があります。
- メンテナンス時間や取引時間は、FX会社の都合により変更される可能性があります。 取引を行う前には、必ずご自身が利用しているFX会社の公式サイトや取引ツールのお知らせで、最新の正確な情報を確認するようにしてください。
GMO外貨
GMO外貨の取引時間は、冬時間・夏時間ともに月曜日の午前7時から取引が開始されます。終了時刻は冬時間が土曜午前6時50分、夏時間が土曜午前5時50分です。日次メンテナンスは取引終了後の5分間と非常に短いのが特徴ですが、週末のメンテナンスは土曜のクローズから月曜のオープンまで続きます。
参照:GMO外貨 公式サイト
外為どっとコム
外為どっとコムでは、冬時間は土曜午前6時55分、夏時間は土曜午前5時55分まで取引が可能です。日次メンテナンスは火曜から金曜の朝、取引終了後から15分間設定されています。週末メンテナンスは市場が閉まっている間に行われます。
参照:外為どっとコム 公式サイト
みんなのFX
みんなのFXの取引時間は、外為どっとコムと同様に、冬時間は土曜午前6時55分、夏時間は土曜午前5時55分までです。日次メンテナンスは10分間と比較的短めです。特徴的なのは、土曜日の日中(12時~18時)に週次メンテナンスが設定されている点です。
参照:みんなのFX 公式サイト
DMM FX
DMM FXの取引終了時刻は、冬時間が土曜午前6時50分、夏時間が土曜午前5時50分です。日次メンテナンスは毎朝10分間です。週次メンテナンスが土曜日の正午から月曜日のオープン直前までと、比較的長めに設定されている点に注意が必要です。
参照:DMM FX 公式サイト
SBI FXトレード
SBI FXトレードは、他の主要FX会社と比較して、金曜日(土曜早朝)の取引終了時刻が少し早いのが特徴です。冬時間は土曜午前6時30分、夏時間は土曜午前5時30分にクローズします。週末にポジションを持ち越したくない場合は、他の会社より早めに決済する必要があります。
参照:SBI FXトレード 公式サイト
楽天FX
楽天FXの取引時間は、多くのFX会社と標準的な時間を採用しており、冬時間は土曜午前6時55分、夏時間は土曜午前5時55分までです。日次メンテナンスは10分間。週次メンテナンスは土曜のクローズ後から日曜の夕方頃までとされています。
参照:楽天FX 公式サイト
このように、基本的な取引時間帯は似ていますが、メンテナンスの時間帯や週末のクローズ時刻には各社で微妙な違いがあります。特に深夜から早朝にかけて取引する方は、これらの違いを正確に把握しておくことが重要です。
FXの取引時間に関するよくある質問
ここまでFXの取引時間について詳しく解説してきましたが、最後に、特に初心者の方から多く寄せられる質問について、Q&A形式でお答えします。
どの時間帯が一番稼ぎやすいですか?
これはFXを始めた誰もが抱く疑問ですが、結論から言うと、「万人にとって一番稼ぎやすい時間帯」というものは存在しません。なぜなら、最適な取引時間帯は、その人のライフスタイル、トレード戦略、そして性格によって大きく異なるからです。
- 大きな値動きを捉えて利益を狙いたい方(デイトレーダー、スキャルパー)
→ ロンドン時間(16時~)やニューヨーク時間(21時~)がおすすめです。ボラティリティが高く、トレンドが発生しやすいため、取引チャンスが多く訪れます。特に両市場が重なる21時~翌2時頃は、最大の利益機会が眠っていると言えるでしょう。ただし、リスクも最大になることを忘れてはいけません。 - 日中は仕事で忙しい兼業トレーダーの方
→ やはり、仕事が終わった後の夜間(21時以降)のロンドン時間後半~ニューヨーク時間が主な取引時間帯となります。自分の生活リズムに合わせて無理なく取引できる時間帯を選ぶことが、長く続ける秘訣です。 - コツコツと安定したトレードをしたい方
→ 東京時間(8時~17時頃)が向いているかもしれません。値動きが比較的穏やかでレンジ相場になりやすいため、大きなトレンドに乗り遅れる心配が少なく、落ち着いて分析・判断ができます。 - リスクを抑えたい、まずは市場に慣れたい初心者の方
→ 後述の通り、まずは東京時間から始めるのが良いでしょう。
重要なのは、他人が「稼ぎやすい」と言う時間帯に無理に合わせるのではなく、ご自身の生活の中で集中してチャートと向き合える時間、そして自分の得意な相場パターン(レンジ相場かトレンド相場か)が現れやすい時間帯を見つけることです。様々な時間帯でデモトレードを試してみて、自分に合った「ゴールデンタイム」を探してみましょう。
FX初心者におすすめの時間帯はありますか?
FXを始めたばかりの初心者の方には、まず値動きが比較的穏やかな「東京時間(日本時間 午前8時~午後5時頃)」から取引を始めることを強くおすすめします。
その理由は以下の通りです。
- 精神的なプレッシャーが少ない: ロンドン時間やニューヨーク時間のように、価格が目まぐるしく変動することが少ないため、パニックに陥ることなく、落ち着いて取引の基本操作(注文方法、決済方法など)を学ぶことができます。
- 相場の基本パターンを学びやすい: 一定の範囲で価格が上下するレンジ相場になりやすいため、「サポートライン(下値支持線)」や「レジスタンスライン(上値抵抗線)」といったテクニカル分析の基本的な概念を、実際のチャートで確認しながら理解するのに最適です。
- 情報収集がしやすい: 日本の時間帯なので、国内の経済ニュースやアナリストの解説などをリアルタイムで参考にしやすいというメリットもあります。
もちろん、東京時間でも重要な経済指標の発表時などには価格が急変動することもありますが、全体的には欧米市場に比べて緩やかな値動きです。
初心者におすすめのステップアップ
- まずはデモトレード: リアルマネーを使う前に、デモトレードで東京時間の値動きに慣れましょう。
- 東京時間で少額のリアル取引: デモトレードで自信がついたら、少額・低レバレッジで東京時間のリアル取引に挑戦します。ここで、利益を出すことよりも「損失を限定する(損切りを徹底する)」ことを学びます。
- ロンドン時間の序盤に挑戦: 東京時間での取引に慣れてきたら、次に取引が活発になり始めるロンドン時間の序盤(16時~18時頃)に挑戦してみましょう。東京時間との値動きの違いを体感することで、市場のダイナミズムを学ぶことができます。
このように、段階的に難易度を上げていくことで、リスクをコントロールしながら安全にスキルアップしていくことができます。焦って最初からボラティリティの高いニューヨーク時間に挑戦するのは、無謀な航海に出るようなものです。まずは穏やかな近海(東京時間)で操船技術を磨きましょう。
まとめ:FXの取引時間を理解してトレードに活かそう
この記事では、FXの取引時間が平日ほぼ24時間である理由から、夏時間・冬時間の違い、世界の三大市場(東京・ロンドン・ニューヨーク)の値動きの特徴、そして時間帯別の具体的なトレード戦略まで、網羅的に解説してきました。
最後に、本記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- FXは世界市場のリレーで平日ほぼ24時間取引可能: 自分のライフスタイルに合わせて取引できるのが最大の魅力です。
- 市場は3つの顔を持つ:
- 東京時間(午前): 比較的穏やかなレンジ相場になりやすい。初心者におすすめ。
- ロンドン時間(夕方~夜): 取引が活発化し、トレンドが発生しやすい。デイトレードの主戦場。
- ニューヨーク時間(夜~深夜): ボラティリティが最大に。大きな利益機会と高いリスクが共存する。
- 夏時間と冬時間を意識する: 欧米市場の取引時間が1時間ずれるため、特に重要経済指標の発表時間には注意が必要です。
- 取引が活発になるタイミングを知る: 経済指標発表時、ロンドンフィキシング、ゴトー日など、相場が大きく動きやすい特定のタイミングが存在します。
- 取引できない時間とリスクを把握する: 土日やメンテナンス時間は取引ができず、特に週末にポジションを持ち越すと、週明けの「窓開け」による想定外の損失リスクがあります。
FXで成功するためには、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析といった手法を学ぶことはもちろん重要です。しかし、それらの手法をどの「時間」という土俵で使うのかを理解していなければ、その効果は半減してしまいます。
FXの取引時間を理解することは、単なる知識ではなく、優位性の高いトレード戦略を立てるための強力な武器となります。
「今はレンジ相場になりやすいから逆張りを試そう」
「ロンドン時間に入ってトレンドが出始めたから順張りでエントリーしよう」
「重要な指標発表前だからポジションを軽くしておこう」
このように、時間帯ごとの特徴に基づいた判断ができるようになれば、あなたのトレードの精度は格段に向上するはずです。
この記事を参考に、ぜひご自身のライフスタイルとトレード戦略に最も合った取引時間を見つけ出し、賢く、そして戦略的にFX市場と向き合っていきましょう。